「水場」著者インタビュー06 過去の著作を無料公開するということ
noteにて無料公開された野鳥写真集「小鳥のくる水場 ぞうき林の小さなオアシス」。撮影当時の思い出や、動物カメラマンとしてデビューした道のり、「チョウゲンボウ 優しき猛禽」「野鳥記」に至るまでの経緯などなど著者の平野伸明に、いろいろな話をお聞きました。
今回で最終回です。どうぞお楽しみください。インタビュアーはしげゆかです。
前回に引き続き、「野鳥記」の思い出話です。
5種類の鳥がひとつの巣穴を奪い合う
(平野)でもこの本はほんとね、いろんな人からこれは良かった、あれは良かったって言ってもらえて。「のっとり」なんて野鳥の研究者たちからもすごく評価していただけました。
▲「野鳥記」より「のっとり」 アオゲラの巣穴をシジュウカラが奪う
(平野)この「のっとり」は、仁部富之助さんの「野の鳥の生態2」という本がヒントになっていて。これは高校生の頃から愛読していた本なんだけど、ほら、この写真。
▲「野の鳥の生態2」仁部富之助より
――「卵の殻、木の下に散らばる」・・・ものすごい量ですね。
(平野)高校生の頃、この写真を見たとき、僕は人間がやったことなんじゃないかって思っていました。こんなのありえない、って。
でも場所が自然豊かな秋田だから・・・可能性があるかな、とも、のちのち思いました。これ、ムクドリの卵なんです。
――この殻の上に、木のうろがあるんですか?
(平野)そう、卵の殻の上に木のうろがあって、ひたすら鳥たちの巣穴争奪戦で、卵を出しあってこうなっちゃったって書いてある。
僕も、秋田の大潟村でアリスイの番組を作ったとき(※)、乗っ取りを撮影したんです。アリスイと、ムクドリと、コムクドリと、スズメと、アカゲラの5種が穴を争奪するんですよ。
※2011年放送 NHKダーウィンが来た!「鳥の敵(かたき)に化ける鳥」
――ひとつの巣穴を、5種類も!
(平野)すごい戦いなんです、これが! アカゲラが穴を掘るのをみんな待っていて、すっかり出来上がると、その穴を巡ってほかの鳥たちが争奪戦を繰り広げる。
――え、同じうろの中に入ってしまうんですか?
(平野)そう、巣穴を我が物にしようとすごい喧嘩をはじめちゃうんです!これはいつかまた映像化してみたいなあ。あれは自然豊かな地じゃないと撮れない。仁部富之助さんの本にある木の下に散らばる卵も自然豊かな秋田だから起こりえたのだと思います。
▲「野の鳥の野生2」仁部富之助
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