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【散文】 勉強は出会いだ。詩は相性だ。

会社員時代、経営している塾の手伝いに行ったことがある。
夕方の教室で、3人くらいの小学生の勉強を見ていた。

そのうちの一人、1年生だったか2年生だったか、小さな女の子がいた。
国語の問題集を開いて詩の問題を解こうとするんだけど、どうしてもうとうとしてしまう。

「いつもはこんなんじゃないんだよ、今日はどうしても疲れちゃってるの」
「ほんとはもっとちゃんとしてるんだよ」

臨時で現れた私に必死にそう訴える。
きっとすごく頑張り屋さんなんだろう。
ちゃんとできる自分の姿を見せたいのに見せられない、もどかしい気持ち。
よくわかる。
眠い時もあっていいんだよ、だってもう夕方だもの。
お姉さんも眠いよ。

とはいえお金を払って来てくれている塾。
何かできないかなと思って「じゃあ気分転換に次の詩を読んでみよう」と言った。
「そうするね」と女の子。

すると、どうだろう。
途端に目がぱっと輝いて「私、この詩好き」と言った。
そしてばりばり問題を解いた。
全問正解した。
さっき眠くて読めなかった詩も読んだ。
最後まで読んで全問正解した。
そして言った。
「私、最初の詩があんまり好きじゃないからどうしても眠くなっちゃった」
「こっちの詩を読んだらすごくいいなって思って眠気がなくなっちゃった」

お姉さんは鳥肌が立っちゃった。
詩の力ってすごいね。
心がぎゅっと惹きつけられたら眠気なんか飛んでいってこんなにキラキラした目で問題を解けるんだね。
出会いってすごいね。
好きな詩に出会えてよかったね。
眠くてたまらない、その気持ちのすぐ隣にこんな宝物があったなんて。

勉強って出会いだなって
そして詩って好き嫌いあるよね、相性だよねって
今もたまに思い出す、素敵な思い出。

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