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【院試解説】令和元年度 東京工業大学 理学院 化学系 問題7 有機化分野(選択問題)


こんにちは やまたくです。

今日は院試の解説として

令和元年度 東京工業大学 理学院 化学系 問題7 有機化分野(選択問題) 

をいつも通り解いていこうと思ったのですが…
今日はちょっと視点を変えて上記の大問を例にとって院試の問題をどうやって作っているのか?考えていこうと思います。

問題自体は著作権の問題で載せることはできないので、大学のホームページからご覧になってください。



1. 院試の元となる論文

今回の大問はThe Journal of Organic Chemistry に掲載された

Synthesis of the Scalarane Sesterterpenoid 16-deacetoxy-12-epi-scalarafuranacetate

という論文が出題の元になっています。(↓下にリンクを貼っておきます。大学在学中の方は是非、コロナで在宅学習中だと思うのでVPN機能等を使って読んでみてください)


東工大の理学院化学系の有機化学の問題はここ数年このような全合成系の問題が出題されていますが、いずれも論文からの引用になってきています。



2. 設問となるポイント

全合成のスキームが論文からの引用であるということはわかりましたが、実際に問題として出題されるポイントはどのような部分になるのかが一番大きなポイントになってきます。

出題される問題の絶対条件として

学部生の知識レベルで説明可能なこと

が挙げられます。

大学院試験を受ける多くの人は大学の学部4年生です。(もちろん社会人の方や、飛び入学等を目指す学部生等もいるとは思います。)

そのため、どんなに複雑な化合物の合成であっても、学部生の知識で解けるような問題にしておく必要があります。


例えば今回の大問でも7 a)は m-クロロ過安息香酸 (mCPBA)を用いたエポキシ化反応ですので下記のようになります。

スクリーンショット 2020-05-19 午前10.31.17

骨格が複雑なだけで反応としては至ってシンプルなものになっています。

他の問題もマクマリー、ボルハルト・ショアー、ウォーレンなどの有名な教科書に載っているものがほとんどだと思います。

3. どう対策するか

ここからはどう勉強するかについて簡単にですが書かせていただきます。

論文から出題される問題をいかに対策するかということになりますが、「闇雲に合成関連の論文を読みましょう」とは言えません…数があまりにも膨大になってしまいます。(もちろん自身が志望する研究室に関連する論文は出来るだけ読んでおくことをお勧めします)

一番いいのは、ご自身の大学で使っている教科書の問題を解いて答え合わせをすることだと思います。

幸いにもマクマリー、ボルハルト・ショアー、ウォーレンなどは詳しい解答も販売されているので自習しやすいのも特徴ですね。


ただ院試の対策を始めるタイミングによっては教科書全ての問題を解くことはできないという人も多いと思います。

そんな方にお勧めしたいのが下記の本です。

かなり薄い本ですが学部で習った反応をざっくり思い出すのには十分です。

反応機構等は記載が少ないので自分で補う必要がありますが……


電子移動の書き方から復習したい人には活気の本がお勧めです。

有機化学の対策は基本的には上記の二冊と、ご自身の大学で使っていた教科書を利用すれば問題ないと思います。


4. 終わりに

今日は令和元年度 東京工業大学 理学院 化学系 問題7 有機化分野(選択問題) を例にとって大学院の入試問題がいかに作られているかをみてみました。

問題が論文から作られていようと、院試で必要な知識は学部で学んだものです。
したがって、どのような形で問われても答えられるように、表面上の知識だけではなく、学んだ知識を自分の中で深化させておくことが院試を突破する上で大切になってくると思います。





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