『蝶々と灰色のやらかい悪魔』 44(最終回)
お目当てのゴミ箱も手に入れ、腹ごしらえも済ませたので、夕方からの出勤に備え、早めに帰宅しようと、ショッピングモールの外に出ると、雷鳴とともに土砂降りの雨が降っていた。遠くは晴れているのに、なぜかわたしの頭上だけ、雨雲がかかっており、降水量一〇〇ミリを優に超えるゲリラ豪雨が、ショッピングモール前の地面を叩きつけていた。
どうせ通り雨だろうと高を括り、しばらく店内で雨宿りをしていたのだが、待てど暮らせど雨が止む気配はなく、それどころか雨足は強くなる一方だった。自転車で来ていることもあり、傘を差すわけにはいかず、ショッピングモールの軒先で困り果てていると、バッグの中でLINEの着信音が鳴った。
マサキさんからの返信だと思い、期待してLINEを開くと店長からで、ガッカリしながらメッセージを開くと、
〈今日は生憎の天気だし、朝から予約キャンセルも続出してるから、ドライバーも不足してることだし、なんだったらあんたも休む?〉
と書かれてあった。
とつぜんのゲリラ豪雨に合い、テンションがだだ下がりしていたこともあり、正直、接客している気分ではなかったので、店長からのLINEには、
〈ぜひ!〉
と二つ返事で返信した。
またすぐに返事が来て、
〈じゃあ、あんたも休みね!〉
と、確認のメッセージが来たので、
〈おなしゃっす!〉
と、間髪入れず返信した。
〈じゃあ、今日は女の子もいないことだし、店番はバイト君に任しちゃって、久々にあたしも休んじゃおうかしら♡〉
そのメッセージが来たとたん、今まで降っていた雨が嘘のようにパタリと止み、ふと見上げた灰色の空には、二つの大きな虹が架かっていた。
もう一度、マサキさんからの返信がないかとLINEを確認してみたが、やはりマサキさんからの返信はなく、まだ既読すらついていなかった。
〈そうしましょう!〉
店長にそう返信し、そのまま持っていたスマホで、その虹を撮影した。
画面に切り取られた薄曇りの空には、ぼんやりと二つの虹が霞んでいた。
そうだ。今日の写メ日記に載せよう。
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