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『ジャック・マーのアリババの経営哲学』感想文

『ジャック・マーのアリババの経営哲学』(張燕 著, 永井麻生子 訳)を読みました。
https://amzn.to/3d5iTMw

昨年秋、自分の英語塾の高校生クラスで、アリババの創業者Jack Ma氏の英語スピーチを見せました。
マー氏と言えば、英語が堪能で演説が上手なことが広く知られています。「彼は中国のカリスマ起業家で、いわばAmazonとlineとPayPayを全部作ったような人ですね~」と紹介しました。
「受験や就活で何度も失敗しても、あきらめなかったから今の自分がいます!」というマーさんのポジティブなメッセージは、日本の高校生達にも大絶賛されました。
★生徒さんに見せたJack Maさんのスピーチ映像は、こちら。
https://www.youtube.com/watch?v=KqJs_NHjV14

本書は彼を取材したビジネス書。マーさん自身は本を書いたことがなく、もし自分が本を書くなら成功体験談ではなく『アリババの1001の失敗』という自伝を書きたいそうです(笑)
成功者でありながら奢り高ぶらず、謙虚な姿勢を貫く彼は「男の才能は容姿と反比例します!」と言い、自分がイケメンでないことをギャグにしたことも。(※この発言は中国で流行語になりました)
巨大なインターネットビジネスを立ち上げたマーさん、驚くべきことに、コンピューター操作がそこまで得意ではないそうです。しかし「これからはインターネットの時代が来るぞ!」と時代の一歩先を読み、国内外の有名投資家にプレゼンして出資を取り付ける能力、そしてチームの人達を励ましまとめるリーダーシップに優れていることが、本を読むと分かります。おそらく
「天才的頭脳派」というより「努力・行動派」の人なのだろう…という人物像が浮かび上がってきます。

印象に残ったことを2点あげます。
(1)優秀な怠け者
「階段を上がるのが面倒でエレベーターを発明した者。歩くのが面倒で列車や飛行機を発明した者。コンサートに行くのが面倒で、レコードやCDを発明した者。この世界は、こういった怠け者に支えられている。仕事を減らしたければ、怠ける方法を考え出すことだ。成功とはどれだけやったかではなく、何をやったかで決まる」
…これはマーさんが講演で語ったこと。私はこれを読んで、トヨタの創業者・豊田佐吉の話を思い出しました。子供の頃、家が貧しくて、毎晩遅くまで手作業で機織りの内職をしていたお母さんを、佐吉少年は心配し「そうだ!お母さんの仕事が楽(らく)になるように、僕が機械を発明しよう!」と機織り機を発明。やがてそれは、世界のトヨタ自動車を生み出す原動力となったのです。
マーさんが言う「怠ける」という言葉は若干の誤解を招きそうですが、「いかにして怠けるか?」=この発想は、結局は信じられないほどの努力を必要とするのです。思考停止し現状維持の波にのまれるのではなく、目の前のことをより良く作り変えるために根本的に仕組みを変えようとする発想が、世界を変え、確信をもたらすのでしょう。

(2)マーさんは金庸の大ファン
「尊敬する人は誰ですか?」という問いに、マーさんは「作家の金庸です」と答えており、自分が主催する業界のフォーラムで、何と金庸さんに司会者をするようにお願いしています。
マーさんが好きなキャラクターは『射鵰英雄伝』の黄薬師。
確かに「他の大多数の人と全く違う発想・行動力の持ち主」という意味では似ているかもしれません!(といってもマーさんは黄薬師ほどハチャメチャでなく、バランスの取れた人格の持ち主だと思いますが…笑)

私も『射鵰英雄伝』は大学生時代に徹夜で読んだし、金庸さんも大好きな作家です。今回、マーさんも金庸ファンということで、少しだけ親近感を感じました^^

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