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「水場」著者インタビュー03 季節は待ってくれない

noteにて無料公開された野鳥写真集「小鳥のくる水場  ぞうき林の小さなオアシス」。撮影当時の思い出や、動物カメラマンとしてデビューした道のり、「チョウゲンボウ 優しき猛禽」「野鳥記」に至るまでの経緯などなど著者の平野伸明に、いろいろな話をお聞きました。
全6回、どうぞお楽しみください。インタビュアーはしげゆかです。

「水場」に来た鳥の思い出

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▲扉のページ カケス

前回に引き続き、書籍「水場」の思い出話です。

――表紙をめくるとカケスの写真。カケスは森を好む鳥ですが、警戒心はかなり強かったのではないですか?

(平野)その通りです。カケスは警戒心が強くて、すぐには水場に降りてこなかった。カケスも綺麗で絵になる鳥ですね。「ギャーギャー」と鳴きながらスーッスーッと林の中を飛び交って。

――平野さんの著書「野鳥記」では、同じ水場を舞台に、ハイタカの写真が載っていました。

(平野)それは野鳥記用に追加で取材した時の写真です。新たに500mm望遠レンズを使ったりもしました。追加エピソードに掲載してるメジロなんかは、望遠レンズで撮ってる。低い細長のブラインドを作り、地面にはいつくばってローアングルから撮影しました。そのブラインドの写真が残っていないのは残念です(笑)。

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▲追加取材 望遠レンズで撮影したメジロ

季節は待ってくれない


――撮影に苦労した鳥は、いますか?

(平野)サンコウチョウは5月頃わたってきて、それからオスとメスがペアリングして巣を作るんだけど、その頃に、ちょうど梅雨に入ります。だから、雨が降るといたるところに水たまりができて困っちゃいました。サンコウチョウはちょっと水たまりがあるだけでどこでも水浴びしちゃうんです。カメラがあるなし関係なくね。

PICT0058補正

▲サンコウチョウ(メス)初公開写真

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▲サンコウチョウ(オス)初公開写真

(平野)何よりも一番困るのは、サンコウチョウのオスの長い尾羽は7月ぐらいに抜けちゃうんです。スポっと。羽が抜け替わるんです。オスの尾羽が抜けるっていうのは後から知ったことなんだけど。

――ええ!尾羽が抜ける!?

(平野)そう。換羽(※)だよね。だから8月ごろに繁殖するオスの個体はみんな尾が短いんです。それはそれで面白いんだけど、やっぱり尾が長いのを撮りたい。だから6月が勝負なんです。
※換羽(かんう)…古い羽が抜け落ち、新しい羽が生える鳥の生理現象

季節はどんどん進み待ってくれない。サンコウチョウのオス絶対来てちょうだい、いや来るという信念を持ってやっていた(笑)。それで、ついに来たんです。長い尾羽を天女のようになびかせて。「ふわっ、パシャッ、ふわっ、パシャッ」って。それを見たときは、もう夢心地でした。

――通い続けて、願いが通じたんですね。

(平野)当時は雑木林の中の鳥の生息密度が濃かった。ツミもいたしサンコウチョウもいた。イカルやホオジロもいた。鳥がたくさんいたから水場もいつも賑わっていたんです。

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