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田中泯が山梨県の農村地域で起こしたアートムーヴメントを顕彰する展覧会のキュレーターは名和晃平

千葉県市原市の市原湖畔美術館「試展―白州模写」と題した展覧会が開かれています(1月15日まで)。この展覧会、ゲスト・キュレーターが何と気鋭の現代美術家の名和晃平さん。それを聞いただけでもちょっとわくわくしますよね。

展示風景/筆者撮影

内容はさらに興味深いもので、舞踊家や俳優として知られる田中泯さんが1980年代後半から山梨県の白州町(現・北杜市)に移住、約20年間にわたって展開した「アートキャンプ白州」などのアートイベントを「模写」するという展覧会なのです。すでに著名だった田中さんのもとには世界からたくさんのパフォーマーが集まっていたわけですが、ダンサーのみならず、美術家や音楽家も集まってきたのがまたすごい。展覧会では、榎倉康二さん、遠藤利克さん、剣持和夫さん、高山登さん、原口典之さん、名和晃平さん、藤崎了一さん、藤元明さんの8人の作品が出展されています。音楽関係で参加経験のある巻上公一さんは、開会初日に同館で開催されたシンポジウムにいらっしゃっていました。

だから、原口典之さんの《オイルプール》なども出展されている。ここでこの作品に出会えるとは思っていなかったので、なかなか感慨深いものがありました。

展示風景/筆者撮影
手前にあるのが、原口典之さんの《オイルプール》。なお、白州で制作したときは、地域への配慮から本来の素材である廃油ではなく、水を張ったとのこと

白州であったことの本筋である田中泯さんの活動については、ご本人のインタビューほか松岡正剛さん、高山登さん、大友良英さん、遠藤利克さんら多くの関係者による寄稿と、白州版《春の祭典》や伝統芸能、ベトナムやインドのダンス等のパフォーマンスについての「記録」を収録した図録が、非常に濃密でボリュームのあるドキュメントになっています。

『試展―白州模写 「アートキャンプ白州」とは何だったのか』(図録)

なぜ田中泯さんが白州に移住したのか、そこになぜ多くのアーティストが集まってきたのかなどについて、日本経済新聞社発行の有料ウェブマガジン「NIKKEI Financial」に拙稿を掲載する機会を得ましたので、お知らせしておきます(読者登録をしないと記事の一部しか見られませんが、ご了承ください)。移住した田中さんたちにとっては、農業もまた、大切な活動であったことがわかるかと思います。名和晃平さんが、学生時代にボランティアとして参加したのが、白州とのかかわりの初めだったことにも触れています。

※掲載した写真は、プレス内覧会で主催者の許可を得て筆者が撮影したものです。転載はご遠慮ください。

【展覧会情報】
展覧会名:試展-白州模写 「アートキャンプ白州」とは何だったのか
会期:2022年10月29日〜2023年1月15日
会場:市原湖畔美術館

芸能と工作・大地との生存―舞踊・芝居・音・美術・物語・建築・映像・農業

1985年、身体・労働・自然の本質的で密接な関係に憧れ、仲間たちと共に山梨県白州に移り住み、「身体気象農場」を開始した舞踊家・田中泯。その呼びかけのもと、1988年「白州・夏・フェスティバル」はスタートしました。バブル経済が始まり都市への一極集中が加速する中、日本列島の割れ目(フォッサ・マグナ)のキワにある白州の地で、都市と農村という二分法を越え、その境界に新しい文化と生き方を探り、世代、ジャンルを越えた人々が世界中から集った4日間の「祭り」。やがてそれは生活と創造の過程に力点を置いた「アートキャンプ白州」(1993-99年)、「ダンス白州」(2001-09年)へと展開していきます。今も伝説のように語られ、人々の心に生き続ける<白州>。そこで、パフォーマー、美術家、建築家、音楽家、文化人、また多くの若者や子供たちは、何を体験したのでしょうか。本展は、その膨大な資料、写真、映像などのアーカイブや、出版、稀有な野外美術プロジェクトに参加した美術家たちのトリビュート作品等を通して、<白州>を照射する試みです。

市原湖畔美術館のウェブサイトより転載


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