見出し画像

絵本日記DAY8 パクチーパクパク

一口噛むとじゅわっと旨味がひろがる。独特、としか表現できないことが悔しいくらいの、ほのかな苦みと甘み。熱を加えずに、オリーブオイルとガーリックソルトをかけてたべるのが一番おいしい。根っこまでついていたら最高。

私の愛してやまないパクチーの話です。

はっきりと好き嫌いが分かれ、苦手な人からは「なんであんなものが好きなのかわからない」と非難をあびることもしばしば。中毒性があってやみつきになり、毎日ではないが時々無性に欲する味。今日は、そんな「パクチー的要素」をもつ絵本をストックします。

この絵本はスウェーデン生まれのヨックム・ノードストリュームという美術作家が描いた絵本とのこと。私の信頼する、図書館の司書の方がこのシリーズを紹介してくれました。

セーラーが主人公の男の人、ペッカはそのペットの犬(ただし二足歩行もしますし、見た目が犬なだけで人間と同じ生活をしています)。

コラージュの技法がメインですが、街を歩く人たちの顔が全部バラバラ、町へセーターを買いにきたついでにタトゥーを入れよう、という展開も意味不明で、かなりクセ強めな絵本。

これを見てすぐに思い浮かんだのは、子どものころカートゥーンネットワークで観た『アンジェラアナコンダ』という女の子が主人公のアニメーション。

アンジェラの脳内には「イマジナリーフレンド」が住んでいて、意地悪なクラスメイトのナネットを妄想の中でボコボコにして、一人でにやにやしていたりする。アンジェラのお兄ちゃんは双子で、「うぅっ」と言い合いながらいつも二人でぶつかりあったりしているのも気味が悪い。一度見たら最期、「♪あたしアンジェラアナコンダ~」という主題歌(サザエさんの花沢さんのような声)が頭から離れなくなるのだった。このアニメのクレイジーさを、今のところ身内である弟としか分かり合えていないのが悲しい。

話がそれてしまいました。

そもそも、この「セーラーとペッカ」シリーズに登場する北欧という国の景色やピッティパンナなどという料理に馴染みがないからかもしれないし、お洒落な現代アートに慣れていないせいかもしれないが、なんというか、二人(正確には一人と一匹)の行動やおしゃべりが予測不可能すぎるのだ。

ぐりとぐらやはじめてのおつかいなど、日本ではおなじみの絵本のように、安心できる要素がひとつもない絵本。

ゆえに、何度も絵本を開いて北欧へ出かけたくなるし、あぁ今度はどんなに予想を裏切ってくれるのだろうという気持ちになる。むしろこの二人に慣れてくると、激しすぎるジェットコースターで「あぁもうどうにでもしてくれ・・・」と抵抗をあきらめるように、もう身を預けるしかなくなる、という感じ。

5つのシリーズの題名はこうです。

1、セーラーとペッカ、町へいく

画像1

セーラー(男)は新しいセーターを買いに、ペッカ(犬)はちょうどいい、ぼくも散髪したかったんだ、と町へでかけていきます。車が壊れたり、ピエロのトランペットを拾ったり、ついでに、とタトゥーを入れたり。突っ込みどころ満載ですが、次へいきます。

2、いったいどうした?セーラーとペッカ

画像2

というか、いつもあなた達いったいどうした??という感じなのですが、セーラーの体調が悪くなって・・・というお話。近所に住むジャクソン婦人がだいかつやく。あぁ、この虹色の渦巻きとセーラーの謎のダンスを見ているだけで頭がヘンになっていきそう・・・

3、セーラーとペッカの日曜日  

画像3

教会へ行き、ビリヤード場で遊び、食事をする、という二人の日曜日。教会のステンドグラスや、道端の草花もコラージュで描かれていて、アート作品としても見ごたえあり。

4、セーラーとペッカの運だめし

画像4

あら、今回は話の筋が通ってるじゃない、なんてページをめくっていると、あっさり足元をすくわれます。

5、セーラーとペッカは似た者どうし  

画像5

テーマ自体は深いですが、はて、この話からどこが二人の共通点なのだろうか・・・と考えだしたらもうすでに迷宮入り、負けた気すらしています。詩が載っていたり、セーラーが船乗りだった頃の港(本物の写真)が載っていたり、ペッカは実在するのですよ、(本物の写真!!)と載っていたり・・・

もうお腹いっぱいです・・・

画でたのしむ、おしゃべりをたのしむ。あれこれと空想をめぐらせる。またセーラーとペッカに会いたくなる。これぞ絵本の真骨頂、北欧で人気なのも頷けます。

こういう「深夜放送的」絵本の愉しさを一度味わってしまったら、『絵本はこどもだけのもの』なんて、絶対言えなくなるはずだ。 


セーラーとペッカ シリーズ 作者/ヨックム・ノードストリューム 訳者/菱木晃子 発行所/偕成社


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?