ラクガキストつあお/小川敦生

美術ジャーナリスト兼日曜ヴァイオリニスト兼ラクガキスト。日経エンタテインメント記者、日…

ラクガキストつあお/小川敦生

美術ジャーナリスト兼日曜ヴァイオリニスト兼ラクガキスト。日経エンタテインメント記者、日経アート記者・編集長、日経新聞文化部記者等を経て多摩美大教授。国際美術評論家連盟会員。Music Dialogue理事。著書に『美術の経済』(インプレス)。X(旧Twitter):@tsuao

マガジン

  • ラクガキストつあおのアートノート

    美術ジャーナリスト兼ラクガキストつあおの、展覧会取材・鑑賞等の記録です。愚考も入ることがあります。

  • つあおとまいこのゆるふわアート記

    • 56本

    みなさん、こんにちは! 浮世離れマスターズのつあお&まいこです。ゆるゆるふわふわのアートツアーに参加しませんか。

最近の記事

「今蕭白」が描いた龍に注目〜静嘉堂@丸の内「ハッピー龍イヤー!」

静嘉堂@丸の内(東京・丸の内)の企画展「ハッピー龍(リュウ)イヤー! 〜絵画・工芸の龍を楽しむ〜」のプレス内覧会に参加した(2023年12月25日)。タイトルからもわかるように、本展は、2024年の干支にちなんで「龍」をモチーフにした作品を集めた企画展だ。出品作品は、静嘉堂文庫美術館の館蔵品のみで構成されている。本記事では、美術品を通して龍と向き合うことの楽しさ・面白さを少しでも伝えられればと思う。 インド・中国・日本の神が融合 そもそも「龍」は古い時代から中国や日本の美

    • 土偶を読むを読むを読む〜「土偶=植物」という新説を巡る攻防

      2023年に出版された書籍を回顧する中で、ぜひ挙げておきたい1冊がある。望月昭秀編著『土偶を読むを読む』(文学通信、2023年4月、以下「望月本」とする)だ。 単刀直入に言えば、2021年4月に晶文社から刊行された竹倉史人著『土偶を読む』(以下「竹倉本」とする)で書かれた新説の内容を丁寧に吟味し、誤謬を解き明かした書籍である。 新説は実証的な検証のもとで概ね否定 「竹倉本」では、土偶は人間、特に女性をかたどったものであるという通説を覆す内容が話題を呼んだ。たとえば中空土

      • アーカイヴに見る1970年大阪万博のインパクト

        勝見は1970年の大阪万博全体のデザインに大きく関わり、秋山は一部のパヴィリオンで現代音楽のプロデュースに深く関わった人物である。戦後日本の高度経済成長を象徴する大イベントとなった同万博の一側面を見せるこの展示では、デザインや現代音楽が当時の社会の中でどんな存在感やインパクトを持っていたのかを垣間見ることができた。 ピクトグラムの利用を推進した勝見勝 勝見勝は、第二次世界大戦後の日本で日英併記の季刊雑誌『グラフィックデザイン』を創刊するなど、日本のデザイン界を牽引する評論

        • 葛飾応為の肉筆浮世絵に見る女性画家の革新@太田記念美術館

          葛飾北斎の娘で、江戸末期の女性画家として知られている葛飾応為(かつしか・おうい、生没年不詳)の肉筆画《吉原格子先之図》が、所蔵元の太田記念美術館(東京・原宿)で開かれている『葛飾応為「吉原格子先之図」 ―肉筆画の魅力』展(11月26日まで)に出品されている。同館によると、コロナ禍を挟んで3年半ぶりの公開という。 シルエットの男たちは「闇」の象徴か この作品には実に様々な魅力がある。列挙してみた。 ・現代の目で見ても、明暗の描き分けが斬新。 ・吉原を題材にしつつ、遊女をクロ

        「今蕭白」が描いた龍に注目〜静嘉堂@丸の内「ハッピー龍イヤー!」

        マガジン

        マガジンをすべて見る すべて見る
        • ラクガキストつあおのアートノート
          ラクガキストつあお/小川敦生
        • つあおとまいこのゆるふわアート記
          つあお&まいこ(浮世離れマスターズ) 他

        記事

        記事をすべて見る すべて見る

          その虎はやはり猫だった! 特別展「長沢芦雪」@大阪中之島美術館レビュー

          江戸時代中期の画家、長沢芦雪(1754〜99年)が描いた虎は、実に魅力的である。大阪中之島美術館で開かれている「特別展 生誕270年 長沢芦雪 ー奇想の旅、天才絵師の全貌ー」を訪れて、芦雪が数多描いた「奇想」を見た。そのレビューを記しておきたい。 応挙ゆずりの動物愛 和歌山・無量寺蔵の《虎図襖》が、11月5日までの前期展示で出品されている(※)。襖の上下いっぱいを使って大きく描かれた虎の、画面から飛び出さんばかりの躍動的な表現が特徴的な作品だ。 ※本記事に写真を掲載した

          その虎はやはり猫だった! 特別展「長沢芦雪」@大阪中之島美術館レビュー

          卵と身体で生を確かめる ソー・ソウエンのパフォーマンス@√K Contemporary

          美術家ソー・ソウエン(Soh Souen)のパフォーマンスがクールだ。 ソーは普段、身体と壁や樹木などの間に生卵をはさむパフォーマンスを一人で演じている。ただはさむだけではない。あるときには4時間、あるときには10時間はさみ続けているという。「常軌を逸している」との思いが胸の内と外を去来する。一方で、「それは何のためにやっているのか?」とも思う。東京・神楽坂のギャラリー、√K Contemporaryで個展が開かれると知り、確認に出かけた。 9月15日に同ギャラリーで開か

          卵と身体で生を確かめる ソー・ソウエンのパフォーマンス@√K Contemporary

          壺の上に壺の絵を描いたピカソの遊び心@ヨックモックミュージアム

          東京・青山のヨックモックミュージアムで開かれている『ピカソのセラミック-モダンに触れる』展、会期は9/24まで。 ピカソ独特の作風の絵を陶芸という立体作品の中で表現しているわけですが、器の形を生かした描写、とても気が効いているのです。立体を解体して再構成することで前代未聞の独自の画風としたキュビスムの作家が、その絵を立体に施す、つまり立体に戻すこと自体にも、なんとも言えない面白みがあります。 壺の上に壺の絵を描くとか、くびれのある花瓶に裸婦の絵を描くとか、なんだかとっても

          壺の上に壺の絵を描いたピカソの遊び心@ヨックモックミュージアム

          フランスにこんなに暗い絵があったとは! ブルターニュ展@国立西洋美術館で「黒の一団」の絵を見る

          国立西洋美術館で開かれている企画展「憧憬の地 ブルターニュ モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」は、フランスのブルターニュ地方という地域をテーマにした企画だ。フランスはモネ、ルノワール、ゴッホらをはじめとする多くの偉才を生んだり育てたりしてきたが、特に19世紀以降は鉄道網が整備されたことなどから、移動が盛んになった。 ブルターニュ地方はフランス北西部にあり、半島を成して海に面している。19〜20世紀前半にはモネ、シニャック、ゴーガン、さらには黒田清輝など、多くの画家がこの

          フランスにこんなに暗い絵があったとは! ブルターニュ展@国立西洋美術館で「黒の一団」の絵を見る

          大雨で倒れた樹齢1300年の御神木から生まれた佐藤壮馬のアート作品@資生堂ギャラリー

          東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催中の第16回 shiseido art egg展で、佐藤壮馬のインスタレーション作品《おもかげのうつろひ》が展示されている。会場でこの作品を初めて見た人は、おそらく何をどう表現しているのかがまったくわからないのではないだろうか。 しかし、感じられる何かがあるはずだ。曲面を成した白い物体が、見えない何かを円柱状に囲んでいる。つまり、その円柱部分には、何かが存在していることをほのめかす。 それは、2020年7月11日に豪雨によって倒れた、岐阜

          大雨で倒れた樹齢1300年の御神木から生まれた佐藤壮馬のアート作品@資生堂ギャラリー

          あまりにも美しい西洋中世の彩飾写本類がずらりと並んだ「本と絵画の800年」展@練馬区立美術館

          東京・中村橋の練馬区立美術館で開かれている「本と絵画の800年 吉野石膏所蔵の貴重書と絵画コレクション」という企画展の内容は、極めて貴重である。石膏ボードメーカー最大手企業である吉野石膏のモネやピカソらの絵画をはじめとする約200点にもおよぶ所蔵品が出品された中で、日本ではほとんど見る機会がない西洋中世の彩飾写本などの多くの貴重書が展示されているからだ。本記事では、その貴重書の一部について紹介する。 ヨーロッパで活版印刷が発明されたのは、15世紀とされる。しかし、それ以前か

          あまりにも美しい西洋中世の彩飾写本類がずらりと並んだ「本と絵画の800年」展@練馬区立美術館

          「なんじゃ、こりゃ」に始まったタグチアートコレクション@角川武蔵野ミュージアム

          企業家、田口弘さんの「なんじゃ、こりゃ」という驚きから始まったタグチアートコレクションを展示する「タグコレ 現代アートはわからんね」展が、埼玉県所沢市の角川武蔵野ミュージアムで開催中だ。 何せ、「なんじゃ、こりゃ」と「現代アートはわからんね」である。もちろんそれらは現代アートの難解さから出てくる言葉なのだが、そのとても親しみの湧く言い回し自体に、当初から田口さんが現代アートを楽しんでいた様子がにじみ出ている。 田口さんは1980年代末頃、東京の街なかでキース・ヘリング(※

          「なんじゃ、こりゃ」に始まったタグチアートコレクション@角川武蔵野ミュージアム

          えも言われぬほど美しい音楽を奏でていた古代中国の楽器を愛でる【泉屋博古館東京】

          日本の寺の鐘(かね)は通常一つしかないため、鳴った音を聞いていても音程を意識することはあまりないのではないだろうか。だが、その美しく味わいのある音と音程を持っていることから、鐘は「楽器」に分類されるべきものだ。 先日、鐘が楽器であることがよくわかる遺物の展示に巡り合った。東京・六本木の泉屋博古館東京で開かれている「不変/普遍の造形 住友コレクション中国青銅器名品選」という企画展だ。会場で目にしたのは、大きさが少しずつ違う12個の鐘(※)がずらりと並んだ《ひょう羌鐘(ひょうき

          えも言われぬほど美しい音楽を奏でていた古代中国の楽器を愛でる【泉屋博古館東京】

          丸山直文の水の表現の魅力と東日本大震災@ポーラ美術館&国立新美術館

          ポーラ美術館(神奈川県箱根町)で始まる『丸山直文「水を蹴る―仙石原―」展』のプレス内覧会に参加し、極めて印象に残る言葉を作家本人から聞いたので、記しておきたい。 丸山直文さん(1964年生まれ)は、ぼかしとにじみの作家である。風景を描く画家なのだが、豊かな色彩にほどよいぼかしが入っている画面を見て、いつも、前に立つだけで心地よい、幻想的な世界に連れて行ってくれるなあという感想を、筆者は持っていた。 今回丸山さんの話を聞いてまずわかったのは、ぼかしに独自の手法を用いているこ

          丸山直文の水の表現の魅力と東日本大震災@ポーラ美術館&国立新美術館

          大竹伸朗と「別海」の酪農生活

          NHK「クローズアップ現代」をたまたま見ていたら、テーマが「朝一杯の牛乳が消える!? 酪農危機の知られざる実態」。興味を引かれ、見続けていると、ほんの少しだけだったが、北海道・別海の酪農家が映った。 現代美術に親しんでいる者の中には、「別海と言えば大竹伸朗!」と思う人も結構いるのではないだろうか。大竹さん独自の書体による「別海」の文字を施したTシャツなどもミュージアムグッズとしてかなり以前から販売されており、「別海=大竹伸朗」というつながりは、瀬戸内国際芸術祭などを中心に、

          大竹伸朗と「別海」の酪農生活

          実は拾いたくなる「すてるデザイン」@GOOD DESIGN Marunouchi

          東京・丸の内のGOOD DESIGN Marunouchiで、「すてるデザイン〜ゴミを価値に変える100のアイデア」 という企画展が開催されているというので、出かけてみた。筆者が教員として勤めている多摩美術大学のデザイン関係の学科と一般企業の協働による成果物の展示であることをお断りしておく(ただし、筆者の所属は芸術学科であり、出品者の中には直接教えている学生は多分いない)。企業との協働、すなわち産学連携の成果ということで、一定の水準以上のものばかりが展示されていた。 「すて

          実は拾いたくなる「すてるデザイン」@GOOD DESIGN Marunouchi

          死を通して生を伝える藤原新也の祈り@世田谷美術館

          写真家として知られる藤原新也さんの半世紀間にわたる活動の中で生まれ出てきたものを目一杯受け止めることのできる「祈り・藤原新也」展が、世田谷美術館で開かれている。 まず心を捉えたのは、まだ20代の頃にインドに渡って撮影した写真の数々だ。 とても半世紀も前の風景とは思えず、今も生きているインドの姿が写っていることを感じた。仮に同じ場所の今の風景が近代的な姿に変わっていたとしても、あまり重要なことではないだろう。藤原さんの写真は過去の記録というわけではなく、インドのそこここにある

          死を通して生を伝える藤原新也の祈り@世田谷美術館