見出し画像

バスク地方スペインからフランスへ、シャネルの転機の地ビアリッツ

19世紀からヨーロッパの上流階級、芸術家に愛されてきたフランス・バスクのビアリッツは、シャネルが初めてクチュールの店をオープンした土地というエピソードを持ち、サーフィンの街としても有名です。同じバスク地方でありながら、国境をまたぐスペイン・バスク地方の美食とアート、そして牧歌的側面とはまた違ったおもむきがあります。



スペインとフランスの国境を跨ぐバスク地方

バスク地方とは

ピレネー山脈のふもとに位置し、ビスケー湾に面し、フランスとスペインの両国にまたがっているバスク地方。現在のスペインのバスク自治州およびナバラ自治州、さらにフランス南西部のピレネー=アトランティック県が該当します。このシードル・ブログではスペイン・バスク地方のことを主に紹介していますが、今回はスペインから国境を越えた、フランス・バスク地方のひとつの街に焦点を当てていきます。

Biarritzーガブリエル・シャネルの転機となった地

フランス・バスク地方のビアリッツは、スペインからフランスに嫁いだウジェニー皇后が愛し、夫のナポレオン3世とともにしばしば滞在した場所として有名です。

ひときわ美しく海辺にたたずむオテル・デュ・パレの前身は、皇帝が妻のために建てた別荘のヴィラ・ウジェニーで、1892年にホテルとカジノに改装され、 長年にわたり、この有名なホテルは、ココ・シャネルやビクトリア女王などの有名人やヨーロッパの王族を迎えてきました。

そんな古くからヨーロッパ中の王侯貴族に愛されたビアリッツは第一次世界大戦中も彼らの避難先として選ばれました。

1914年に開戦し、それまでの戦争と比べ、類をみないほどの戦死者を出した第一次世界大戦。フランス・バスク地方のビアリッツはヨーロッパやロシアの王侯貴族、実業家、芸術家などの疎開先として上流階級の人々がこの地に集まりました。

いよいよ戦争が激化した1915年にガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)も恋人のイギリスの実業家アーサー<ボーイ>・カペル(Arthur Edward ‘Boy’ Capel)とフランス・バスク地方のビアリッツに避難します。

世界が混乱し、死傷者が膨大な数となっていく最中、疎開先のビアリッツは別世界であり、そこにはすべてがありました。大西洋の海、穏やかな気候と瀟洒な別荘、カジノ。毎夜の上流社会のパーティやお茶会。そういったビアリッツでガブリエル・シャネルは初めてクチュールの店をオープンしました。ビアリッツはシャネルにとって転機となった地であり、彼女が成功を手にした地でもあります。

現在、30年以上ぶりにガブリエル・シャネルの仕事に焦点を当てる国際巡回展が東京、三菱一号美術館にて2022年9月25日まで開催

ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode ガブリエル・シャネル展 – CHANEL公式サイト

第一次世界大戦の爪痕、ロスト・ジェネレーション。ヘミングウェイの小説の舞台となったバスク地方

スペインバスク地方パンプローナ

さて、第一次世界大戦つながりで、一旦、フランスのビアリッツから離れて、スペインバスク地方パンプローナのエピソードをご紹介したいと思います。

多くの犠牲者を出し、悲惨な第一次世界大戦中に青春時代だった若者はロスト・ジェネレーションと呼ばれました。戦争が彼らからたくさんのものを奪い、喪失感から未来へ希望を見出せず、閉塞感から自堕落な世代といわれています。そのロスト・ジェネレーションを主人公に戦後の爪痕を描く代表的な小説家といえばアメリカの小説家アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ(Ernest Miller Hemingway)が挙げられます。ヘミングウェイの代表作「日はまた昇る」では舞台となっているのがスペイン・バスク地方パンプローナです。ロスト・ジェネレーションの若者たちが闘牛のお祭り、サン・フェルミン祭を見るため、訪れたスペイン・バスク地方のパンプローナ。

そこには人々の生き物としての熱気と真摯、生と死が隣り合わせた異様な高揚感がありました。喪失感を抱え、希望を見いだせない彼らにとって衝撃的なラストが待っています。

スペイン・バスク地方パンプローナ サン・フェルミン祭

再びビアリッツへ コートデバスク ビーチ (Cote des Basques beach)

ヘミングウェイ原作の「日はまた昇る」の映画化に向けて準備を整えていた、プロデューサーのディック・ザナックと脚本家のピーター・ヴィアテルは、 彼らはコートデバスクの波を一目見ただけで、ロサンゼルスからザナックのサーフボードをこの地に取り寄せました。

ビアリッツはヨーロッパでのサーフィンの発祥の地で、ビアリッツのビーチの波がシャネルの決心のきっかけともなったといいます。

コートデバスク ビーチについて詳しく

アーティストやその作品、歴史とヨーロッパの上流階級の光と影が交差するバスク地方ビアリッツ。現在では贅沢でありながら、リラックスした雰囲気を持ちます。ここからはリゾート地としてのビアリッツをご紹介します。

ビアリッツは、カフェ、ショップ、観光名所は数時間以内に簡単に散歩できるメインのビーチパスに沿っています。

エスパドリーユ、リネン、海の自然を守るオーガニックコスメ

ビアリッツにはブティックショップがたくさんあります。エスパドリーユやバスクのテキスタイルなどの地元の特産品や、 フランスのサーフィン発祥地を自負する街だけに、サーフボード、海の自然や生物を守るオーガニックコスメ、水中でも身に付けていられるアクセサリーなど、サーフィンを愛するライフスタイルにフィットしたブランドが次々と生まれています。ガンベッタ通りやヴィクトール・ユゴー通り、マレシャル・フォッシュ通りを歩いてみれば、歴史と伝統をたたえたビアリッツの表の顔とはまた違うビアリッツがあります。

グランド・プラージュにアクセス

ビーチが目的の方は、グランド・プラージュというビーチへ。メインビーチは、オテル・デュパレとカジノ・バリエールによって予約されたビアリッツの西海岸に沿って広がっています。遊歩道沿いにあるカラフルなストライプのビーチテントも1日レンタルできます。

ビーチを眺めながらカクテル

コートデバスクと平行に走る遊歩道沿いには、サーファーや人々を眺めるのに最適な屋外席のあるバーがいくつかあります。最高の景色、潮騒、穏やかな天候、気取らないバー、美味しいカクテル。青空の下も素敵ですし、海に面したクッション付きの階段に腰を下ろし、夕日を眺めるのも美しいひと時です。

レストラン、バー、ファーマーズマーケット

スペインのすぐ隣にあるビアリッツでは、ピンチョスやボカディージョ(主にバゲットにハムやチーズ、トルティージャ(スペイン風オムレツ)等を挟んだスペイン式サンドイッチ)を提供するレストランで賑わうタパスシーンを見つけることができます。

関連記事:スペイン・バスク地方、美食の地をめぐるあれこれとシードル・その1 スペイン・バスク地方、美食の地をめぐるあれこれとシードル・その2

Bar Jean は、1930年代からタパス、パエリア、魚、伝統的な料理を食べることができ、フランスまたはヨーロッパでは珍しい、終日、年中無休で営業しているバーです。トリップアドバイザーBar Jean(日本語)

Crêperie Sarrasin Biarritzでは伝統的なフランス料理があります。ガレットはそばのみで作られ、自然にグルテンを含まず、スタイリッシュなインテリア、フレンドリーな従業員、地元のシードルが揃っているおすすめのレストランです。 トリップアドバイザー Crêperie Sarrasin Biarritz(日本語)

Les Halles は、1885年に最初にオープンした歴史的なファーマーズマーケットです。 現在、肉、魚、ペストリー、チーズ、花、農産物、コーヒーなどを販売する屋台があります。グルメな人はこの市場を見逃すことはできません。 Biarritz Les Halles & Centre Ville Facebook

フランス・バスク地方ビアリッツへのアクセス
■フランスから
パリ・オルリー空港またはシャルル・ド・ゴール空港からビアリッツ・アングレット・バイヨンヌ空港まで、飛行機で約1時間30分。空港から市内の中心地まで、車で約20分。パリから電車で行く場合、モンパルナス駅からTGVでビアリッツ駅まで約5時間20分、ビアリッツ駅から車で20分。
■スペインから
ドノスティア駅(サンセバスチャン駅)からビアリッツまでバスで片道約1時間。
バスク地方内の移動についてよくまとめられているサイト
フランスバスク サンセバスチャンからビアリッツへ日帰り旅行してきました。


フランス・バスク地方のシードルとスペイン・バスク地方のシードル

スペインとフランスの国境を跨ぐバスク地方。今回はフランス・バスク地方のビアリッツという街について焦点をあてました。
バスク地方はシードルの産地でもあります。バスク地方のスペインもフランスもどちらもシードルが飲まれますがスペイン・バスク地方のシードルとフランス・バスク地方のシードルでは味わいが違います。 飲み比べるのも楽しいですし、お料理によって切り替えるのも良いです。ぜひ、お試しください。

フランス・バスク地方 エスティガ シードル・ドゥミセック とスペイン・バスク地方 イサステギ・シードル

フランス・バスク地方 エスティガ シードル・ドゥミセック
色:濃いめ、オレンジ色が薄くかかっている黄金色
香り:リンゴの甘酸っぱいかおりが突き抜けるように香り、香りが辺りに残らずすっと抜けていく
味:ほのかに甘い。軽い口当たりながらボディがしっかりしていて味わい深い。酸味は殆ど感じられずアクセント程度、苦味のほうが酸味よりは若干多めに感じられるが甘み、苦味、酸味のバランスが良く、食事にもデザートにも合うシードル。食前酒としても良い。
エスティガ シードル・ドゥミセック

フランス・バスク地方 エスティガ シードル・ドゥミセック

スペイン・バスク地方 イサステギ・シードル
色:無濾過なので底には澱が溜まっていて、瓶を振って注いだ場合は濃いめの黄色、瓶を振らないで注ぐと最初は薄い黄色、底に近づくに従って濃い黄色
香り:爽やかなフルーツ酸の香り
味:冷やすとより酸味が強く感じられシャープで辛口の味わい。常温だと酸味がまろやかになり果実味が感じられる。どちらにせよ甘みはほとんど感じない。
食事に合わせるシードルであり、味が濃い、ミネラルを多く含む、脂っこい、酸味のある食事と相性が良い。また、甘すぎるデザートとの相性も良い。

スペイン・バスク地方 イサステギ・シードル

関連記事:


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?