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「SOS!絶望に差し込む光ーヒーロー登場?ー」アフリカ大陸縦断の旅~エジプト編⑩~

※前回の物語はこちらから!!!


 2018年8月16日、午後18時半頃。突然ムーディから12万円を請求され、もはや彼の支配下にいた私たち。それでも払うわけにはいかない、と必死で続けたハリボテの嘘。しかし、いとも簡単にそれらをかわし、私たちをATMに誘導するムーディ。「何とかこれで引き下がってくれ。」そう願いを込めて、差し出した2万円。それで納得したかに思われた次の瞬間、ムーディは私の胸にかけていたポーチに手を伸ばしました。目にも留まらぬ速さで盗まれた、財布代わりのジップロック。

「とりあえず今は、これでいい。」

 道路に投げ捨てられた空っぽのジップロックを拾い上げる私に、無情に響くムーディの言葉。

「(何が起きた?とりあえず今は、、、?)」

 私は一銭も入っていない透明の袋を手に取り、それを見つめながら考えを巡らせました。


「(完全に詐欺、、、というか、もはやこれは強盗。もう一銭も残っていない。私たちをここから逃がさないつもりか。なぜジップロックにお金が残っていることを知っていたんだろう。いつ見られた、、、?あぁ、あの時か。馬に乗って初めの3万円を支払った時に、気付かれていたんだ。それにしても、とりあえず今はって?これからも何かあるのか?今度はどこに連れて行かれる?宿まで来る気か?無一文の私たちから奪うモノ?口封じのために殺されるのか?)」


 知らない土地で全財産を失った私たち。そして、目の前には、私たちを逃がさないと立ちはだかる犯罪者。絶望に包まれた現実。考えれば考えるほど、浮かび上がる最悪の結末。



 死にたくない。どうにかここから逆転の一手を。


 しかし、目の前の状況は悪くなるばかり。


「今から妹の家に連れて行くから、車に乗れ。」

 私たちに、冷たく言い放ったムーディ。

「(そうだ。逃げろ。走れ!)」

 しかし、動かない体。

 気付けば私たちは車に乗っていました。

 そうです。お金を奪ったムーディの行動は、服従せざるを得ない恐怖を私たちに植え付けていたのです。



 そして、車に乗ること数十分。この後起きるであろうことを予想し、吐き気を催しながらも、逃げ出す隙を伺っていました。しかし、その甲斐もなく、妹の家と言われる場所に到着。人の気配はない。砂まみれのドア。破壊された壁。散らばったレンガ。ボロボロの窓。崩れ落ちた屋根。周囲にも立ち並ぶ、同じ廃墟のような家。


「(これが家?そんな訳がない。そういえば道中、誰一人見ていない。ここに入ってしまえば、最後、、、。)」


 しかし、私たちを襲う、制御できない感情と受け入れられない現実。抵抗する間もなく、半ば強引に家の中へと押し込まれた私たち。


 真っ暗な部屋。取り除かれた電球。崩れた屋根からかろうじて差し込む光。家具や家電は一切見当たらない、まるで生活感のない部屋。その中央にポツンと置かれた灰皿。それを囲うように私たちは座り込みました。なぜか運転手も一緒に。


「今晩はここに泊まっていけ。」

「(え、、、?)」


 思わぬ第一声に、追いつかない理解。しかし、それだけは絶対にしてはいけない。泊まったら確実に死ぬ。明らかな危険を感じた私たちは、どうにか宿に帰るための言い訳を探しました。


「宿泊費を今日の分までしか払っていないんだ。だから荷物を取りに帰らないといけないんだ。もしここに泊まるとしても、宿に伝えておかないと。でも、今は携帯電話が使えない。だから1度宿に戻ってもいい?」


「ああ、それなら問題ないよ。俺が宿まで送ってやる。」


 抜け目ない完璧な答え。煙草らしきものを吸いながら余裕の笑みを浮かべるムーディ。


「(もうだめだ。何も打つ手がない。もう逃げられない。)」


 そう思って、旅の相方である、ぴょんすに目をやりました。彼の胸ポケットから少しだけ見える携帯電話。


「(あぁ、携帯電話さえ使えれば、、、。まだ誰かに救いを求める手段があったのかもしれない、、、。そうか、携帯電話か!私たちにはまだ、あの人がいる。もうこれしかない。これに賭けよう!)」


 絶望の中にわずかな光を見つけた私たちは、ムーディを必死に説得し始めました。


「宿に連絡をいれず、荷物だけ残すと多額の罰金を請求される。そうしたら、あなたにお金を払えなくなってしまう。今晩は泊まる。明日宿にも一緒に行く。その時にお金も払う。だから頼む。その代わりに携帯を貸してくれ。お願いだ。」


 携帯電話を借りることだけに必死だった私たち。後先考えずに嘘をつき散らかし、恐怖心など忘れてしまったかのように、ムーディに言い寄りました。

「そこまで言うなら分かった。宿への電話だけかけろ。かけ終わったらすぐに返せよ。」



 そして、何とか手に入れた携帯電話。

「(この電話にしか救いのチャンスは残されていない、、、。)」



 プルル・・・プルル・・・プルル・・・


「あ、もしもしオーナーですか?今事件に巻き込まれていまして・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・僕たちどうすればいいですか?」




「、、、暴れろ。今すぐそこで暴れろ!」


※続きの物語はこちらから!!!





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