理系文書×文系の私 “ignite to dull redness”?
翻訳3大分野「映像・文芸・産業(実務)」のうち、私がしているのは会社内での実務翻訳。
職場が理系業界とか理系の部署だったりすると、当然出会う翻訳も理系なわけで。
文系(というか私)にとって難解なフレーズが出てくると、一言訳すのに何時間もかかって調査することもありまして。
最近、苦戦したのは”ignite to dull redness “
理系の方、翻訳者の先輩方には「何だ、そんなこと」で済んでしまう事かもしれない。
そんな「そんなこと」に対する私のもがきっぷりを書いてみる。
ご対面
“Ignite to dull redness until S+V”
(until 以下が長いので主語Sと動詞Vで省略)
「SがVするまでignite to dull redness しなさい」ということは分かったけど、一体どゆこと?
まずはそのまま検索
Google検索窓にignite to dull rednessを入力。
似たような表現は出るものの、イメージが湧かない。じゃあ単語をバラして画像検索してみよう。
そしたら、redness で、ん?女性の顔と化粧品、
「redness を消します」
顔の赤みを隠す化粧品らしい。
てことは、redness は色の赤み。でも、dull?
Dull+色で検索すると、どうやら「くすんだ◯色」「暗い◯色」と分かった。
適切な用語ではないけど、とりあえずdull redness のイメージはつかめた。次は、ignite toの部分。dull redness とどういう関係なのか。
検索すれども、、、
でも、ignite だけで検索してもロックな感じのページばかり出てくる。辞書で一つ目に出てくる「発火」も違う気がする。発火したらdull redness どころではなさそうだから。バーナーも使うし、「加熱する」?やはり複数のワードを組み合わせないと。
ignite +
chemistry, experiment, heavy metals(やっぱりヘビメタのバンドが出て来た), burner....
なかなか思うような結果が出ずにこの作業をひたすら続ける。もうだめかも、と諦めかけた。
救世主ワード降臨
ふと、このフレーズの前に出てきた単語crucible (るつぼ)を入れてみようと。
そして、加熱ということでheatingも。
Crucible heating
そしたら、crucible に何かを入れてバーナーで加熱する画像や動画が!!これじゃない?で、一気にテンション上がる。そうか、ignite の目的語はcrucible 、るつぼだったのね。てか、この種の文書では目的語書かないことも普通なのね。文脈から判断かぁ。見落としてました。
次に、日本語でも、
「るつぼ 加熱 1時間 赤」で検索
そしたら、色の表現「暗赤色」を発見!
https://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/kou_nougyou/jikken/SubShokuhin/08/sousa.html
このページを作ってくれた方にPC前から感謝!
次に、「るつぼ 暗赤色」で各種分析・試験法がずらーっと。ビンゴ!
ということで、ignite to dull redness の訳としては、
[るつぼの底が暗赤色の状態になるように保ちながら、(中略)加熱する]
に決定。もちろんこれは、限られた時間と能力で出した私なりの結論で、訳の正確性を保証するわけではないので、ご了承を。
振り返り
それにしても、いくつになっても知らないことだらけ。るつぼって、「人種のるつぼ」という表現で聞いたくらいで、実物見ることなく今まで生きてきたので。。。画像検索のある時代でよかった。
こんな時に頼れる理系社員さんがみんな会議やら出張やらでいないという、社内翻訳の利点が活かせない状況だったけど、おかげで少し鍛えられた。
これを気に、まずは高校レベルの化学の教科書から勉強しよう。自分が高校生の時、選択科目に何を選ぶかで真っ先に外した教科と向き合うとは、なんとも不思議。
でも今は、知らない事を知っていく過程に喜びがある。それによって、少しでも人の役に立ちたいから。
亀のスピードでも、じりじり進んでいくぞ!
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