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青い春の冒険


仕事の日。コンビニのイートインで休憩していると、男子高校生2人組とコンビニ店員のお姉さんが楽しそうに話し出した。

快活な会話が否応なしに耳に入ってくる。話によれば、男子高校生は多分このコンビニでバイトをしていて、今日は学校をサボっているらしい。


「昼から学校いくんよ~流石に怒られるからさ~」

学校をサボって家にいたことはあるけど、外にまで出たことはあったっけ? と自分の青春を振り返る。学校をサボるってだけで、ドキドキしていた自分は、そんなにラフに学校をサボれなかった。真面目な青春。


「こんど長崎いってくるわ」

と、男子高校生のうちの一人が唐突に言い出す。「なんで!」とコンビニ店員のお姉さんが驚く。

2人の話によれば、今のカラオケには全国の人たちと繋がれる機能があるらしく、男子高校生は長崎県の子とその機能で繋がったらしい。それで何度かやり取りしているうちに、長崎県へ女の子に会いに行くことになったというのだ。すごい。現代的。


私たちの高校生の頃はそんな機能はなかった。SNSもそんななかったし、ネットを介して人と出会う、ということにそもそも懐疑的だった。そんな機能がもし当時にあったら、俺たちの青春はどうなっていたのだろう? と考えるとゾワッとする。

目の届く範囲で恋をして、友情を結んで、バカをして。たまに、同級の女子が大学生の彼氏に、車で校門まで送り迎えしてもらうのを見てビビったりして。見える範囲の出来事だけにヤキモキしていた。それがネットを介して距離が無限になるのはどんな心地だろう。

でも、いまの時代はいまの青春があるんだろうな、とも思う。文明文化がどれだけ変わっても、思春期の春はきっと青い。その時代時代に悩み、揉まれて、ヤキモキして成長していくんだろう。


「長崎県に会いにいくなんて、そんな、やめとき!」

と、お姉さんは忠告する。男子高校生が知人なら、きっと私もそう言う。けれど、長崎県へ女の子に会いにいく、なんて冒険だ。冒険はとめられねえ。思春期は、いつも青いのだ。私は君の青春を応援する(誰)。さ、仕事いこ。

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