【院試解説】令和元年度 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 9B (1)
こんにちは やまたくです。
今日は院試解説として
令和元年度 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 9B(1)
を解いていこうと思います。
著作権上の都合から、問題は大学ホームページのリンクからダウンロードしてください。
① 逐次重合の代表例
3つの反応とも代表的な逐次重合の反応式が並んでいます。
まず化合物Aについて
フェノール樹脂の合成にはホルムアルデヒドを利用します。従って化合物Aの答えは以下のようになります。
フェノール樹脂を代表に、メラミン樹脂や尿素樹脂などの樹脂を合成する際にホルムアルデヒドは利用されます。このような樹脂は付加反応と縮合反応によって生成されるため、付加縮合 (Addition condensation)と呼ばれています。
付加縮合は塩基条件でも酸性条件でも起こることが知られており
一般に、塩基性条件では付加反応が生じやすく
酸性条件では縮合反応が生じやすい
という性質を持っています。
また、フェノールとホルムアルデヒドから塩基性触媒によって生成する化合物はレゾール、酸性触媒によって生成される化合物はノボラックという風に触媒によって名称が変わることにも注意しましょう。
続いてポリマーBについて
これは有名なポリアミドの1つ
テレフタル酸ジクロリドとパラフェニレンジアミンの重縮合 (Polycondensation)によるケブラーの合成ですね。
従って反応によって得られるポリマーBは以下のようになります。
ケブラー(Kevlar)は、芳香族ポリアミド系樹脂の登録商標です。1965年に化学者でデュポン社に勤めていたステファニー・クオレクによって発明され、現在でもその高い高強度 (鋼鉄の5倍の強度)・高耐熱性から消防服などに利用されています。また、ケブラーは結晶性のポリマーであり、一般の有機溶媒に溶けず、溶融もしないために成形が困難なポリマーの1つです。そのため、濃硫酸に溶解することで成形していることが大きな特徴です。
そしてポリマーEについて
これはイソシアネートとアミンの反応によって合成されるポリウレアの合成反応で重付加 (Polyaddition) に分類されます。従ってポリマーEは以下のようになります。
重付加反応は重縮合反応とは異なり、脱離成分がないことが特徴です。
今回はイソシアネートとアミンの反応でしたが、イソシアネートとアルコールの反応の場合にはポリウレタンが生成することになります。
② 逐次重合の重合挙動
逐次重合 (Chain-growth polymerization) とよく比較されるのが、連鎖重合 (Step-growth polymerization) です。
連鎖重合では反応初期化から、高分子量のポリマーが生成し、反応率が上昇しても分子量に変化はないことが知られていますが、
逐次重合ではモノマーの濃度は直ちに減少し、高分子量のポリマーは高い反応率になるまで生成されないことが知られています。
一般に重縮合反応では重合度とモノマーの転化率(反応度)に以下の関係が成り立ちます。
従って本問題では p = 0.95を代入すれば良いので、
②の答えは20となります。
③ 重縮合の等量性と分子量の関係
二種官能基による重縮合や重付加などの逐次重合ではモノマー混合比の等量性が極めて重要になってきます。
その理由は前回の投稿で説明しているのでぜひ確認してみてください。
化合物CとDのモノマー混合比を r として表すと到達最高平均重合度は以下の式で表すことができます。
従って本問題ではr = 1 / 1.01を代入すれば良いので
③の答えは201となります。
終わりに
色々な大学院の過去問を解いていくと似た問題が結構出ているのことがわかって対策がしやすくなってきますね。
ぜひ皆さんも自分が受験する大学院以外の問題も見てみると試験対策がより良いモニになると思います。
質問やコメントがあれば残していってもらえれば嬉しいです。
(この記事は100%合っていることを保証する解答ではないので間違いがあるかもしれません。もし間違い等があればコメントで教えて頂ければ幸いです)
ご愛読いただきありがとうございます