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名プロデューサーな京都の友人

「なぁ、こんな感じの作ってくれへん?」

それはいつも唐突に。
京都の友人からオーダーの連絡が入る。

TRAVISのぬいぐるみは、主に抱っこ用のぬいぐるみかオーナメントタイプが多い。そして、どちらかと言えば洋風のものが多いなか、ちょっと毛並みの違う"和風な空気"の子達がいて、その殆どは、京都の友人のリクエストにより生み出されたものだ。

ぬいぐるみやオーナメントが何体か友人の元に旅立っているが、私の数少ない友人達は全員が秘密主義の人達で、京都の友人も例外ではなく、リクエストされて作った子達がどのように飾られているのかはまったく知らない。

ただ、京都の友人がオーナメントを作ってと頼んでくる時は必ず、「うちの笹にぶら下げる」と言うので、地面に生えているものか、切ったものなのかは知らないが、そのどちらかにぶら下げているのだろうと毎回推測している。

とは言え、洋風なオーナメントを和心満載な笹へぶら下げるのもなかなか粋なことだなぁと感じている。稲荷に所縁のある人だから、狐デザインが多いが、時たま鯨とかうさぎを頼んでくることもある。でも、その鯨やうさぎも話を聞いていると連想されているものが“和”のイメージのものだから、和柄の生地選びに度々奔走する。

『和物の吊るすものって、こっちの和雑貨屋で売ってるのは、動物の種類少ないねん。うちが金魚やカエル、招き猫みたいなのぶら下げてたらおかしいやろ(笑)』
「確かに〇〇ちゃん(京都の友人のこと)は金魚やカエルや招き猫のイメージじゃないわよね」
『せやから、こういうの欲しいなぁと思ったら、お、ええデザイナーおったわ、とeveに頼む』
「それほど優秀デザイナーではないけれど、頑張ります」
『うちに作るもんなんやから、それほど気張らんといて。デザインも自由でええ、納期も仕上がり次第でええ』

友人がそう言ってくれるのは、私が以前お客様からのオーダーでデザインや糸の色など細部まで指示を受け、イメージ通りのものを仕上げなくてはいけないプレッシャーで疲れてしまい、オーダーを受けなくなってしまった経緯を知っているからだ。

去年の夏。京都の友人が「七夕で笹にぶら下げるから稲荷の白い狐さん、1週間以内に作って送ってくれはる?」と珍しく納期込みで言ってきた。少し動揺したのは言うまでもないが、「デザインも何もかも、eveの自由にしてくれたらええから」と言われて、その言葉に甘えて仕上げたのが、《稲荷の狐さんオーナメント》だ。

『急がせて悪かったなぁ。とても可愛くて人目を引くし、もてなすのにとてもカッコがついたわ』

そんな感想と共に、数日後私の大好きな一保堂の宇治清水が送られてきた。

早速その宇治清水を飲みながら、不思議なことに思い当たる。
今まで何体もぬいぐるみやオーナメントを作ってきたが、お客様や友人知人からのオーダーを受ける度に瞼が痙攣して眼科に行くほどのプレッシャーを感じていた。なのに京都の友人からのオーダーは、製作するときからワクワク感に溢れていて何故かプレッシャーをまったく感じていないのだ。

京都の友人のオーダー品をminneへ展示していて、それをご覧になったお客様からリクエストされることもあるのだが、リクエストされた時は緊張しても製作する時には楽しんでいる。

「まさか、〇〇ちゃん、自分の依頼した作品を通じて私に何かのおまじないでもかけた?」

ミステリアスで美しいあの人は秘密主義だからきっと教えてはくれないだろう。でも、わかることは、関東と関西と遠く離れていてもいつも私達家族のことを強く想ってくれて、私の作品を遠くからプロデュースしているということだ。



お正月向きだったかも、と出品時期を後悔していたり。。。



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京都の友人「なぁ、eve。今度オーナメントでもぬいぐるみでもええから、ちょっと作ってくれへん? 」
私「何を?」
京都の友人「物凄いでっかいカラス」
私「カラス!?(絶対、無理やろ)」
京都の友人「足が三本ついてる八咫烏」
私「いいけど、ちょっと待って!」
京都の友人「納期は気にしぃへんと言ったやろ」
私「そういうことでなくて、カラスのぬいぐるみやオーナメントのイメージがまったくわかない」
京都の友人「大丈夫や。鳥好きの〇〇(イギリス人の友人)に聞けば、自ずと姿が見えてくる」
私「何それ」

と言う訳で、いつか八咫烏ができるかもです(笑)



この度はサポートして頂き、誠にありがとうございます。 皆様からの温かいサポートを胸に、心に残る作品の数々を生み出すことができたらと思っています。