和傘の美しさが映える昭和初期の雨の京都
京都市の星野画廊で開かれている「失われた風景・懐かしい光景」展で、前田荻邨(てきそん)という日本画家の《出町の緑雨》を見る機会を得た。無名画家が描いた雨の情景だが、清々しい作品だ。
描かれているのは、昭和初期の京都・出町柳の風景。和傘の美しさが際立っている。画家は、和傘を描きたかったから、わざわざ雨の風景を描いたのかもしれないとさえ思わせる。路面の雨の描写も美しい。日本画家も西洋の表現法を研究した時代だったが、水の反射を巧みに描いた成果は、写実性の視点から見ても、かなりイケ