ラクガキストつあお/小川敦生

美術ジャーナリスト兼日曜ヴァイオリニスト兼ラクガキスト。「日経エンタテインメント」記者、「日経アート」記者・編集長、日経新聞文化部記者等を経て多摩美大教授。国際美術評論家連盟会員。Music Dialogue理事。著書に『美術の経済』(インプレス)。Twitter:@tsuao

ラクガキストつあお/小川敦生

美術ジャーナリスト兼日曜ヴァイオリニスト兼ラクガキスト。「日経エンタテインメント」記者、「日経アート」記者・編集長、日経新聞文化部記者等を経て多摩美大教授。国際美術評論家連盟会員。Music Dialogue理事。著書に『美術の経済』(インプレス)。Twitter:@tsuao

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    • ラクガキストつあおのアートノート

      美術ジャーナリスト兼ラクガキストつあおの、展覧会取材・鑑賞等の記録です。愚考も入ることがあります。

    • つあおとまいこのゆるふわアート記

      • 47本

      みなさん、こんにちは! 浮世離れマスターズのつあお&まいこです。ゆるゆるふわふわのアートツアーに参加しませんか。

    最近の記事

    丸山直文の水の表現の魅力と東日本大震災@ポーラ美術館&国立新美術館

    ポーラ美術館(神奈川県箱根町)で始まる『丸山直文「水を蹴る―仙石原―」展』のプレス内覧会に参加し、極めて印象に残る言葉を作家本人から聞いたので、記しておきたい。 丸山直文さん(1964年生まれ)は、ぼかしとにじみの作家である。風景を描く画家なのだが、豊かな色彩にほどよいぼかしが入っている画面を見て、いつも、前に立つだけで心地よい、幻想的な世界に連れて行ってくれるなあという感想を、筆者は持っていた。 今回丸山さんの話を聞いてまずわかったのは、ぼかしに独自の手法を用いているこ

      • 大竹伸朗と「別海」の酪農生活

        NHK「クローズアップ現代」をたまたま見ていたら、テーマが「朝一杯の牛乳が消える!? 酪農危機の知られざる実態」。興味を引かれ、見続けていると、ほんの少しだけだったが、北海道・別海の酪農家が映った。 現代美術に親しんでいる者の中には、「別海と言えば大竹伸朗!」と思う人も結構いるのではないだろうか。大竹さん独自の書体による「別海」の文字を施したTシャツなどもミュージアムグッズとしてかなり以前から販売されており、「別海=大竹伸朗」というつながりは、瀬戸内国際芸術祭などを中心に、

        • 実は拾いたくなる「すてるデザイン」@GOOD DESIGN Marunouchi

          東京・丸の内のGOOD DESIGN Marunouchiで、「すてるデザイン〜ゴミを価値に変える100のアイデア」 という企画展が開催されているというので、出かけてみた。筆者が教員として勤めている多摩美術大学のデザイン関係の学科と一般企業の協働による成果物の展示であることをお断りしておく(ただし、筆者の所属は芸術学科であり、出品者の中には直接教えている学生は多分いない)。企業との協働、すなわち産学連携の成果ということで、一定の水準以上のものばかりが展示されていた。 「すて

          • 死を通して生を伝える藤原新也の祈り@世田谷美術館

            写真家として知られる藤原新也さんの半世紀間にわたる活動の中で生まれ出てきたものを目一杯受け止めることのできる「祈り・藤原新也」展が、世田谷美術館で開かれている。 まず心を捉えたのは、まだ20代の頃にインドに渡って撮影した写真の数々だ。 とても半世紀も前の風景とは思えず、今も生きているインドの姿が写っていることを感じた。仮に同じ場所の今の風景が近代的な姿に変わっていたとしても、あまり重要なことではないだろう。藤原さんの写真は過去の記録というわけではなく、インドのそこここにある

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            つあお&まいこ(浮世離れマスターズ) 他

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            若い写真家たちが現代の諸問題を考えさせてくれる「プリピクテジャパンアワード」@東京都写真美術館

            東京都写真美術館で開かれている「プリピクテジャパンアワード」という展覧会は、まだ3回目という若いアワードなのですが、筆者の雑感としては、すこぶるすぐれた内容でした。8人の作品が展示されているのですが、この記事では、そのうちの5人について書いておきます。 アワードの今回のテーマは「火と水」。審査員は、森美術館特別顧問の南條史生さんら4人です。写真とサステナビリティに関する国際写真賞プリピクテが日本を拠点とする写真家を対象にしたのが、このアワードとのこと。日本には森山大道や荒木

            田中泯が山梨県の農村地域で起こしたアートムーヴメントを顕彰する展覧会のキュレーターは名和晃平

            千葉県市原市の市原湖畔美術館で「試展―白州模写」と題した展覧会が開かれています(1月15日まで)。この展覧会、ゲスト・キュレーターが何と気鋭の現代美術家の名和晃平さん。それを聞いただけでもちょっとわくわくしますよね。 内容はさらに興味深いもので、舞踊家や俳優として知られる田中泯さんが1980年代後半から山梨県の白州町(現・北杜市)に移住、約20年間にわたって展開した「アートキャンプ白州」などのアートイベントを「模写」するという展覧会なのです。すでに著名だった田中さんのもとに

            人工知能美学芸術研究会が企画したアイヴズの交響曲第4番を聴いてしまった!

            3人の指揮者と合唱を必要とする交響曲――こう聞いただけでも、かなりの大曲であることが想像できるのではないだろうか。加えて独奏ピアノ、オルガン、さらにはオンドマルトノという、メシアンの『トゥーランがリラ交響曲』での使用が有名だが、ほかにはほとんど聞かない鍵盤楽器も。米国の作曲家チャールズ・アイヴズの交響曲第4番(1916年)は、こうしたきわめて特殊で大規模な編成を取っているためか、1世紀ほど前に作曲されたにもかかわらず、演奏機会にはあまり恵まれてこなかったようだ。 12月25

            川内倫子の光の魔術師ぶりに感じ入る

            東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「川内倫子 M/E  球体の上  無限の連なり」展へ。会期終了が近いので駆け込みで書き込み。 川内倫子(写真家、1972年生まれ)の作品の被写体は、主に「地球」と「生命」である。上空から遠くの地平線を写した作品は、人間などは小さな存在であり地球の営みのごく一部に過ぎないことを思わせる一方で、樹木のみずみずしさや鳥の飛来などが、地球のスケールに比べればミクロなものにこそ生命力は存在するのだということを感じさせる。柔和な表現による作品の

            岡本太郎のギョロリとした目ににらまれるととても楽しい

            東京都美術館で開かれている「展覧会 岡本太郎」を訪れた。これまで川崎市岡本太郎美術館や東京・青山の岡本太郎記念館、数年前に東京国立近代美術館で開かれた「生誕100年 岡本太郎」展などでかなり多くの岡本太郎(1911〜96年)の作品を見てきたにもかかわらず、ここでも新しい「発見」があった。そうした経験をさせてくれるのは、企画を十分に練り上げるキュレーターの力があってこそだと思う。今回発見させてくれたのは、太郎の作品に「にらまれる」ときに持つ特殊な感覚である。 のっけから、本流

            失われた足利将軍家の襖絵を「復活」させたスゴ技の企画展

            東京・表参道の根津美術館で開催中の特別展「将軍家の襖絵」は、東山御物(ひがしやまごもつ)などの収集で知られる室町時代の足利将軍家の襖絵を見せようという企画展なのですが、出かけてみると、あっと驚く展示内容でした。というのは、足利将軍家の邸宅にあった襖絵はまったく現存していないのに、この企画展が成立しているからです。 いったいどういうことなのか? 室町時代の将軍家には、連歌会や茶会を開き、能・狂言を鑑賞する場である「会所」と呼ばれる建物があったそうです。何とも優雅な空気が醸し出

            大竹伸朗は美術館自体をスクラップブックにしたのかも!/つあおのアートトーク

            アートのことについて音声放送でお伝えする「ラクガキストつあおのアートトーク」、今回おしゃべりしているのは、東京国立近代美術館で始まった「大竹伸朗展」のことです。いや、この展示、すごく快感なんです。作品の渦に身を埋められるとでも申しましょうか。ぜひ、お聴きください♪ ※冒頭の写真は、大竹伸朗展に出品されているスクラップブック作品の展示風景です。 展覧会名:大竹伸朗展 会場名:東京国立近代美術館(東京・竹橋) 会期:2022年11月1日〜2023年2月5日 公式ウェブサイト:

            アーティゾン美術館の「パリ・オペラ座」展がものすごく充実しているんです/つあおのアートトーク(音声)

            「ラクガキストつあおのアートトーク」を始めました。今回おしゃべりしているのは、アーティゾン美術館で始まった「パリ・オペラ座」展のことです。ぜひお聞きください! 展覧会情報については、下記のサイトでご確認ください。

            福田美蘭の作品が日展に落選したことの意義

            練馬区立美術館の「日本の中のマネ」展(11月3日まで)で展示されていた福田美蘭の《LEGO Flower Bouquet》が日展で落選し、今日から同館で再展示されることになったそうだ。(追記:会期当初から10月中旬まで練馬区立美術館で展示され、日展に応募後審査期間の間は展示されていなかった) レゴブロックで作った花を描いたこの作品は、練馬区立美術館で展示を始めた当初から、日展に応募するので審査期間は同館では展示されないこと、さらには落選した際には「日本の中のマネ」展で再展示

            3331 ARTS CHIYODAでアートフェアを楽しむ/NFTアートも販売

            「3331 ART FAIR 2022」(東京・千代田区のアーツ千代田3331で10月30日まで開催)の内覧会にプレス関係者として参加しました。1階のメインギャラリーでは26のギャラリーが出展、2階の「体育館フロア」では鷲田めるろ氏、藪前知子氏ら著名なキュレーターや全国の美大、アキバタマビなどが選定した作家の作品を展示するなど、アーツ千代田3331としてはかなり大掛かりなイベントとして開催されていました。 会場の旧練成中学校については千代田区とアーツ千代田3331の運営母体

            竹内栖鳳の《班猫》が独自の宇宙を創っている理由とは?

            山種美術館で開催中の「竹内栖鳳」展では、人気作《班猫》(はんびょう)が撮影可。同館初の試みとのことです。 竹内栖鳳(1864〜1942年)は、ライオンや熊からアヒルや蛙まで、実にさまざまな動物を描いた、動物愛に満ちた画家です。 沼津で出会った猫 をモデルに描いたというこの絵は、猫の体による渦巻のような表現が無地に近い背景と相まって深みのある世界を作っています。 落款と猫の位置関係は絶妙なバランスを見せています。毛描きがまた素晴らしく、目の当たりにすると意外と大きなこの作品

            ZOKU SHINGOは楳図かずおのシン黙示録なのではないか

            大阪・あべのハルカス美術館で開催中の「楳図かずお 大美術展」へ。一部撮影可だったので、会場写真を散りばめた。 筆者の頭の中で凄まじい記憶として残っている楳図の作品は、『漂流教室』だろうか。テレビ放映を途中から見てはまったのだが、原作が楳図かずおだと知り、魅力が増した。 怖いのに凝視してしまう。それが楳図の漫画だ。細部まで、とにかく描きこむ。だから、凝視せざるを得なくなるのだ。 この展覧会は回顧展ではない。メインの展示は27年ぶりの新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボ