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教員の離職率と精神疾患による休職者の割合は民間に比べて高いのか

離職率


都教育委員会は24日、昨年度の新規採用教員のうち1年以内に離職した教員の割合が4・9%に上ったと明らかにした。3年連続の増加で、記録の残る2014年度以降で最も高くなった。

新人教員の4・9%が1年以内に離職…3年連続の増加に都教委「安心して働ける環境整えたい」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

こんな記事を見ると、「教職はブラックだ」というふうに思われるかもしれません。確かに悪化しているのは事実です。

しかし、全国的に見れば、(少し前のデータですが)新任教員の離職率は1.2%だそうです。

文部科学省「学校教員統計調査」によると、2018年度に初任(教員1年目)に依願退職した教諭(公立小中学校、特別支援学校)は431人でした。

2018年度の採用者数は35,057人なので、初任教員の離職者431人÷採用者35,057人×100=離職率約1.2%

初任教員の離職率は1.2%という結果になりました。

【2024年最新】教員の離職率を統計データを元に算出 | 教師ライフナビ (kyouikuikuji.com)

では、民間企業ではどうでしょうか。
新卒の1年以内の離職率をチェック!辞める理由や離職防止対策も解説 (edenred.jp)
によると、2020年3月に卒業し新卒で入社した就職者の離職率は、
高校卒で15.1%
大学卒で10.6%

となっています。よって、教員の方が圧倒的に低いのです。

精神疾患による休職者の割合


うつ病などの精神疾患で昨年度休職した公立学校の教員は1割余り増えて6539人と、初めて6000人を上回り過去最多となりました。20代の増加率が高く、文部科学省は「職場環境は非常に深刻で、教員不足の中で若手をどうサポートするかが課題だ」としています。

こうした現状を踏まえ、新卒教員を対象に担任業務の負担を軽減する取り組みを始めた県もあります。

精神疾患で休職の公立学校教員 過去最多 初の6000人超 20代が高い増加率 要因は? 教員不足 サポートが課題 | NHK | 教育

これは2022年のデータになります。数だけ見ると、大変だ、ということになりますが、割合はどうでしょうか。

○教育職員(※)の精神疾患による病気休職者数は、6,539人(全教育職員数の0.71%)で、令和3年度(5,897人)から642人増加し、過去最多。

(※)公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校における校長、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、講師、養護助教諭、実習助手及び寄宿舎指導員 (総計918,987人(令和4年5月1日現在))

令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査について:文部科学省 (mext.go.jp)

全教育職員数の0.71%」とあります。では民間企業はどうでしょうか。厚生労働省の令和4年度労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要
r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf (mhlw.go.jp)
によると、過去1年間にメンタルヘルス不調で1カ月以上休業した労働者のいた事業所割合は10.6%、労働者の割合は全体で0.6%、従業員1,000人以上の事業所では1.0%でした。この数値を見ると、教職も民間企業も大差がないことになります。

言いたいこと


教員も民間企業に勤める人も、離職率や精神疾患による休職者の割合は、ここ数年は年々悪化の一途をたどっていますが、割合を見れば、離職率は教員の方が圧倒的に低く、精神疾患は大差がないのです。そうした点に触れていない報道が多いことに問題があります。「だから教員はブラックだ」ということだけを強調してほしくありません。また、そうした報道に惑わされて、教職志望者が教員になることをあきらめることがあってはなりません。

教員が犯罪を犯すと大々的にマスコミにたたかれ、「だから教員はダメなんだ」という風潮が助長される嫌いがありますが、実際、教員の犯罪率は極めて低いと言われています。これと同じような構図になっている気がしてなりません。

確かに教員の世界には改善すべきことが多くあるとは思いますが、もっと教職の素晴らしさややりがいなど、プラスの側面を報じるマスコミが増えてほしいと強く願います。

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