スコティッシュバレエ「コッペリア」@ロンドン
4 March 2023 19:30, Sadler's Wells Thetre
スコティッシュバレエのコッペリアを見てきました!スコットランドで初演された時から大注目されていて、私もロンドンに来てもらうのを楽しみに待っていた作品。これぞ、21世紀のバレエ!と言える面白い作品でした!
これ以降は独断と偏見に満ちた感想です。ネタバレも含みますので、知りたくない方は見ないでね。
コッペリアを知らない方に。コッペリアはかなり古い古典バレエで、有名な白鳥の湖よりも前に作られた喜劇バレエ。コッペリアとはかわいいお人形の名前で、実は主役ではありません。主役はスワニルダという女の子。彼女の彼氏フランツが、人形師コッペリウスの家の窓辺に座っているコッペリアに人形とは知らず一目惚れ。コッペリウスはコッペリアに魂を入れたいがために、怪しい魔術でフランツの魂をコッペリアに入れるため、フランツを家に誘い込む。こっそりついて行ったスワニルダは、フランツが酔い潰れ、コッペリウスが魔術を始めたタイミングでコッペリアになりすまし、踊って見せてコッペリウスにコッペリアに魂が入ったと思わせるんだけど、そんなことあるわけないじゃん、とネタバラシして、フランツを起こしてコッペリアのネタバレをし、結婚してめでたしめでたし、というお話。
さて、このスコティッシュバレエのルナクル−テンプル&ライト版は、舞台がなんと、現代(近未来?)のシリコンバレー!コッペリウスはあのカリスマを思い起こさせるような発明家&起業家。そんな注目のコッペリウス博士にジャーナリストのスワニルダが彼の発明した新しい人工知能「コッペリア」についてインタビューしにラボにやってきます。(仕事場に婚約者のフランツを連れてくるってどうよ、とも思うんだけど。)
人工知能はロボットとして物質世界に誕生…。するはずだったけど失敗。だけどフランツはこの技術(コッペリア)にすっかり魅了されます。コッペリウスはこのフランツの情熱?が成功の鍵になるのではないかと睨み、再挑戦。(理系人間がこんなことを考えるかねえ。と突っ込みたくなるけれども…。)
その時スワニルダはラボの中をうろうろしていて、コッペリアを発見。自分の体をコッペリア(AI)に差し出すことができることを発見してコッペリアになる。実験が成功し、完璧な存在である人工生命体を作ることができたと喜ぶコッペリウスに、スワニルダがネタバラシ。彼が完璧だと思っていた人工生命体は実は不完全な存在である人間だった、というオチ。
ストーリーも現代ならではのもので面白い!このバージョンでなんといっても特徴的なのは、ライブカメラの映像が入ること。ダンサーの一人がカメラマンとして入り、舞台上の映像を映し出し臨場感ある演出、そして録画の映像とミックスすることで場面転換の画をうまくつなげることに成功しています。映像を使う舞台で使うのはちょっとチートっぽくない?と最初は思っていた私ですが、やはり舞台ならではのやり方を見ると面白いもので、最近はいろんな演出を見ては感心しています。カメラマンを務めたパトロンは、ダンサーでありながらフォトグラファーでもあり、カメラの扱いをわかっているからかまるで映画を見ているような美しい仕上がり。今そこで撮っているとは思えないほど美しい画で、踊りこそないもののそのカメラワークこそが芸術。
また、スワニルダのインタビューシーンではバレエには珍しく会話が入るんですが、会話は録音で、その会話に合わせてスワニルダとコッペリウスはマイム(むしろ振り)。そのシーンはインタビューシーンが行われる小部屋が舞台上でくるくる回っているので、実質私たちはライブカメラの映像を見ることになるのですが、このカメラワークも振り付けと言えるような流れるような動き、そしてダンサーの表情を捉えていて、秀逸。私は目が悪いので舞台上の表情はほとんど見えないんですが、カメラに捕らえられた二人の表情はまるで映画のトップ俳優のようで(舞台っぽい大袈裟な演技じゃなく、自然な感じがよかった、という意味で)、(当たり前ですが)ダンサーの演技力の素晴らしさにも脱帽。
ダンスもダイナミックですごく素敵でした。現代っぽいTikTokダンス?みたいなのもあって、面白い!特に魅了されたのは、コッペリウスとコッペリアになったスワニルダのパ・ド・ドゥ。そこだけ違う作品なのではと思うほど二人の美しい世界になっていました。
気になっていた音楽。古典の改訂版では、私は原音楽を使ってほしい派。クラシカルが好きなので…。コンテにありがちな無機質な機械音系は苦手なので、そうだったらどうしよう…と思ったのですが。ほぼほぼドリーブのものは使われてませんが、機械音系の音楽ではなく、ちゃんとオーケストラの音楽が使われた、私でも聴きやすい音楽でよかった!全くの新曲なのかと思いきや、ちゃんとあの有名なマズルカや耳に慣れたあのメロディーも聞こえてきて、古典ファンにも嬉しいところ。(ちょっとですけど。マズルカが意外な場面に使われていてみんなウケてました。笑)もちろん、現代っぽい音楽も入れていたり、Tiktokダンスのシーンではテクノっぽい音楽も使っていて、心配していたよりもききやすくてよかった。
ダンサーでは、この作品ではスワニルダというよりやはりコッペリウスのカリスマ性が光る作品な気がします。コッペリウス役のエドワーズは舞台上でコッペリウスのカリスマ性を遺憾無く発揮。スワニルダのベンジャミンは、まだコールドながら、のびのびと踊って主役を難なくこなしているように見えました。先述のコッペリウスとのパドドゥがすごくよかった。
スコティッシュバレエは面白い作品を次々手掛けていますが、このルナクル−テンプル&ライトの二人の次の作品もぜひ見てみたい、と思わせるくらい、楽しい作品でした!
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