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トヨタのサスペンションの除電特許 その2

静電気の帯電でオイルの粘度が上がる

特許解説シリーズでは、ほとんどの人が知らない、静電気で動きが悪くなる原因を中学生でも解るように書いています。

トヨタのサスペンションの除電の特許は2回目なので、是非”その1”から読んで下さい。それには冒頭に「車両は導電性が低いタイヤによって大地(路面)から実質的に絶縁された状態にある」と書いてあります。
過去記事で勘違いされている方が多い、帯電の理屈に付いて書いています。

それでは、太文字がトヨタ自動車の特許文献をコピー&ペーストしたもの。その下に解説文を書きます。

なお、上記特許文献1に記載されているような従来の静電気除去装置は、設置場所の制約を受けるため、ショックアブソーバ内のオイルに帯電する電荷を効果的に低減することができる位置に従来の静電気除去装置を設置することができない。そのため、従来の静電気除去装置によっては、電荷の帯電に起因してオイルの粘性が高くなって減衰力が過剰になることを効果的に防止することができない。
上記特許文献1とは他社の放電プラズマ発生装置の事。プラズマを発生する事で放電(除電)させる特許。少なくともサスペンションに関しては、トヨタが「除電したらメリットがあるのではないか?」と考えた時には、自社のアイデアではなく他社の特許を調べて「上記特許文献1」を見つけて参考にした訳です。
ところが、外部電源が必要で大掛かりな装置では、車には向きません。大きく、重く、電圧を昇圧すれば更に重量とコストが増すからです。
それで、従来の装置では静電気の帯電によるサスペンション内のオイルの粘性が高くなる(粘度が上がる)事による、減衰力が過剰になる(動きが悪くなる)事を効果的に防止する事が出来ないとの結論に至ったのです。
マジ軽ナットの特許は、最初から自己的に放電する素材(元素)しか考えていません。この技術を使うと小さくても効率良く除電出来ます。
そればかりではなく、部品の多くはネジ・ナットで固定されていますから、付け足すか交換すれば殆どの場合取り付けられるのです。
ここが過去に無い発明なので、特許を取得出来ました。
写真のようにノーマルのサスペンションの突き出ているネジ部に付け足すだけです。サスペンション自体を交換する事に比べたらとても簡単なチューニングです。

ストラットの場合はこのように取り付けます

オリジナルのリアショックのナットに足す形で、マジ軽ナットが取り付ける場合もあります。

既存のボルト・ナットに付け足すか交換するだけ

「除電したら、物の動きが良くなるのでは?」という気づきから始まり、一番最初の試作を今でも車やオートバイに付いていますから、その変遷も全て知っています。
例え特許を取得しても、実際に使えないと取っただけになってしまいます。大メーカーは技術を他社に先行されないよう、防御的に特許を取り合っている訳ですが、小さな事業所はそのような事は出来ません。
でも、その事がかえって功を奏し、小さくても効率良く除電するアイデアに繋がったのです。

本発明は、従来認識されていない上記現象及びその原因に着目してなされたものである。そして、本発明の主要な課題は、ショックアブソーバ内のオイルに電荷が過剰に帯電することを防止し、これにより電荷の帯電に起因してオイルの粘性が高くなって減衰力が過剰になることを防止することである。特許の大まかな説明文。上記の現象と原因に着目し、ショックアブソーバーのオイルの帯電を防止すれば、オイルの粘性が高くなる事での減衰力が過剰になる事を防止出来る。

車体などに電荷が帯電するとショックアブソーバ内のオイルのような作動液体に電荷が帯電する理由及び作動液体に電荷が帯電すると作動液体の粘性が高くなる原因は必ずしも明確ではないが、主な理由及び原因は以下の通りであると考えられる。ショックアブソーバはピストンのロッド部及びシリンダにてそれぞれ車両のばね上部材及びばね下部材の一方及び他方に連結されているため、車体などに電荷が帯電すると、電荷がばね上部材及びばね下部材を経てピストン及びシリンダへ移動する。ピストン及びシリンダに帯電する電荷の量が多くなると、それらの電荷の一部がショックアブソーバ内の作動液体へ移動し、その結果作動液体に電荷が帯電する。作動液体に電荷が帯電すると、作動液体の分子の自由度を低下させ、このことが作動液体の粘性を高くすると推定される。

静電気が帯電するとショックアブソーバー内のオイルのような作動液体の粘性が高くなる原因は以下の通りであると考えられる。ポイントは、「オイルのような作動液体」という表記。つまり、オイルに限定してない事を意味しています、液体ですから。
さすがトヨタで、帯電でオイルの粘性が上がるのなら、他の液体も上がるのでは?と考えたのでしょう。だから、特許の範囲をオイルに限定せずに幅を持たせた。
特許を取るにはその範囲をなるべく広くしたい、他者に付け入る隙を与えたくないので、表現が回りくどく分かりにくくなります。それを霞が関文書ならぬ「特許文書」と呼んでいますが、まさにそれだと思います。

作動液体と言えば、クーラントも作動液体の範疇でしょう。液体を使って機械の作動に関与しています。クーラントはグリコール系が30%以上含まれており、実はグリコール系は静電気が多く帯電する物質で、流動帯電で流れが悪くなっているクーラントをウォーターポンプで強制循環させているので、更に帯電して流れが悪くなる=エンジンのパワーロスが大きい、という悪循環が起きています。
マジ軽ナットをお買い上げ頂いた方には、水冷エンジンのラジエターホースを除電して、無駄に使われていたエンジンパワーが使えるようになり、相乗効果でより少ないアクセル開度で走る・登れる、マジ軽バンドとの併用をお勧めしています。
マジ軽ナット+ラジエターホース用マジ軽バンドを取り付けると、例えば立体駐車場の急坂でもサイドブレーキを使わず、ブレーキからアクセルに踏み替えるだけで「グン」と登ってくれます。逆を言えば、未除電ではその位パワーをロスしているのです。この意味が分かる人が何と少ない事か。
何でもそうですが、負荷が大きいほど部品の寿命が短くなります。
少ない力で動けばウォーターポンプ、タイミングベルト/チェーン等の寿命が延びる=交換までのインターバルが長くなり、コストが節約出来るのです。

特許文は回りくどい書き方になっていますが、要はサスペンションは車体に繋がっているので、車体⇒サスペンションのピストン・シリンダー⇒作動液体に静電気が流れて帯電すると、作動液体の自由度が低下(これを分かりやすく「分子レベルで動きが悪くなる」と書いています)し、粘性が高く(上がる)なる。
静電気が溜まり続けると何と1,000V以上にもなると書いてあります。
車から降りる際に「パッチッ」と痛みを感じる静電気は3,000V以上だそうですが、その1/3以上も帯電してしまう。それで何も影響しないという方が無理な考えではないでしょうか?
分かりやすく例えると、仮にサスペンションのオイルの番手が#10で設計していて、それに準じたオイル量とバランスで車を作っているのですが、実際には帯電により粘度が上がってしまい、例えばオイルが#15とか#20程度の粘度になってしまう。
そうなると当然動きが変わって(悪く)しまいます。これを適度に除電する事で元々の設計の粘度に近づけば、当然スムーズに動く=運動性能が上がり操縦安定性も高まる。
少し技術の知識があれば、理に適ったチューニングであるのが分かるでしょう。それが低コストだけではなく、サイズが合えば外して再利用出来るのです。

マジ軽ナットの特許権を侵害して、サスペンションに市販の座金を多数付けて「効果があった」と書いている人がいますが、全くの無知です。
まず、特許権の侵害は犯罪です。そのような犯罪者の投稿を見て「どちらも効果があるのか?」と質問が来ましたが、考えるまでもないでしょう。
「トヨタのタイヤの除電特許 」でトヨタの特許文献のグラフを引用して解説しましたが、このグラフの通り、もし市販の座金で除電が出来ている(出来る訳ありませんが)として、多数付ければ逆に動きが悪くなるので、「効果があった」となる事はありません。

静電気を除電し過ぎると、効果が落ちて行きます

その人は少しは除電の知識はありますが、浅い知識だけで除電の理論を知らないから「たくさん付ければ、効果もうなぎ登り」と考えたのでしょう。
除電し過ぎは逆効果になるという事を知らないからこそ、このような事をするのです。
除電研究の途中でこれを試験的に試しています。サスペンションに放電素子(傘)をいくつも付けて走ると、グラフのように放電し過ぎて動きが良くなるどころか、ガチガチで動かなくなってしまうのです。
除電が面白くなると「静電気を全て除電したい」と言うお客さんがいらっしゃいますが、「除電はほどほどで良いんですよ」とセーブしています。
SNS等を見て効果がなくても真似する事自体が違法ですが、そのような人だからこそプラシーボ効果なのに、「効果があった」と評価をしてしまいます。

何度も書いていますが、除電するには理論と材質と形状を上手く融合しないと効果はありません。それだけではだめで、私は遊びでやっているのではないので、販売するにはコストも考えなくてはいけません。総合的に効果とコストのバランスを保って、初めて多くの方が「買ってみようか」と思うのです。
除電させるのは、例えるなら1円玉を縦に3~4枚重ねるような難しい技術。少し手を抜くと途端に効果が無くなってしまいます。だから細かいところまで神経を使って製作しています。
それなのに、理論も知らず材質も違う、形状も似て非なるもので除電出来ると思う方がおかしいのではないでしょうか、正しく素人考えです。

乗り物も常に帯電量が変化している状態ではありませんから、上のグラフの中の頂点、「最高値」を目指すのではなく、最適地近辺を目指す。
これが何度も書いている「ほどほどの除電でいいんです」という意味なのですが、特に自作で除電チューニングをされている方で、これが分かっている人は殆どいません。

タイヤを除電すると、しっとりとしなやかなフィーリングになり、振動もより吸収するようになります。
路面の凹凸が多いサーキットや荒れた路面の一般道でもはっきりと違いが分かります。
駆動を路面に伝えるのはタイヤしかありません。いくらエンジンのパワーを上げても、タイヤが本来の性能を発揮出来なければいい走りは出来ません。まずはタイヤからお試し下さい。タイヤで確認して、更なる除電を進めたい方はご連絡下さい。


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