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低緯度オーロラの晴れ間を狙う

2023年12月1日夜に北海道地方で低緯度オーロラが見られました。
私の住む道央エリアは雲に阻まれ見ることができませんでしたが、イラストレータで映像作家、天体写真家のKAGAYAさんが道東網走で素晴らしい写真を撮られていました。

北海道で【肉眼で】オーロラが見られた地域はオーロラの研究をしている片岡龍峰さんがnoteにまとめています。
これを見ると、日本海側での目撃情報がないのは雲に阻まれたからになるので、晴れていれば北海道全域で見られた可能性があります。

では、どこまで晴れていれば見えるのでしょうか?
KAGAYAさんの撮られた低緯度オーロラの写真を見ると、非常に多くの星が写っています。
これを星図に照らし合わせると、、、

KAGAYAさんが2023年12月1日に撮影したオーロラ写真に星座線を追加

となります。

12月1日21時ごろのミザール・アルコルの高度が10度ぐらいなので(北海道では北斗七星は地平線下に沈みません)、オーロラの上端も同じぐらいになります。

つまり、地平線から高度10度ぐらいの高さに晴れ間があれば、たとえ空の9割が雲に覆われていても諦める必要はないのです。

以前に「あの雲までの距離は。。。」と題して何km先まで晴れていれば星が見えるかという記事を書きました。

このとき、低緯度オーロラを絡めた計算は宿題にしていましたが、それを解いていきたいと思います。

低緯度オーロラは大規模に発生したオーロラが空の高いところにまで広がって発生し、それを遥か遠くの地(この場合は北海道)からその上端を見ている現象になります。

NOAA Aurora Forecast より

上記は2023年12月1日21時ごろのオーロラ発生予報です。
オホーツク海の北(画像で言うと北海道の右下)に赤く広がるエリアが広がっていますが、これがオーロラが発生していると予想されるエリアになります。
非常に大規模に発生していますが、北海道からは2,000km近く離れており、直接見ることはできません(仮に高さ100mの崖の上から見たとしても水平線までの距離は35.7kmしかありません)

ですが、オーロラは地上から100~500kmの高さで光っています。
https://www.jaxa.jp/article/interview/2013/vol79/index_j.html  より)
遠くから高い山を見ているイメージになり、裾野は見えていませんが山頂は見えているのと同じになります。

つまり、2,000km離れたところから高さ500kmのオーロラの上端(山の山頂)を見ているのと同じになります。

このとき、視線はほぼ水平
KAGAYAさんの写真を見ると高度は10度そこそこなので、そこが晴れていれば見えるのです!

低緯度オーロラのイメージ

では具体的に何km先が晴れていれば、高度10度付近に雲がないのでしょうか?
「あの雲までの距離は。。。」の時と同じように計算して見ましょう

晴れ間が欲しい雲のない場所までの距離を$${x}$$、雲の高さを$${h}$$、視線角度を$${θ}$$とします。
三角関数を使うと傾斜角と高さから底辺(距離$${x}$$)は

$${x = \frac{h}{tanθ}}$$

と表せます。
視線角度$${θ}$$はKAGAYAさんの写真から10度とします。雲の高さ$${h}$$を10kmとすると、距離$${x}$$は約56.7kmとなります。

観測地を札幌市とすると、北方向で砂川・滝川〜浜益ラインぐらいから北に雲がなければ、地平線から高度10度ぐらいに晴れ間があると言う計算になるかと思います。
(計算結果が間違っている場合はご指摘願います)

札幌市を中心とした半径56.7kmの円

オーロラの発生予報は、宇宙天気予報NOAAのサイトをチェックして確認することができます。
今回のオーロラも11月29日に発生したフレアの影響と見られています。
フレアが発生し、太陽から放出されたプラズマが約2日半かけて地球に到達し、磁気嵐を起こすことでオーロラが発生します。
フレア発生からオーロラのチャンスまで時間がありますので、移動計画を立てて狙って見てはいかがでしょうか。

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