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Facebook Japan代表と語る、Instagramが拡げるマーケティングの可能性【第9回 池田紀行のマーケ飯】

代表の池田(@ikedanoriyuki)が、さまざまなフィールドの第一線で活躍されている方とご飯を食べながらカジュアルに議論する企画「マーケ飯」。

第9回のゲストは、Facebook Japanの代表取締役を務める味澤将宏(@masajis)さん。今回のテーマは、「Instagramが拡げるマーケティングの可能性」です。

世界的なソーシャルメディア「Facebook(フェイスブック)」や「Instagram(インスタグラム)」を展開するFacebook社 日本法人代表の味澤さんとともに、企業とソーシャルメディアの理想の関係性やマーケティングにおけるInstagramのポテンシャルについて議論しました。

Facebook Japan株式会社 代表取締役 味澤 将宏
2000年オグルヴィ・アンド・メイザージャパン入社。2008年から日本マイクロソフトにてPC及びモバイルディスプレイ広告ビジネスを統括。2012 年4月、Twitter Japanに入社、2016年より上級執行役員 広告事業担当本部長および日本・東アジア地域事業開発担当本部長を兼任。2020年1月、Facebook Japan株式会社代表取締役就任。
株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長 池田 紀行
1973年 横浜出身。ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手クライアントのソーシャルメディアマーケティングや熱狂ブランド戦略を支援する。日本マーケティング協会マーケティングマスターコース、宣伝会議講師。『キズナのマーケティング』『ソーシャルインフルエンス』(アスキー新書)、『ソーシャルメディアマーケター美咲』(翔泳社)、『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)など著書・共著書多数。鎌倉稲村ヶ崎在住。

※新型ウイルス感染症防止対策に配慮のうえ収録を行い、撮影時のみマスクを外しています。

Instagramが起こしたマーケティングの劇的な変化

池田:今日はFacebook Japanの代表取締役を務め、ソーシャルメディアのプラットフォームビジネスに関して豊富な知見を持つ味澤さんをお迎えできて嬉しく思います。よろしくお願いいたします!

味澤:よろしくお願いいたします!

池田:三度の飯よりマーケティングが好きな僕としては、プラットフォーマーを率いる味澤さんのぶっちゃけトークを心待ちにしてました(笑)。さっそくなんですが、いまFacebook社ではどんな未来を目指して事業を推進しているのか、お伺いできますか?

味澤:Facebook社は「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」というミッションを掲げていて、全てのサービスや製品がこのミッションに基づいて作られています。

Facebookはオンラインで人と人をつなげ、有意義なコミュニティ構築をサポートするサービス、Instagramは人々の興味関心、そして人とブランドとつながるサービス、企業向けコミュニケーションプラットフォームであるWorkplaceは企業と社員をつなげるサービス、VRデバイスであるOculus(オキュラス)はバーチャル空間で人と人をつなげる製品。

今後、日本では興味関心で人やブランドとつながるInstagramの成長を加速させていきたいと考えています。社内においても、日本はインターナショナルマーケットで最も注目されている国なんですよ。

池田:そうなんですか⁉ Instagramの利用者数は他国と比べてだいぶ少ないですよね、それなのにまさか日本市場がそんなに注目されているとは……!

味澤:利用者数で比較すると、人口自体が日本より多い国は多くありますからね。ただ、日本は利用者数が右肩上がりに伸びていることに加え、Instagramの使われ方がとてもユニークかつ先進的であることから本社も非常に注目しています。

たとえば、日本のInstagram利用者は、他国の平均と比べてハッシュタグ検索数は5倍、ショッピングタグがついている投稿から商品詳細を見る利用者の割合は3倍と非常に大きく、エンゲージメントがかなり高いんです。ですから、日本でさまざまな新機能を開発・テストして、他国に展開していこうとしています。

池田:なるほど、日本はInstagram活用のポテンシャルがとても高いんですね。個人的に、Instagramはエンゲージメントの対象が特殊で面白いと思っています。Facebookのように◯◯さんが発信している(Who:ソーシャルグラフ)から「いいね!」が集まることもあれば、Twitterのようにトレンドやいま起こっていること(What:インタレストグラフ)に対して「いいね!」が集まることもある。Instagramでは、WhoとWhatのどちらの要素でもエンゲージメントを集めることができますよね。

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味澤:先ほどInstagramはインタレストグラフ、すなわち興味関心でつながると言いましたが、Instagramは利用者自身の「興味」に基づいてコンテンツが表示されます。検索やフィードに上がる投稿に、強い「興味」がある状態でブランドを「認知」するため、フォローや購入といった行動が起こしやすくなります。

そうした使われ方を見ていると、Instagramでは「認知」を入口とした購買行動プロセス(マーケティングファネル)の構造が崩れているのではないかと考えているんです。

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池田:確かにそうですね。

味澤:「興味」が強い状態でモノや場所を「認知」するから、アカウントをフォローしたり、購入したりすることにもつながりやすい。だから、シームレスに商品の「購入」に進めるショッピングタグ(※1)を導入したんです。利用者自身の「興味」からスタートしてブランドに「出会い(認知)」、そのまま「購入」までできるチャネルは、これまでなかったのではないでしょうか。

※1 Instagramの投稿に商品のタグをつけることで、直接商品ページにアクセスできる。

それに「認知」から「購入」までのスピードが早いだけでなく、利用者と常に接するAlways Onのコミュニケーションを通じてブランドへのロイヤルティが形成されやすい。ブランドにとって、Instagramは良い顧客とつながれるマーケティング活動のプラットフォームとして、価値がすごく高いのではないかと思います。

池田:なるほど。利用者の「購入」までの意思決定が早いということは、ブランドが商品に関する投稿をした場合、じわじわと売れるのではなく急に売れてしまうといったこともあるのでしょうか?

味澤:そうですね。動画をリアルタイムで配信できるライブ機能を使う場合は、配信前に在庫をしっかり確保しないといけないブランドもあると聞きます。商品の在庫にまで影響を与えるプラットフォームに成長しているというのは、とても嬉しいですね。

公式アカウントが目指すべきオウンドメディア化とは?

池田:話は変わりますが、この数年ソーシャルメディアではUGC(※2)を生み出してクチコミを広げるサイクルを作ることが売上につながるとされていますよね。その一方で、中長期的に生活者とコミュニケーションを続けていくことも同じくらい重要です。

フリークエンシー(ブランドに接した回数)を増やし、ザイオンス効果(※3)で好意度や購入・来店意向を高める取り組みも忘れてはいけません。だから、アカウントにおける戦略をちゃんと立てなければいけないと思うんですよ。

※2 User Generated Contentの略で、ユーザーが生成したコンテンツのこと。ソーシャルメディアやクチコミサイトへの投稿などが含まれる。
※3 対象に何度も繰り返し接触することで、無意識に接触しているモノの評価が高まること。

味澤:おっしゃる通り、Instagramアカウント上でのコミュニケーションの重要性は非常に高まっていると感じています。

池田:Instagramにはライブやショッピング以外にも多くの機能がありますが、ブランドがInstagramアカウントを通じて利用者とより効果的なコミュニケーションをするにはどのような運用がベストなのでしょうか?

味澤先進的なブランドは、Instagramアカウントがオウンドメディア化しています。利用者とのコミュニケーションにおけるさまざまな“役割”をInstagramアカウントに持たせているんです。企業のドメインで作られたオウンドメディアに毎日アクセスする顧客はなかなかいませんが、Instagramは日常的に開くアプリなので利用者が毎日ブランドの情報に触れてくれるんですよ。そして実は、Instagram利用者の90%がブランドのアカウントをフォローしています。

とくに、ブランドストーリーを自らのアカウントで前面に打ち出すことに加えてエンゲージメントを多面的に築ける点が、いままでのマーケティングを行う上で活用するプラットフォームにはなかったことだと思います。

池田:「多面的」とはどういうことでしょうか?

味澤:ブランドのニュースをInstagramストーリーズやライブで配信したり、フィード投稿を商品棚やカタログのように見せたりと、Instagramの機能(多面)を使い分けているということです。「興味」が入口となるのがInstagramなので、利用者は見つけたアカウントが自分の「興味」にマッチしていると感じればフォローをしてくれます。だから、しっかりと多面的にコミュニケーションを設計しておけば、Instagramのアプリを開いてくれる限りフォロワーはちゃんとブランドのアカウントを見てくれる(コミュニケーションをとり続けることができる)んですよね。

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池田:確かにInstagramを開くと、自分が強い興味を持っているブランドのアカウントが気になって、思わず見てしまいます。でもそのInstagramアカウントで、広報が発信している情報(プレスリリースなど)をInstagram用に加工せずそのまま載せてしまうと、Instagramっぽくないコンテンツが並んでしまって熱量の高いフォロワーをがっかりさせてしまう場合もありますよね。そういう温度感の差はなんとかすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。

味澤:アカウントの運用に少し力を入れるだけで、そうしたギャップは解消できますよ。利用者の態度や行動にしっかり向き合い、ブランドの想いや世界観を含んだ発信をしていると、ブランドと利用者の間には強いエモーショナルボンディング(※4)が生まれるはずです。強いブランドほど、感情的な理由で商品が買われるようアカウント運用に力を入れているんですよね。

※4 ブランドと生活者の間に築かれた情緒的な絆。

池田:利用者とブランドの関与度がお互いに高いほど、エモーショナルでより良い結び付きを作り出せるということですね!

ただ、日本のInstagram利用者の使い方はとてもハイコンテクストということもあり、それに合わせたアカウントの運用も年々難しくなっている気がします。「#ヤマハが美しい」や「#飯テロ」のように、いつの間にかハッシュタグによるトライブ(※5)が生まれて共通言語化されることも珍しくありません。ときにはどんな投稿がされているのか予想もつかないハッシュタグもありますし(ただし、投稿されている写真は統一されている)。

そう考えると、特定のハッシュタグを使用し、無意識のうちにトライブ化していく利用者の真意を正確に読み解ける企業のソーシャルメディア運用担当者はまだまだ少ないと思います。

※5 共通の興味関心やライフスタイルを持った集団のことを指す。「同一の血統を持ち、族長が存在する部族」が語源。

味澤:そうですね。多くの企業はマス広告などの一方向なコミュニケーションに慣れてしまっているので、すぐにシフトするのは大変かもしれません。

池田:そういうときに利用者と目線を合わせて発信できる人は、どんな人なのでしょうか?

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味澤:一つは、ブランドに対してとにかく熱い想いを持っている人。Instagramはブランドとつながるための場所であり、そこでしっかりとコミュニケーションをしなければなりませんからね。

あるいは、社内のいろんな部署が持っている情報(新商品やニュースなど)や利用者の動き(独自のハッシュタグ形成やトライブ化など)をいち早く収集し、それに合わせて発信内容を考えなければいけないので、情報感度の高い方ですね。もちろん、発信内容に関わる情報がアカウント担当者にきちんと届く社内体制も構築すべきです。

池田:熱い想いを持っているかどうかは発信者としてかなり重要ですよね。たとえばD2Cのアカウントや中小企業のアカウントはほぼ毎日情報を発信していて、発信するコンテンツにもしっかりとブランドのストーリーが乗っているから担当者の想いがひしひしと伝わってきやすい。

ちなみに、アメリカ本国の企業はInstagramをどのように活用しているのでしょう。日本よりもアカウント運用に本腰を入れているイメージがありますが……。

味澤:日本よりも段違いに活用が進んでいますね。Instagramがブランドコミュニケーションのメインプラットフォームになっています。

ブランドのWebサイトは受け身ですが、Instagramはリアルタイムで利用者とコミュニケーションができたり、そのまま購買までつなげたりすることが可能です。場合によっては、インフルエンサーを起用して効果的にメッセージを利用者へ届けることもできる。

それに、広告を含むさまざまなInstagram機能を活用して対話することで、情緒的な絆でブランドと人が直接つながり、コミュニティを形成することも可能です。受け身ではなく、能動的に働きかける攻めのアクションをできるのがInstagramの強みなんです。

とはいえ、私たちもInstagramの価値をブランドのマーケターの方々にうまく伝えきれていなかったように思います。なので、去年からInstagramのことを「好きと欲しいをつくるプラットフォーム」と明言するようにしました。「興味」を入口として、欲しい商品の購入までできる。そんなプラットフォームなんだよ、ということをもっと伝えていきたいですね。

オウンドメディア化の先にファーストパーティデータを活かす

池田:せっかくなので、ちょっと広告の話にも触れていいでしょうか。2020年に国内のデジタル広告予算が、2兆円強にまで伸びましたよね。しかもその2兆円のうち、ソーシャルメディアにかける広告予算が5,000億円を超えていると知った時は、ちょっと衝撃を受けました。これはInstagramのようにプラットフォームの有用性が少しずつ認知されてきたという背景もあると思います。

味澤:企業が広告予算をデジタル領域にシフトしていったのはまだまだ最近ですから、これから急激に伸びていくと思います。その中でも、やはりソーシャルメディアは注目を浴びていくでしょうね。

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池田:でも、Cookieの規制(※6)が進むと今後どんどんリターゲティング広告などが打てなくなります。デジタルにおいては広告の打ち手がかなり減っていきますよね。

※6 閲覧したページを横断的に追跡し、年齢や性別と紐づけてトラッキングするサードパーティCookieがプライバシー侵害にあたるとして、世界で規制が進んでいる。

味澤:直近だと、ゴールデンウィーク直前にリリースされたiOS14.5のアップデートが話題を呼びましたよね。アプリでのトラッキングが大きく規制されることになったので、リリース前から議論をしていた広告担当者の皆さんも改めてその重大さを実感し、これからどう広告を打っていくかを話しています。広告担当者は、こうした一連の規制に関して早く対策を考えないと、これからの広告に対応できなくなってしまう。

トラッキングができないということは、「◯◯というサイトを見に行ったから、この広告が刺さるはずだ!」という手法が使えなくなるということです。今後ブランドにおいては、ファーストパーティデータ(※7)の価値がどんどん上がっていきます。なので、プラットフォーム上に自分たちでデータを貯められるようにアカウントマネジメントをしていく必要があります。

※7 自社の顧客やウェブサイト訪問者、Instagramアカウントへの訪問者に関し収集した情報。

池田:これまで生活者は、ネット上の行動をストーキングされ広告を見せられてきました。生活者にとっては好みを押し付けられてしまう気持ち悪さがありましたよね。これからはInstagramでも、“Instagramの中で得た”利用者情報を用いて広告の精度を高めていくことが重要になっていきそうです。

味澤:そうですね。たとえば、Instagramのショップ機能では誰がどの商品に興味を持ってクリックしたのかが分かるコンバージョンデータが貯まっていくので、そうしたファーストパーティデータを活用して、Instagramで次の購買を促す広告づくりをする必要があります。

Instagramだけでなく自社のサイトからもファーストパーティデータは取得できるので、Instagramや自社サイトで得たデータを連携・照合して、利用者に刺さる広告を考えるのも重要です。自分たちで取得できるデータを自分たちで考察・分析できるようになることも、これからは大切になっていきます。

池田:なるほど。自分たちが取得できるデータであれば、法や倫理的な問題もほとんどクリアすることができる。プラットフォームのデータをつなぎ、生活者一人ひとりに対する広告メッセージを最適化していくことがスタンダードになっていくんですね。

味澤:とくにInstagramはブランドと利用者の関係が他のプラットフォームよりも強いので、その強い関係性のなかで商品を買ってもらえる=ファーストパーティデータの有用性も高いともいえます。なので、今後は利用者の興味軸にしっかりと刺さる広告の最適化を実現したブランドが強くなっていきます。

Instagramはこれからもどんどん機能をアップデートしていくので、機能ごとに取得できるデータを分析し、目的に合わせた広告設計ができるコンサルティングパートナーの存在が不可欠となっていきますね。

池田:トライバルも変化しつづける環境に適応しながら、クライアントに最適なソリューションの提案ができるように頑張ります! 本日はありがとうございました。

味澤:とても楽しかったです、ありがとうございました!

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Instagramが拡げるマーケティングの可能性」というテーマで展開された今回の議論。広告の環境変化によるデータの取得・活用は我々の業界にとって対処せざるを得ない課題です。今回は、その課題に対してプラットフォーム側からアイデアをいただくことができました。この対談が、読者のみなさまがこれからのマーケティングについて考える一助となれば幸いです。

「マーケ飯」では、今後もさまざまなフィールドの第一線で活躍されている方と池田のトークを発信していきますので、どうぞご期待ください!

過去の「マーケ飯」の記事は、以下のマガジンよりご覧いただけます。

▼2人のアカウントはこちら
味澤 将宏 氏
Instagram https://www.instagram.com/masaajisawa/
Twitter @masajis
note https://note.com/masaajisawa

池田 紀行
Instagram https://www.instagram.com/ikedanoriyuki/
Twitter @ikedanoriyuki
note https://note.com/ikedanoriyuki

今回の収録は、池田宅にある半外のカフェスペースにて行いました。お料理は、七里ガ浜にあるお寿司のお店「五條」さんの出前を頼みました。丁寧に盛りつけられ、お店で食べているように思うほど素晴らしいお料理でした。

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五條
神奈川県 鎌倉市 七里ガ浜東 3-1-36
https://tabelog.com/kanagawa/A1404/A140402/14007752/

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