TRUNKだからできるブランディングとはなんぞや!?
経営者のお客さまから必要とされない今の自分は「社会のみそっかす」なんだと気づいてしまった私。
そこからもがき苦しんで、「ブランディングができれば、デザインで企業の経営に関わり、経営の役に立つことができるかもしれない」と、ようやく突破口が見えてきました。
しかし改めて、TRUNKだからこそ提供できるブランディングとはなんなのか。どんなふうにすれば、経営の役に立てるのだろうか。
いえ、理屈はわかっているんです。
ブランディングとは「企業が持ってもらいたいイメージと、お客さまが思い浮かべるイメージをイコールにすること」。
なんですが…実際にやってみると、ブランディングができたという確信が持てないのです。でも、千里の道もまずは一歩から。
悩みながらも、今の私達にできることから取り組むことにしました。ちょうどご依頼をいただいた会社案内の制作で、依頼されていないのに「ブランドコンセプト」を軸にした提案をしてみたのです。
「ブランドコンセプト」とはブランディングの核となる、「ブランドの価値を端的に言語化したもの」です。いわば、ブランドデザインの根本です。
お客さまは、私たちの「ブランドコンセプト」をとても面白がってくださいました。これをもとに作成した会社案内は、その会社らしい良いものになったと思います。
特にデザインチームのみなさんには感じるところがあったようで、ご提案したコンセプトをほかの媒体でも活用していただくなど、全体に広がりそうな様子もありました。
ですが残念ながら、そのまま企業ブランディングとして採用されることはありませんでした。なぜなのか?
考えてみたら当たり前です。お客さまのご依頼は「会社案内の制作」だったのですから。私たちが提案したブランドコンセプトは、お客さまにとってはあくまで、「会社案内の提案」の一部にすぎなかったのです。
お客さまにはご満足いただけたけれど、ブランディングができたとはいいがたい……。
そもそも、ブランディングとして受注していないのですから当然です。
でも、方向性は悪くない感じはしたし、進むべき方向は見えてきました。けれどまだ、なにかが足りない気がする。
「100%経営の役に立った」と自信を持って言えない理由ってなんなんだ!?
ワークショップ…これかも!
悩める私にあるヒントが訪れたのは、それから数週間後です。きっかけはある企業のコンテンツ作りの手法を知ったことでした。それはワークショップを通じて、企業の成り立ちや価値、強みを言語化するというものです。
お客さま参加のワークショップか…。たしかに私たちは、お客さまのことをほんの一部分しか知らない。だから、よく知らない人に突然ブランドコンセプトを提示されても、しっくりこないのは当然だ。
もっといろんな角度から、話を聞いて理解を深めたほうがいいかもしれない。それに、デザインワーク以外のステップが入ることでお客さまにとっても、自社の価値を振り返る、いい機会にもなる。それって経営者にとっても嬉しいのでは!?
もしかして、アリなんじゃないの?ワークショップ!!!
でも、ワークショップなんてやったことがない!ホワイトボードに付箋をいろいろ貼って、情報を整理したりとか…全くできる気がしない。
どうしよう???
いいアイデアとは思いつつも決心がつかずに逡巡する私。こんなときは所員に相談です。
「ワークショップってどう思う?こんな感じでお客さまを集めてさ…」
「おお~!いいですね!」
「けどワークショップなんて、やったことないからできないかなあって」
「できますよ。笹目さん、お客さまの話を聞くのは、すでにやっているじゃないですか?いつもどおりにやれば大丈夫ですよ!」
え??? そうなの???
予想外の答えに拍子抜けしましたが、いつものヒアリングの延長でいいのなら、できそうな気がしてきました。
同じころ、長年お付き合いのある葵建設工業の岡本さんから、オフィシャルサイトのリニューアルのご相談をいただきました。そのなかで話題に上ったワークショップに、さっそく興味を示してくださったのです。
「笹目さん、ただ見た目がいいものではなく、理念を浸透させるものにしたいんですよ。特に社内に理念を浸透させたい。そのワークショップをすれば社内の対話のきっかけになりますよね。ぜひやってみてください!」
こうしてはじめて「ワークショップ」を行う機会をいただいたのです。本当にありがたかったです。「やはり、このようなニーズを持っている方がいるんだ」と手応えを得ましたし、お客様と、さらに深くつながることができた気がしました。
「どうありたいか?」をただ聞く
いよいよ、初めてのワークショップ。そして初めてのファシリテーションです。ちゃんと話してくれるだろうか。うまくファシリテーションできるだろうか?
私の心配は、杞憂に終わりました。(付箋は使いませんでした)
自分たちの会社には、どんな価値があるか。
自分たちの仕事には、どんな意味があるのか。
葵建設工業のみなさんは、一人ひとりご自分の言葉で話してくれました。対話をすることで共通点が見つかり、参加者が一体感を感じられる時間になりました。
見えてきたのは、彼らが「建築を大好きな人たち」だということ。大好きな建築を現実のものとするために、先の先まで読んで、細部まで緻密に計画を練る。それが葵建設工業の人々でした。
私たちの仕事は、それを表現することだと思いました。だから、彼らと施工した建物をともに主人公にしたメインビジュアルを作りました。ワークショップがなければ、このビジュアルには至らなかったと思います。完成した葵建設工業さんのオフィシャルサイトをぜひ見てみてください。
AOIさんWEBサイト
ワークショップをやってみて、気づいたことがあります。彼らはどうありたいんだろう? お客さまの声を一生懸命聞こうとしているとき、私は自然と「デザインすること」から離れていました。すると、お客さまの声がよく聞こえるようになったのです。
そうか。いったんデザインから離れることが必要だったんだ。TRUNKのデザインは、作ることを脇に置いて、お客さまの声を「聞く」ことから始めよう。
これが「デザインを作るだけ」の会社から、抜け出せた瞬間でした。
やっと、経営者のお客さまから必要とされるような、トランク流のブランディングの形が見えてきたのです。
編集協力/コルクラボギルド(文・笹間聖子、編集・頼母木俊輔、イラスト・いずいず)