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「水場」著者インタビュー05 書籍「野鳥記」の思い出
noteにて無料公開された野鳥写真集「小鳥のくる水場 ぞうき林の小さなオアシス」。撮影当時の思い出や、動物カメラマンとしてデビューした道のり、「チョウゲンボウ 優しき猛禽」「野鳥記」に至るまでの経緯などなど著者の平野伸明に、いろいろな話をお聞きました。
全6回、どうぞお楽しみください。インタビュアーはしげゆかです。
前回、書籍「水場」の思い出話から、やがて話題は「野鳥記」にうつっていきます。
「野鳥記」11年待ってくれた福音館の大和さん
(平野)これは今でもはっきり覚えてるんだけど、ロシアから帰ってきてすぐに福音館書店編集部の大和さんに電話しました。でも、野鳥記はもう誰かと手掛けているんじゃないかという不安がありました。
そうしたら、大和さんは「野鳥記だけはのぶちゃんとやると決めてるから、やるわけないよ」「席はあけてあるからおいで」と。それは感激しましたし、今でも感謝しています。
大和さんとは1984年に科学ジャーナリストの会で会って、野鳥記の撮影はロシアから帰国した1995年から始めたから、何と11年も待ってくれていたんですね。
――ずっと信じて待ってくれている・・・うれしいですね。
(平野)大和さんはそういう人でした。編集部に出向き「とにかく構成出してごらん」と言われて、ダーッとその場で書いて、「これはいける」と一発でOKを出してくれました。で、「何年後に出す?」と聞かれたので「2年後でお願いします」と。
「よし、わかった。じゃあ2年間の間に撮影に掛かった経費を出しなさい。全額は出せないかもしれないけど、自分がよしと思ったやつは出してあげるから」と言ってくれました。
それは当時としては画期的なことだと思います。そもそも福音館書店で「平野伸明」なんて名前を知る人は誰もいなかったでしょうし、「野鳥記」を僕にゆだねること自体大和さんにとっては冒険だったと思います。その期待に必ず応えようと、僕は心に誓いました。
「いい本ができないわけがない」
――大和さんとのエピソードで、記憶に残るものはありますか?
(平野)それからというものの、晴れの日はもちろん、雨の日も風の日も「野鳥記」のために必ず撮影に出かけました。
当時僕は練馬区に住んでいて、晩秋の数か月、カワセミの撮影を埼玉県の高麗川でしていました。
車で現場に行くまでは普段は朝早く一般道を行くわけですが、そのときは少しでも撮影時間にあてようと、高速道路を使い、行きと帰りの領収書を証明としてとっておいたんです。
その領収証は、経費分ですが、一方ちゃんとフィールドに出て撮影していますという証のつもりだったのです。
1月半ば頃、福音館書店の編集部を訪ねて前年の11月1日から12月31日まで61日間の高速道路の領収書を束ねて全部大和さんに渡しました。
――2か月毎日!?大和さんの反応は・・・。
(平野)とても驚いてました(笑)。「この領収書のはすごい!2か月間一日も休んでないじゃないか。こんなにやってるんだ!」と。で、大和さんはその領収書を持って、みんなの前で、「彼はこれだけ仕事してるんだ、いい本ができないわけがない」と言ってくれました。
ーーそれは痺れます!
(平野)僕もちょっと大和さんを驚かせようかな、という茶目っ気な感じもありましたが、それを素直に認めてくれた大和さんの気持ちが嬉しかった。「野鳥記」をますます頑張ろう!という気持ちになったのはもちろんです。
ーーお互い、信頼し合ってたからこその話、ですね。
カッコウが托卵できる巣・できない巣
(平野)野鳥記はひとつだけ、どうしてもクリアしなきゃいけない鳥がいて。それはとても苦戦したなあ・・・。
――どの鳥でしょう?
(平野)それはね、オオヨシキリの巣に托卵(※)するカッコウ。とにかく、托卵された巣を見つけるのが大変でした。
※托卵……他の巣に自分の卵を産みつけ、そのまま育てさせること
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