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【大学化学への梯】フェノールフタレインの発色原因

こんにちはやまたくです。

今日から定期的に【高校化学への梯】というタイトルで高校化学と大学化学をつなぐような内容を掲載していこうと思います。
「梯」は「かけはし」と読みます。一般的に利用される「架け橋」ではなく「梯」を選んだのは、梯子(はしご)など上下をつなぐような場合に利用されることが多いため、高校と大学をつなぐという意味で目的とマッチした漢字だと考えたからです。
高校レベルの化学 (科学) の知識があれば理解できる程度の語彙レベルで大学の化学の一端に触れられるような記事をかけるよう努力していきます。

それでは早速本題に入りましょう。

1. フェノールフタレインとは?

フェノールフタレインは中学高校の化学実験でも頻繁に登場するので、ご存じの方も多いでしょう。

いわゆるpH指示薬と呼ばれる試薬の1つです。ここでコトバンクのブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説を見てみましょう。

化学式 C20H14O4 。酸塩基指示薬 (酸性では無色,pH8.0~9.8で変色,アルカリ性では赤色) として用いられる。無水フタル酸とフェノールを加熱してつくられる白色粉末。 1871年 A.バイヤーによってつくられた。エチルアルコールにはよく溶けるが,水にはほとんど溶けない。指示薬として用いられるほか,カドミウムや金の検出に,また緩下剤としても用いられる。

出展:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典


要するに酸性では無色、塩基性 (アルカリ性) では赤色に変化する指示薬ということですね。

大学ではよくフェノールフタレイン の英名:phenolphthalein から PPと略される場合が多いです。


2. フェノールフタレインはどうして塩基性で赤色になるの?

ではフェノールフタレインはどうして塩基性にすると赤色になるのでしょう?ここからは骨格構造式を用いて説明していきたいと思います。

フェノールフタレインの低pH (酸性) 条件での骨格構造式は以下のようになります。
高校生がこの骨格構造式をかける必要はありませんが、頭腦王出場などを目指している人はかけるといいかもしれませんね笑

これが塩基性条件になるとどうなるのでしょう?
実は骨格が少しだけ変化します。

分子が着色するかどうかは、単結合と二重結合の繋がり方が大きく影響します。
単結合と二重結合が交互に並んだような状態を共役が広がった状態と呼びます。

一般に、共役が広がれば広がるほど可視光を吸収しやすくなり、吸収されなかった色が私たちの目に届くことになります。

例えば下に人参がオレンジ色に見える原因のβカロテンの骨格構造を示します。

単結合と二重結合が沢山交互に並んでいることがわかります。この骨格は青〜緑色の光を吸収する性質を持っているので残った黄色〜赤色の光が私たちの目に届くため、人参はオレンジ色に見えます。

ではフェノールフタレインの話に戻りましょう。酸性条件では単結合と二重結合が交互に並んでいる部分はベンゼン環の部分に限られています。
それに対して塩基性になると、単結合と二重結合が交互に並んでいる部分が広がっている (共役が広がっている) ことが確認されます。

この結果、塩基性条件では青〜緑〜黄色の光を吸収するようになり、結果として、残った橙〜赤〜紫色の光が私たちに目に届くようになります。

3.終わりに

今日は共役の広がりというキーワードを使って、フェノールフタレインが塩基性で赤色になる理由を説明しました。

より詳しく学びたい人は高校物理で習うE=hν というアインシュタインの式を用いることで数式的に塩基性条件では青〜緑〜黄色を吸収する理由を説明できるようになります。

また大学化学で学ぶσ結合π結合という概念やHOMO-LUMOという概念を導入すると、より体系的に分子の色について理解できるようになります。
この点に関しては機会があれば詳しく説明していきたいと思います。

この記事を通して分子に色がつく理由を理解していただけたら幸いです。

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