全国学力・学習状況調査の功罪

「全国学力・学習状況調査」で全国トップクラスの成績が続く石川県で、今年の調査の直前に、多くの学校が授業時間を削り過去の問題を解かせるなどの「事前対策」をしていたことが、県教職員組合が行った調査で分かりました。また、全体の74%の学校の教職員が校長や教頭などから「事前対策をするよう働きかけがあった」とのことです。

個人的には、事前に1回ぐらい過去問をやらせて、問題の傾向や問われる視点を確認させたり、時間配分を考えさせたりすればよいと思いますが、「教科によっては年間の授業時間の10分の1、10時間以上を学力テスト対策にあてている」というのは行き過ぎのような気がします。ちなみに富山県も4割以上の学校で何らかの事前対策が行われたとのことです。

高校でも生徒に過去問を解かせることはありますが、小中との違いは、高校生が過去問を解くことで大学合格につながるなど、個人にメリットがあるのに対し、小中の生徒にとってのメリットは少ないということです。

全国学力・学習状況調査はよい問題が出題されており、学力調査と学習状況調査のクロス集計によりわかることも多いので、これ自体は悪くないと思いますが、都道府県や市町村別の平均点の公表が過度な競争を煽っているところに問題があると思います。

この調査の目的は、
①義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る。
②学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。
③そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。
とのことです。

近年では各都道府県の平均点の差がかなり縮まってきたようなので、①の役目は終えたのではないでしょうか。今後は、②、③の目的で、文科省が問題のみを提供し、各学校がいつでも自由に実施し、自校の児童・生徒の学力向上に活用できる形にしていくなど、実施方法等において何らかの改善が必要ではないかと思います。

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