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3331 ARTS CHIYODAでアートフェアを楽しむ/NFTアートも販売

「3331 ART FAIR 2022」(東京・千代田区のアーツ千代田3331で10月30日まで開催)の内覧会にプレス関係者として参加しました。1階のメインギャラリーでは26のギャラリーが出展、2階の「体育館フロア」では鷲田めるろ氏、藪前知子氏ら著名なキュレーターや全国の美大、アキバタマビなどが選定した作家の作品を展示するなど、アーツ千代田3331としてはかなり大掛かりなイベントとして開催されていました。

「3331 ART FAIR2022」会場風景
「3331 ART FAIR2022」会場風景

会場の旧練成中学校については千代田区とアーツ千代田3331の運営母体コマンドAとの契約期間が来年3月で満了、建物についてもその後改修工事に入ることから、アーツ千代田3331はいったん撤退することが決まっているため、今回のアートフェアは11回目にして大きな区切りの回となっています。コレクター向けゆえ美術館等で見られるものよりはこぶりな作品が多いのですが、「この作品が自分の家にあったらどんな感じになるのだろう?」などと考えながら見て回るのは楽しいものです。

1階の「3331 Gallery」で開かれていた『藤幡正樹キュレーション NFT企画「My First Digital Data」』も、なかなか興味深いものでした。

『藤幡正樹キュレーション NFT企画「My First Digital Data」』会場風景

出品作は、「初めて撮ったデジタル写真」。まず、出品している面々がすごいのです。伊藤穰一、宇川直宏、小池一子、佐藤卓、高嶺格、都築響一、八谷和彦…。どうでしょうか。魅力的な美術家やデザイナー、キュレーター、編集者などの名前には、かなり興味を引かれますよね。

出品作は2000年代のものが多かったでしょうか。出品者は、その頃デジタル写真を撮り始めたということになります。それにしても、どうやって、各自が「初めて撮ったデジタル写真」を探したのか。なかなか大変だったと思います。おそらく現在使っている機器やSDカードなどの保存メディアは当時のものではない場合がほとんどで、保存しているものを引っ張り出す必要があったと推測できるからです。

写っている内容は人だったり物だったり風景だったりよくわからないものだったりいろいろでしたが、特徴はすべて、プリントされたものを額縁に入れて展示されていたこと。おそらくもともと額装されたものなどはなかったはずです。展示の手法自体に一種のパロディの要素もあるようにも思いました。そして、作品本体はそもそもがデジタル写真なのですから、考えようによっては、展示されたプリントのほうが「複製」になるのです。何ともおもしろい試みではありませんか。

NFTということでデジタルの証明書がつくわけですが、購入申込みの期限であるこのアートフェアの会期終わりまでに、何人が同じ作品に購入を申し込んでもよく、それぞれの作者が決めた金額を頭割りにした金額が、売却価格になるのだそうです。つまり、人気が高い作品ほど安く買えることになります。これも、美術の常識とはちょっとずれるところが面白いですね。販売は仮想通貨「イーサ(ETH)」で行うとのこと。ここで買ったものはもちろん、別の場で売りに出してもかまわないのです。アートフェア終了後は販売数が確定するので、人気が高い作品ほど安く買えるという現象は起きないことになります。その金融性の変化についても、なかなか興味深く受け止めています。

さて、「初めて撮ったデジタル写真」にどれほどの芸術性があるのか。解像度が粗く、ボケているような作品も散見されましたが、もはや歴史的な遺物になりかけているものゆえのオーラが出ているものが多かったように思います。

もう一つ紹介しておきたいのが、「優美堂再生プロジェクト」神田神保町の額縁店「優美堂」に残っていた多数の額縁に入れる絵を、現代のアーティストたちに描いてもらうというプロジェクトです。

「優美堂再生プロジェクト」会場風景

普段は神田神保町の旧優美堂で展示しており、今回はアートフェアに合わせて出品したとのことでした。ちょっと昭和な感じのする額縁も、現代のアーティストの手にかかると、けっこう楽しい存在に変わるから面白いものです。近年の現代美術アーティストは、額縁を使わないことも多いですよね。むしろ、使わないのが主流のようにも思います。そんな現状の中であえて額縁を使うことには、新たな意味が出てくるのではないでしょうか。額縁を「画材」として使って作家が自分の表現をしたといった風に考えればいいのかもしれません。

【イベント概要】
イベント名:3331 ART FAIR 2022
会場:アーツ千代田3331(3331 Arts Chiyoda)
会期:2022年10月29日(土)~30日(日)

■参加ギャラリー、作家、キュレーター等は、下記のサイトでご確認ください。



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