たまには遠回りだって、悪くない
メルカリで本が数冊売れた。
いつもなら、出勤時に勤務先の近くにあるローソンで配送手続きを行うものの、あいにくというか幸いというか、今日と明日は仕事が休みだった。
出勤日まで時間を空けてしまうと、購入してもらった方に申し訳ない。
仕方がない。
まだシトシトとした雨が続いているけど、今日、出しに行くか。
と、心に決める。
複数冊の本が売れた時は、それぞれの商品の宛先を間違えないように、ローソンにある“スマリ”という機械を使うのが好きだ。
自宅近くの“スマリ”があるローソンを、Google先生で検索すると、地味に遠い。
出勤の時に駅に向かって歩くのと同じような道のりを、同じくらいの時間をかけて歩くルートだった。
それに、ついでに図書館にも寄ろうと思っていたから、更に遠周りだった。
平日の通勤に、たっぷり歩いている道だから、休日まで歩きたくはなかった。
だが、出し間違いはしたくない。
こちらも仕方がない。
少し歩くか、と再度決意した。
*
無事にローソンのスマリで商品を出し終わり、図書館に向かって、行きとは違う道を歩き出したところ、ちょっとした人だかりができていた。
その人たちの頭上には、遠くからでも分かるほど大きなピンク色の花を咲かせた木があった。
桜であった。
ここに春があった。
フワッフワの桜。ピンク色のアフロ。
早ざくらって言うのかな?
日本中どこの開花宣言よりも早く、堂々と咲いていた。
何度か通ったことがある道だったけれど、こんなに立派な桜が咲くとは知らなかった。
少し得した気分になった。
『0メートルの旅』という本に、こんな言葉がある。
この本を読んで、旅とは「非日常を愛すること・愉しむこと」だと悟った。
そして、著者の岡田さんは「日常の中の非日常性を愛すれば、それはもう旅だ」とも言った。
非日常とは、すなわち予定調和の破綻である。
少し予定が崩れたって、思っても見ないところに足を運ばされたって、調和の乱れを愉しむことができれば、それは旅になる。
Google先生にちょっと遠回りをさせられて、ムスッとなっていたけれど、たまには遠回りも悪くない。
一足先に春を見つけられたことが嬉しかった。
なにより、日常の中の、非日常を愉しめたことが意外だった。
参考書籍
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