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研究室20周年を迎えて-⑤ [プロテインフォールディング病]

 こんにちは。熊本大学薬学部、准教授の首藤です。

 第5回目は、細胞内品質管理・分子シャペロン研究からプロテインフォールディング病研究のメッカへという話題について、共有させていただきます。

 第1回目の記事は、こちら
 (記念事業の趣旨説明、この記事(note)で何を目指すか?)
 第2回目の記事は、こちら
 (甲斐広文教授について)
 第3回目の記事は、こちら
 (創薬研究の醍醐味と物理療法)
 第4回目の記事は、こちら
 (難治性遺伝性肺疾患研究からCOPD研究への道のり、国際共同研究の展開)

 なお、今回の記事においても、研究室出身で、アカデミアで活躍される方々については、具体的な名前が登場しますが、ここではご紹介できない多くの方々の成果でもありますので、予め申し添えておきます。


6. 細胞内品質管理・分子シャペロン研究からプロテインフォールディング病研究のメッカへ

甲斐研究室では、CFおよびCFTR研究をきっかけとして、タンパク質の品質管理やその異常に伴い発症する疾患(プロテインフォールディング病)や関連分子に着眼した研究を実施してきました。すなわち、全身にアミロイド線維が沈着する家族性アミロイドポリニューロパチーの原因分子トランスサイレチン(TTR)、さらに、小児腎臓病の代表であるアルポート疾患の原因分子Type IV コラーゲン(COL4A3/4/5)の小胞体内の挙動、ならびに創薬戦略やオリジナル評価技術の開発を行い、数々の世界レベルの研究成果へと繋げてきました。その成果の一部は、下記のプレスリリース等から垣間見えるのではないかと思います。


[アミロイドポリニューロパチーの原因分子トランスサイレチン(TTR)とアルツハイマー病研究]

細胞内の異常なタンパク質を取り除く新しいメカニズムを発見

 熊本に患者さんが多い遺伝性難病である家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の治療薬開発研究の過程で偶然発見された原因タンパク質トランスサイレチン(TTR)の調節に関わる分子メカニズムに関する報告です。甲斐研究室としての初めてのCellプレス雑誌(Molecular Cell)の表紙を飾り、当該分野に大きなインパクトを与えました。本内容は、熊本人財新聞第20号でも紹介されました。この仕事の第1著者の佐藤氏は、現在も熊薬スタッフとして頑張っています。

また、最近では、トランスサイレチン(TTR)と同様にアミロイドを形成して引き起こされるアルツハイマー型認知症に関わる研究を、甲斐研究室出身で、当該分野の権威である、現在、名古屋市立大医学部教授齊藤氏とともに実施しています。


[アルポート疾患の原因分子Type IV コラーゲン(COL4A3/4/5)]

遺伝性の腎炎:アルポート症候群の病態進行を抑制するキータンパク質を解明!

 癌抑制遺伝子として知られる p53 が遺伝性の腎疾患であるアルポート症候群(Alport Syndrome)の病態進行を抑制する重要なタンパク質であることを解明しました。p53の意外な機能とのことで、注目を浴び、腎臓研究のトップジャーナルである国際誌 Journal of American Society Nephrology の表紙を飾りました。

小児遺伝性腎炎の治療薬開発のための高感度・多検体分析システムの開発に成功!~遺伝性難病アルポート症候群の治療薬開発に道筋~

 アルポート症候群の原因となるタンパク質(コラーゲン)の異常を高感度で検出する技術を確立し、その異常を是正できる治療薬開発を可能にしました。High throughput screeningという手法にも適応可能で、世界初のアルポート症候群の根治療法薬開発の基礎を作りました。本成果は、CellプレスのCell Chemical Biologyに掲載され、その功績について、Previewでも紹介されました。

遺伝性の難病腎炎「アルポート症候群」の遺伝子型から病気の重症度を予測するシステムの開発に成功!

 神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科との共同研究により、アルポート症候群の原因遺伝子4型コラーゲンの遺伝子型から、病気の重症度を予測するシステムの構築に成功しました。今後、アルポート症候群患者の遺伝子の変異情報のみで、重症度を予測するシステムの構築へと繋がれば、遺伝性疾患のプレシジョン・メディシン(精密医療、遺伝子型に応じた治療方針を模索する)の分野を大きく推進することに貢献できます。

アルポート症候群に対する核酸医薬を用いた新規治療法開発ー難治性遺伝性腎疾患モデル動物に著効することを確認ー(神戸大学医学部との共同研究)

 神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科や第一三共株式会社等との共同研究で、アルポート症候群に対し、核酸医薬を用いた特異的治療法としてエクソンスキッピング療法の開発を行い、同療法が疾患モデル動物において著効することを明らかにしました。本成果は、世界的科学雑誌Nature誌のNature Communicationsに掲載されました。


 この記事では、本研究室の細胞内品質管理・分子シャペロン研究からプロテインフォールディング病研究のメッカへについて、ご紹介しました。次回は、私たちがこれまで取り組んできた基礎研究の醸成から、ミッション・ビジョン戦略の導入で、本気の創薬や事業の出口化を目指すステージへについて、ご紹介いたします。

 次回を、お楽しみに〜!


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"研究室20周年を迎えて(熊本大薬・遺伝子機能応用学)"の全シリーズのリンク
 第1回目の記事は、こちら
 (記念事業の趣旨説明、この記事(note)で何を目指すか?)
 第2回目の記事は、こちら
 (甲斐広文教授について)
 第3回目の記事は、こちら
 (創薬研究の醍醐味と物理療法)
 第4回目の記事は、こちら
 (難治性遺伝性肺疾患研究からCOPD研究への道のり、国際共同研究の展開)
 第5回目の記事は、こちら
 (細胞内品質管理・分子シャペロン研究からプロテインフォールディング病研究のメッカへ)
 第6回目の記事は、こちら
 (基礎研究の醸成から、ミッション・ビジョン戦略の導入で、本気の創薬や事業の出口化を目指すステージへ)
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