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トレタテ日詩

33
或る日の感情、産地直送。
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カセットテープ・シティ【詩’n’鮮】33

カセットテープ・シティ【詩’n’鮮】33

頭にカセットを差し込んで
再生しながら生きている

この街の住人特有の生き方だ

喜怒哀楽の感情は
全部カセットに入ってる

もちろん昔の思い出も
全部カセットに入ってる

でも、
新しいカセットが
供給不足で入って来ないから
みんな、昔の感情や
思い出の入ったカセットを
進んで差し込み生きている

今なんて
今しかないのに、
過去にすがり
思い出の中に生きている

未来のことなど何ひとつ

壊れ

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ひとりサスペンス劇場【詩’n’鮮】32

ひとりサスペンス劇場【詩’n’鮮】32

ぼくの目線はぴったりちょうど

水平線と同じ高さだ

空か海かわからぬ空と

海か空かわからぬ海を

かろうじて

蜃気楼が隔ててる

下は見ないようにしてる

少しずつ足を踏み出してみるが

ちっとも進んだ気がしない

むしろ後ろに下がったほどだ

足元には

柔らかい草が生えてて

蟻がスニーカーを登ってる

申し訳程度に生えた花の側では

小さな蛾が蠢いてる

なんだかだんだん虚しくなって

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猫の手 【詩'n'鮮】31

猫の手 【詩'n'鮮】31

動き出すために

猫の手借りたい

動き出さなきゃ

猫の手なんか

借りられない

自分で動いて

猫の手で

背中叩いてもらえ

天狗の山 【詩’n’鮮】30

天狗の山 【詩’n’鮮】30

天狗の棲んでる山の石段を

こころを無にして駆け上がる

同じ距離でも

平坦な道より

断然こちらの方がしんどい

木々は生きてて

踏んだら痛いと

叫びそうだったから

険しい斜面も踏まずに駆けた

何か守ってるようだったし

頑なな決意も垣間見れた

彼らに足の概念はなく

生えているのは全部手だ

木々は全部が血管で

手から養分を吸い取ってる

ここら辺に生えた植物は

きっとすべて天

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コミュニティ 【詩'n'鮮】29

コミュニティ 【詩'n'鮮】29

どんな場所でも

大なり小なり

コミュニティ

はじめて行く場所は

誰のことも知らない

誰も

ぼくのことを知らない

あいさつされて

返そうとしたけど

ぼくにしたんじゃなくて

背後の人だった

あぁ、ここの歴史なんて

全部リセットされればいいのに

献立 【詩’n’鮮】28

献立 【詩’n’鮮】28

自炊は芸術だ

冷蔵庫にあるもので

何ができるか考える

昨日買ってきたものを

今日のアイデアと組み合わせる

西洋の魔女も

ワクワクしながら

鍋を煮詰めたに違いない

ある意味では

錬金術とも言えるだろう

金は生み出さないが

金を生み出すための

力の源に変わる

毎日同じものでもいいが

それだとちと楽しみに欠ける

献立帳など作らぬが

食べたいものが献立だ

たとえ失敗したと

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ぼくにできること 【詩’n’鮮】27

ぼくにできること 【詩’n’鮮】27

ぼくにできることはなんだろう

このてのひらが

すくえるものはなんだろう

この両腕が

抱きしめられるものはなんだろう

この両脚で

向かえる場所はどこだろう

この両目が

見据える未来はいつだろう

この両耳に

聞こえた音はなんだろう

この鼻を刺す

異様なにおいはなんだろう

この声が
届くのはいつになるだろう

頭蓋のなかのハードディスク

火花を散らしてフル回転

焼け切れる前

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どいつもこいつも 【詩’n’鮮】26

どいつもこいつも 【詩’n’鮮】26

自分の持ってる物差しでしか

人間は物事を測れない

社会の首輪をはめられて

飼い慣らされた者たちは

ぼくの考えを知る由もないだろう

どこかで聞いたような

似通った文言ばかりの

呪文を唱えていやがる

誰も体験したことのない

奇想天外な生き方で

ぼくはこのトリカゴの星を

縦横無尽に飛んでやるのさ

どいつもこいつも

死んだ魚の目をしやがって

異世界のスーパーマーケット 【詩’n’鮮】25

異世界のスーパーマーケット 【詩’n’鮮】25

電車に乗って目を閉じた

起きたら知らない駅に居た

いつしかお腹も空いていた

知らない街の

知らない駅には

知らないお店が隣接してた

入ってみると

どうやらスーパーマーケット

値札は読めるが

知らない数字が書いていた

商品棚にも

未知の食べ物が並んでて

美味しそうかもわからなかった

壁一面の未知の棚

常温保存されている

カプセルがずらり並んでる

うむ、これは

どうや

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ちがってもいい 【詩’n’鮮】24

ちがってもいい 【詩’n’鮮】24

きみが思ったのと

ちがってもいい

描いた未来と

ちがってもいい

結果がどうあれ

ちがってもいい

他人の人生と

ちがってもいい

出した答えが

ちがってもいい

あってるかなんて

生きてるうちにゃ

わかんないさ

祈り 【詩'n'鮮】23

祈り 【詩'n'鮮】23

生きていることは

当たり前じゃない

当たり前じゃないけど

当たり前のように

生きていたい

お願いだから

生きていたい人を

当たり前に

生かしてあげて

働き方革命 【詩’n’鮮】22

働き方革命 【詩’n’鮮】22

みんな汗水流して働くなか

ぼくは優雅に散歩する

せっせと働く人を横目に

なけなしの金で買った

パンを食べる

けれども

ちっともひもじくない

だってこれが

ぼくの起こした革命だから

休みたけりゃたくさん休んで

働きたくなったら働くのだ

ぼくの働き方は

ぼくが決める

ぼくの会社の社員はぼくで

社員のぼくはぼくを養う

調剤薬局のショウウィンドウから

覗いた薬剤師の顔は

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永遠のなつやすみ 【詩’n’鮮】21

永遠のなつやすみ 【詩’n’鮮】21

なつやすみなんて

もう来ないと思ってた

オトナになって

こどものこころを忘れてしまった

オトナになっても

こどものこころが欲しかった

けれどいつでも

こどものきみは

こころのすみっこで

待っている

体育座りで

遊んでくれるの

待っている

社会に疲れてくたびれたきみを

笑いながら

待っている

気づいてあげて

こどものきみが

機嫌を損ねるその前に

遊んであげて

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ミタイミライ 【詩’n’鮮】20

ミタイミライ 【詩’n’鮮】20

目線が変わると
視線が変わる

今まで意識しなかったもの
たちまちよおく見えてくる

当たり前に見えてたものも
明日も見えるかわからない

今までずっとあるものも
これからもあるかわからない

明日がくると信じているけど
明日がくるとも限らない

それでもぼくらは
明日を見るため

一生懸命
生きるんだ