あの雲までの距離は。。。
GPV(SCW)やWindyなので晴れ間を探している時、「北の方に雲あるなぁ」とか、「水平線まで晴れているのはどこだ?」などと悩むことがあります。
特に太陽に近い内惑星(水星・金星)や太陽に近づいて明るくなる彗星などの観測には空の低いところまで晴れていることが重要になります。
上(天頂)は晴れているのに、低いところに雲がある。。。
雲画像と見比べた時、どの範囲に雲がなければ、全天晴れているのでしょうか?
水平線までの距離
海岸線などに立った場合、水平線までの距離は計算で求めることができます。
地球は丸いので、その断面は円で近似することができます。
円の半径(地球の半径)を$${R}$$、地面からの高さ(視点の位置)を$${h}$$、水平線までの距離(km)を$${x}$$とします。
すると、距離$${x}$$は視点から水平線まで引いた接線になります。
図を見るとわかりますが、直角三角形ができます。
直角三角形ですのでピタゴラスの定理から$${x^2 + R^2 = (R + h)^2}$$ が成り立ちます。
ここから$${x = \sqrt{2Rh} + h^2}$$と導き出せます。
$${R}$$は約6,370km、$${h}$$は仮に170cm(海岸に立った場合)とします。
こうすると、$${+ h^2}$$は$${R}$$に比べ非常に小さいのでほぼ無視できます。
($${Rh}$$の$${h}$$は掛けているので無視しないでくださいね)
単位を揃えて計算すると
$${x = \sqrt{2Rh} = \sqrt{2 × (6.37 × 10^3) × ( 1.70 × 10^{-3})} = 4.6538…}$$
となります。
有効数字を3桁とすると、水平線までの距離は約4.65kmとなります。
。。。近!!
もちろんこれは水平線に立った場合ですので、岬や丘、山の上などでは$${h}$$の値は変わってきます。
仮に高さ100mであれば水平線までの距離は35.7kmほど
高度36,000フィートを飛ぶ飛行機の上からであれば374kmほどになります。
地球は完全な球ではありませんし、大気差によって実際に見えている範囲は計算とは異なっていますので注意してください。
雲までの距離
では、雲までの場合はどうでしょう?
雲はその種類によって高さが違います。(詳しくは雲なのか霧なのかをご覧ください)
Windyですと高層雲・中層雲・低層雲と分けて表示できますが、雲ができるのは概ね10〜13kmぐらいまででしょうか。
雲の高さを$${h_c}$$と仮定して、そのまま地球半径$${R}$$+$${h_c}$$kmの円をイメージしましょう。
観測者の目線(高さ:$${h}$$)から仮想雲面までの距離$${x_c}$$を計算すると、
$${(R + h_c)^2 = (R + h)^2 + {x_c}^2}$$から、
$${{x_c} = \sqrt{2Rh_c + h_c^2 - h^2 -2Rh}}$$
となります。(例によって$${- h^2}$$は$${R}$$に比べ非常に小さいので無視できます)
$${h_c}$$を10km、$${R}$$を6,370km、$${h}$$を170cmとして計算すると、雲までの距離$${x_c}$$は約357kmとなります。
この雲があるのが地図上だとどこになるか?ですが高さ$${h_c}$$を10kmと仮定していますので、そのまま垂直におります。
すると実際は球面なので弧になりますが、簡易的に斜辺$${x_c}$$が357km、垂直に下ろした高さ$${h_c}$$が10kmの直角三角形と仮定できます。
すると三角関数を使って弧(底辺)$${x’}$$は
$${θ = sin^{-1}\frac{h_c}{x_c}}$$、$${x’ = \frac{h_c}{tanθ}}$$
から、雲があるのは約356km先の場所となります。
これが高度30度ぐらいまでとなると三角関数のオンパレードで計算することになります。
角度を$${θ}$$、高さを$${h_r}$$とすると、雲までの距離(斜辺)$${x_r}$$は、雲のある地点までの距離を$${x'_r}$$とすると、
$${h_r=x'_rtanθ=x_rsinθ}$$
$${x'_r=x_rcos}$$
から、雲までの距離$${x_r}$$が20km、雲のある地点までの距離$${x'_r}$$が約17.3kmと計算できます。
一般的な市街地の観望会であれば地上の建物などを考慮するとピンポイントで晴れ間があれば星を見ることはできそうですね。
低緯度オーロラを狙うとすると。。。
過去に低緯度オーロラを狙って行った場所は北海道小樽市の展望台になります。
ここは海抜約70mですので上記の式に当てはめると、北方向355km先まで雲のが無い空が広がっていなければならないことになります。
上記の雲予報だと北方向30kmぐらいのところに雲があることになります。
355km先ですとサハリン南端ぐらいまで雲がない状態でないと、厳しいということになるでしょうか。
ですが、北海道などの低緯度地方で観測されるオーロラ(低緯度オーロラ)は高度100km以上で出現しているオーロラの上部を捉えているものになりますので、$${h_c}$$を100kmとして計算すると、そこまで晴れていなくても良さそうですが(この辺は計算がややこしくなりそうなので別の機会にしましょう)
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