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日本の女性風俗史(切畑健著)

二冊目のご本紹介は、「日本の女性風俗史」 切畑健著 紫紅社文庫 2009年第3刷、でございます。

我が国の伝統服飾・装束研究の第一人者である、切畑健先生のご本です。
昭和60年の「別冊染織の美 写真で見る日本の女性風俗史(京都書院)」
ベースだということで、写真は少々古い感じがするのですけれども、
過去の服飾ですので、モデルさんの今様の美しさを見るものではありませんので。はい。

巻頭にあるのですが、昭和59年が友禅染の祖である宮崎友禅の生誕330年だということで、各種の記念行事が行われ、
もともとの昭和60年のご本の方も、その一環として企画された「染織まつり」・・・古墳時代から江戸時代までの歴代女性風俗行列というものがあったそうで、要は再現制作が染織業界の勉強でもありお仕事でもあり、
またお金が落ちるという話だけではなく、伝統的な技術や意匠のアピールや
そもそも伝統衣装に興味を持ってもらうという点で、
重要な企画だったのではないかと思います。
その頃はですね、経済も上がり基調だったですかね、
全国でそういう大掛かりなイベントがたくさんあったように思いますね。

さて内容は古墳時代から江戸時代まで、行列に参加された方の記録とも言えるお写真がずーっと並んでおります。
その合間に切畑先生の、装束の構成、文様、装身具、髪型などの端的な解説が入ります。
また、例えば古墳時代なら埴輪、平安時代なら絵巻物といった、当時の衣装を示す分かりやすい比較資料も掲載されています。

皆さまはいかがでしょうね、日本の歴史的なところで言いますと、いつ頃の時代の装束に興味がおありでしょうかしら。
わたくしは個人的には室町からこちら側の、袖が短くて、幅が広くて、
ゆったり着付けをしているような、そういう時代のものが好きですね。
当時はまだ綿も普及していませんし、庶民は麻だったとご本の中にもあるのですが、そういう楽に着た着物というのは、最近のゆったり系のお洋服に通じるものもありますし、
ザ・奥方様のお着物類はその頃からさらに技術的な発展をしていて(というより、貴族・宗教の用途に限られていたものが、広がったと言うべきでしょうかね)見ごたえのあるお衣装が増えて来る気がいたします。
古くから伝わっている能装束などにもそういったところが見えますよね。

単行本サイズなうえ、モデルさんの立ち姿が基本になっていますので、衣装の写真としては「あ、そこ、詳しく!」と思うのは否めませんが、
ところどころ拡大画像も入っており、当時の服飾文化の素晴らしさを窺い知ることができます。
掲載されたものだけが伝来する衣装や装束のすべてではありませんが、色味の変遷なども見え、とても楽しいご本です。
漫画・イラストなどがご趣味の方にも、ぜひお勧めしたい一冊です。

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