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主犯:ライセンス、共犯:NON STYLE

 「どぅーどぅーだーだどぅーどぅどぅーだーだーどぅーどぅーだーだだスタンガン」
「嫌や言うてんねん」
 こんな愉快な世界の住民票を取得したのは2007年、M-1グランプリ2007決勝直前にやっていたM-1グランプリ2006の再放送を見たときだった。

 小学五年生くらいの頃、エンタの神様全盛期だった記憶がある。仲のいい友達同士で好きなお笑い芸人ランキングみたいなのをつけて遊んでいた。エンタがお笑いの全てだったときの周りの人気といえば、小梅太夫、桜塚やっくん、ですよ。、小島よしおとか。さすがに10年以上前の好みなんて覚えていない。悲しきかな。

 そんなエンタ全盛期でお笑いって面白いんだなーって漠然と思っていた時にM-12006の再放送を見てしまったのだ。ライセンスのドラえもんネタには感動した。え、今まで私が面白がっていたお笑いよりも格段に面白いやん。今まで面白がっていた芸人はなんやったん?え、別に派手に騒がんくても、バラエティ番組でふざけているところを見せていなくても、ただセンターマイクを前にして喋っているだけでこんな面白いの?その日すぐに住民票をエンタから漫才に移した。住民票を移してすぐに見たM-1グランプリは絶景だった。キングコングってこんなに面白いんだ優勝確定やんからのサンドウィッチマンである。いやこんなんサンドウィッチマン勝つに決まってるしなんで準決勝で敗退してんねん。小細工なしの漫才ってこんな面白かったのかと。

 そんなM-1の興奮も冷めやまぬうちに今度は爆笑レッドカーペット時代が来た。ショートネタのオムニバスだったので、色々な芸人の美味しい部分を味見させてもらえる番組だった。やはりこれも大好きだった。ただし、私はもうエンタネタで笑えなくなっていた。周りがリズムネタとかあるあるネタとかフォーマットのあるネタにハマる中、私のお気に入りはNON STYLEと磁石とパンクブーブーだった。センターマイクだけで面白いことを喋る漫才師が大好きだった。ちなみに、この時ノンスタとパンクブーブーがM-1で優勝するなんて夢にも思っていなかったし、優勝したから後出しで好きだったと言っているわけでもない。本当にレッドカーペット時代からこの三組の芸人さんは私のお気に入りだった。まあ、当時はそんな三組の名前を出しても同意してくれる友達はほぼいなかったので全面に押し出して推してはいなかったと思うが。ちなみに後継番組であったレッドシアターは最初の数回だけしか見ていない。元々コントはあまり好きではなかったのと、レッドシアターレギュラーが好みの芸人さんではなかったからだ。今も昔もあまりにもポップな人達は受付けていなかったのだ。ただただセンターマイクの前で自分たちだけのセンスを売る人達が好きだった。

 漫才にハマる小学生時代を過ごしていた私を放火魔が襲った。M-1グランプリ2008だ。12月の頭頃だったであろうか、テレビのCMでM-1の出場者を知った。その中にあったのだ。NON STYLEの名前が。私の好みは間違っていなかった。思った通り、彼らは日本一面白いんだ。決勝が始まってもいないのに勝手に優勝していた。周りがナイツに賭ける中、私はノンスタ一点賭け。絶対に優勝するという確信があった。決勝が始まると思った通りトップの成績を叩き出していた。ほら見ろ。と思っていた矢先に予想外のことが起きた。敗者復活からオードリーが上がってきたのである。確かに当時はまだ無名のコンビではあったが、レッドカーペット出場経験もあって、彼らの存在とその実力の高さは知っていた。そして見事ノンスタから得点一位を奪い取っていってしまった。最終決戦でも結果を見るまで焦りが止まらなかった。でも結果はやはりNON STYLEの優勝。ほら見たことか。別に自分が勝ったわけではないのにな。ただただ自分の好きなものが世間に正当な評価を受けていたのが嬉しかったのだろう。なんともわがままな話だが。

 ノンスタが優勝した次の日からもう誰が何と言おうと私は堂々とノンスタファンを公言していた。周りがオードリーの方が面白かったと言っていても、優勝はNON STYLEだ。私のセンスの方が良かったのだ、などとつまらない優越感に浸りながら、親にノンスタのDVDを誕生日プレゼントとしてねだった。セリフを完全に覚えてしまうまで見た。燃えるように見た。ついでにM-12006もレンタルDVDでもう一度見た。ライセンスのセリフを覚えてしまうほど見た。だが、そんな一瞬で燃え上がった炎はすぐに消えてしまうものだ。中学に入り、だんだん部活や他のあれこれに忙しくなり、お笑いへの熱は冷めていってしまっていた。テレビからも離れていってしまっていた。とはいえM-12009はさすがに興奮したし、パンクブーブーの優勝にも歓喜した。でも、M-12010は思った以上に笑えなかった。うーん、これが思春期というやつだったのか。まあ、そのちょっと後に一時的にお笑いの熱が一瞬蘇るのだが、それはこっちのお話。

 お笑いと離れ始めた中学時代、お笑いとは本当に縁遠い高校を過ごし、大学生になった。ぶっちゃけ大学生時代もお笑いとは本当に縁遠かったが、とある授業で先生がラーメンズのネタを扱った。その時はまだラーメンズの存在は知らなかったが、色々調べてその世界へたどり着いた。コントは苦手だったが、ラーメンズのコントは本当に面白かった。正気と狂気の境目みたいな世界観と言葉のフラメンコ。大好物だった。もしかしたら違法なやつだったのかもしれないが、ネット上に流れていたラーメンズのコントをかじりついて見る月もあった。ラーメンズの話は別に何かの転機でもなんでもないただの余談でしかないが、単純にラーメンズが現時点で一番好きなお笑い芸人なのでなんか話しておきたかった。

 そして現在、お笑いの再加熱が来ている。きっかけは3時のヒロインだった。実家に戻り、たまたま親が見ていたロンハーを横目で見ていた。するとなんと、ブルマ姿の女性が出ていた。こんなモデルさんおったんかなあ、最近のモデルさんようわからんわと思ってとりあえず調べてみたらなんとお笑い芸人だった。お笑いマイブームが去ってもある程度最新のお笑い芸人に関しては抜け漏れなくチェックしていたつもりだった。アマプラで2015年以降のM-1も全部見ていたはずだった。それなのに知らない芸人さんが出ていたのだ。しかもそこで共演していた人達もぼる塾というトリオ(正確にはカルテット)だったではないか。ついにネタを知らないお笑い芸人が出ている時代になってしまった。慌てて3時のヒロインのネタを探した。圧倒的面白さだった。個人的な好みでは、女性芸人はあるあるネタやモノマネが多くて比較的苦手な芸人さんが多かった。しかし3時のヒロインはキレッキレのツッコミで、「うわこれ求めてたやつやん」と熱くなった。気づいたらお笑い熱が再び起こっていた。

 3時のヒロイン経由でAマッソと再会した。Aマッソはここが初対面ではなかった。アマプラの敗者復活を見て、まあまあおもろいコンビおんねんな~くらいの存在認識はあったのだ。Aマッソ公式You Tubeにあったネタ「きっかけ」や面接官加納を見て一気にファンになったのを通り越して好きな芸人BEST3入りを果たしてしまった。こんな面白い発想する人間おる?3時のヒロインをきっかけに知ったAマッソを皮切りに私のお笑い熱はまた復活した。最近の人で面白いネタは片っ端から見ている。ジャルジャル、金属バット、ラランド、シンクロニシティ、Dr.ハインリッヒetc...世の中にはこんなにも面白い人達で溢れるようになっていたのか。小学生のときとは好みのテイストは大きく異なっているが、やはりセンターマイクの前でただただ喋るだけの人が大好きなのは変わっていない。ジャルジャルはどちらかというとコント師ではあるが、その語彙や着眼点がもうたまらなく大好きだ。ライセンスに引きずり込まれて、NON STYLEに閉じ込められたお笑いの世界、この先も私はこの世界の住民税を払うのだろう。


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