戦略と戦術

知財案件のサポートをしていると、話が食い違うことがよくある。戦略の話をしているのに、戦術の細かい議論を持ちかけられることなどだ。

あくまでも一つの視点ではあるがWikipediaでは「戦略とは、一般的に特定の目的を達成するために長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術、科学である」、「戦術とは、作戦・戦闘において任務達成のために部隊・物資を効果的に配置・移動して戦闘力を運用する術である」とされている。

たとえばある特許出願を提案する際に、知財戦略上、この出願はこういう位置づけ、ということで提案すると、用意された明細書の中の1段落、1文章について、まず、議論を始めてしまわれることがある。もちろん、細かい点は、最終的に調整は必要となるものの、そもそも、この出願の位置づけについて議論した上で、明細書の構成(特に将来の権利範囲とする部分)を検討し、完成させる。ここで、将来の権利範囲とする部分は、現時点で特許請求の範囲(クレーム)に限られない。

知財の業務を長年やってこられた方は、形式には敏感である。クレーム数がいくつ、文字数が何字(?)などをどのようにして「節約するか」を考える癖がついている。20年も前に廃止された弁理士報酬額表( 平成13年1月6日廃止)において、両者が料金を定めていることに起因するものと思われる。節約ありきで、クレーム1個削減したり、1文字、1文、1段落を削減することにこだわると、big pictureを見失ってしまうし、そもそもbig pictureを見ていないということになる。

そもそも、知財戦略は、一個一個の特許出願単位で考えるものではなく、会社或いは事業単位で考えるべきであり、その戦略を設定してから、各々の特許出願の位置づけを検討し、内容に落とし込んでいくべき、ということになる。

グローバルで戦える知財戦略を構築するためには、big pictureを描き、そこから落とし込んだ精緻な知財戦略を構築し、理解しておくべきである。最近公開された特許庁の情報でも、ようやく、この点に触れてきているようであり、米国の成功事例と日本の多くの失敗事例の対比にこの点を指摘している点評価できる。

https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/bio_venture.pdf

企業における知財担当者(弁理士であっても)に経営者的視点がないことと、経営者に知財の視点がないことが日本の弱みであると思われる。なんとかこの点を改革していきたいものである。

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