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Q. 欧州でどのような人権とビジネスに関する取り組みがあり、日本企業は何をすべきか?

A. デューディリジェンス(DD)が複数の法案に導入され、調査範囲や開示内容が拡大されている。2022年には、EUの人権・環境DDの義務化指令案が発表された。今後諸国で指令と調和した法令が作られる。法令の内容も注目すべきだが、法令で決まっていなくとも、取引先から対策を求められることが増えると考えられるため、早めに社内規定作りなどの手を打つ必要がある。

調べる必要性: 人権監査を始めるにあたって特に欧州の人権体制に関心がある企業が多いため。

ヨーロッパのDDの対象の広がりの傾向

  1. DDが複数の法案に導入

  2. 調査範囲がサプライチェーンからバリューチェーンへ拡大

  3. 人権にとどまらず、環境・ガバナンスへ広がる

  4. 情報開示だけでなく、DDのプロセスの説明や効果も開示


サプライチェーンと人権に関するEU内外の取り組み

  1. EU外の取り組み

    1. バイデン政権が人権や民主主義を重視した外交・対外経済政策を行う

    2. 中国は2021年に「国家人権行動計画 (2021-25)」を発表

    3. 日本は2020年に行動計画策定

  2. EU, 2020年以降人権関連の法令やガイダンスが発出

    1. 2021: 紛争鉱物資源に関する規則が発行

    2. 2022 2月: 人権・環境デューディリジェンスの義務化指令案を発表

      1. 調和: 指令は加盟国で国内法的効力はないが、加盟国は指令に沿った法令を制定する義務がある。指令に反しない程度の加重・緩和は可能。

  3. ヨーロッパ諸国法令化の例

    1. 英国「現代奴隷法」

    2. フランス「注意義務法」

    3. スペイン「非財務情報開示義務」

    4. オランダ「児童労働DD法」

    5. ノルウェー「人権DD法」

    6. ドイツ「サプライチェーンにおける人権・環境DD法」

      1. 対象:一定規模以上の在ドイツ企業

        1. 在ドイツ企業に商品を納める日本企業は順守義務の対象外

        2. だが、企業からリスク・取り組み状況を確認されることはある

      2. 調査範囲: 国内外の自社サプライチェーン

      3. 強制度:義務付け。違反には制裁規定

      4. 訴訟代理権:労働組合やNGOも問題提起できる







日本企業がすべきこと

  1. 法令にこだわりすぎるのは良くない

    1. 以下が企業の主な不安

      1. 各国法令やEU指令の日本に所在する企業への域外適用

      2. 自社グループに各法律が適用される拠点があるか

      3. 制裁金

      4. EU指令はいつ成立・施行されるか

    2. しかし、指令を先どって対策すべき

      1. 自社に直接適用なくても、取引先からDDを求められる可能性

      2. 体制整備ができていないことによって取引を打ち切られる可能性

      3. 体制整備には時間がかかるため、成立・施行を待っていては遅い

  2. サプライチェーンのDDを事業継続のための投資と捉え、対応する必要がある

    1. 社内規定

    2. 苦情処理窓口の整備

    3. 責任者の選任

    4. リスク分析方法の確立

参考文献

安田, 啓. "欧州で進む人権デューデリジェンスの法制化と企業の取り組み 欧州の「サプライチェーンと人権」セミナーから" ジェトロ地域・分析レポート. 2021-11-16. https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/b369e53aa804d97f.html

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