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「和気町トレイルラン」とは? コースの魅力を詳しく解説します!

写真・文=山本諒馬

2023年1月よりTrail Storyのレポーターをさせていただくことになりました。岡山県在住の山本諒馬です。
早速ですが、第1回目の投稿として岡山県和気町を舞台にした「和気町トレイルラン」レースの展望とコース概要をレポートしたいと思います。

和気町とは

和気町は岡山県南東部に位置する人口14000人の小さな片田舎の町です。山・川・田畑などの自然が豊かでのどかなところです。

和気町は古くから交通の要衝でした。吉井川を下る高瀬舟の船着き場でもあり、30年ほど前までは、吉井川沿いを走る片上鉄道が柵原鉱山から備前市の片上湾まで硫化鉄鉱と旅客を運び、JR和気駅はその乗換駅でもありました。

東日本大震災以降、岡山県には都心部からの移住者が増えてきていますが、岡山の移住先として真っ先に名前が挙がるのが和気町です。町の自然の豊かさが、都会の喧騒から抜け出したい人々の心を掴んでいるようです。

和気町の名所

登山やトレイルランをする人にとって、和気町といえば、和気アルプス
JR和気駅からすぐ登山口に行ける「和気富士」をはじめ、穂高山や涸沢峰、ジャンダルムといった日本アルプス由来の名前がついた小さなアルプスが存在します。標高は300m程度ですが、あなどるなかれ。低山とは思えない岩場の連続と高度感が、ときには足をすくませるほど迫力があります。

和気アルプスから望む朝日

レースの開催に向けて

そして、和気町を舞台としたトレイルレースを近年中に開催したいと地元の方々が力を注いでいます! 2022年11月にはゲストにプロトレイルランナーの鏑木 毅さんを招いて、講習会・コース試走会を行い、夜は「和気トレイルラン」レースの展望を語りながら懇親会も行いました。

数々のレース運営に関わってきた鏑木さんからのアドバイスとしては、全国からランナーを呼ぶには「50Kのレースカテゴリー」を設けるべきというお言葉をいただきました。また試走の際に、「和気アルプスをメインとしたレース開催は出来る」と、開催に向けて自信となるお言葉をいただきました。

鏑木 毅さんをゲストにお迎えした懇親会

想定コースを試走してきました!

50Kを想定したコースを主催の方々が考案してくださったので、まだまだ構想段階ではありますが、コース試走をしてきました。詳しいコースのご紹介をします。

スタート地点は「和気ドーム」です。全天候型の施設で、ドローンパークとしても使用されています。雨の時でもスタート会場に適した場所です。

和気ドームをスタートし、和気鵜飼谷温泉の横を通り、ロードを少し登ります。クリーンセンターの脇のトレイルに入り、一つ目の山である神ノ上山を目指し標高を上げていきます。するとすぐに和気アルプス特有の岩場が出現します。まだ標高200mもないのに、すごい高度感です。ここはハイカーも多い地点になりますので、足元に注意しながらゆっくり登っていきます。

和気アルプス特有の岩場の稜線

標高200m地点には、日本アルプスの穂高岳から名称をもじった穂高山があります。看板もしっかりしており、小さいながら見晴らしのよい山頂は心を落ち着かせてくれます。

標高200mの穂高山


少しアップダウンのある稜線を越え、和気アルプスの最高峰(標高370.3m)の神ノ上山を通過します。最高峰ですが山頂は広めです。

和気アルプス最高峰 神ノ上山


ここから一度ロードに下山します。少しテクニカルな下りを走り、和気中学校の裏に出ます。ロードを走り、竜王山の登山口に。竜王山からは和気富士に向け縦走し、再びロードに下ります。和気富士は和気市街から見たときに左右対称であることからその名がつけられたとされています。

和気アルプスのパートは終了。ロードから和気橋を通り、吉井川を西側に渡ります。ここからはイモリ岩まで登るのですが、この日は藪漕ぎが多めとのことから、ロードで迂回して外国山(そとくにやま)に登りました。外国山の登りは急登です。距離は短いながら息を弾ませ登ります。登っていくと、山頂はひっそりと森の中にありました。

外国山の山頂


ここからは送電線沿いに北上していくのですが、整備がとても行き届いており、送電線沿いとは思えないほど走りやすかったです。電柱の周りもひらけていて気持ちの良いトレイルでした。個人的にこのパートは、コースの中でもかなりおすすめです! 知名度が低い山だからか、コースはきれいなのにハイカーはほぼおらず、走りやすく景色も良い、まさにトレイルランに最適なコースです。

送電線沿いの美しいトレイル

峠山という山からロードにおります。学び「館サエスタ(佐伯のスタジアムだからサエスタ?)」の横を通ります。ここにはローソンがあるので、試走のときの休憩ポイントになるでしょう。佐伯大橋を渡り、再び吉井川の東側に進みます。

北向き穴観音の脇からトレイルに入ります。少し倒木などで荒れていますが、緩やかに登るトレイルです。4〜5kmほどかけて、「ロマンツェ」まで400mほど高度を上げます。ここは、がんばればほとんど走れるくらいの斜度です。レースでは脚を残しておいて走って登ってほしいパートです!

走れる緩やかな登り

高原の宿「ロマンツェ」に到着です。コース上の最高峰(標高442m)で、この日は雪が残っていました。レースとは関係ありませんが、ここロマンツェでは屋外映画が楽しめます。映画館がない和気町の子どもたちにも大きなスクリーンで映画を楽しんでほしいということで、2020年から毎年秋の夕暮れ時に、この野外ステージで映画フェスティバルが開催されているそうです(しかも、無料!)

高原の宿「ロマンツェ」

ここからは田土の棚田の間を縫うグネグネロードをひたすら6kmほど下っていきます。景色はきれいですが、とても脚にきますので飛ばしすぎ注意。もしも脚に疲労を感じたら、リラックスがてら後ろを振り返ってみてください。先人達が積み上げた美しい石垣があちこちに見え、それを現在まで維持管理されている地元の方々のご苦労がしのばれます。

石垣が美しい田土の棚田

吉井川沿いの天神山城跡の登山口まで下り、それから、山頂まで急登を登ります。城跡のマップがあるので、大きく山城が築かれていたことが想像できます。気持ちがよく、ほっと一息つける場所でした。

天神山城跡

太鼓丸城跡を過ぎ、キャンプ場「和気美しい森」に出ます。ここは駐車場もあるので、エイドを設けるのによさそうな場所です。

再びロードを2〜3km下ります。さぁ最後のトレイルです! 最初に通った神ノ上山を今度は北から登ります。ここはまだあまり整備ができておらず、不明瞭なトレイルを目印を頼りに進んでいきます。

山頂付近はまだ整備されておらず、藪漕ぎが少なからずありますが、がんばれば進めるレベルです。姿勢を低くして、シダをかいくぐり再び神ノ上山に到着! 

ここからは来た道を戻り、スタート地点に帰ります。和気アルプスの下りは危険なので、決して急がないこと。人気がある山でハイカーも多いため、スピードハイク程度で進みましょう。

和気アルプスの下り

そして、フィニッシュ地点の和気鵜飼谷温泉に到着! 約45km、 累積標高D+3000mの最高のコースです!

「和気トレイルラン」レースの想定コース
約45km、 累積標高D+3000m


フィニッシュ後は、和気鵜飼谷温泉で汗を流します。露天風呂や薬草風呂、サウナ室もあり、ホテルにもなっているため食堂もあります。レース会場にもってこいです。

癒しの和気鵜飼谷温泉

「和気トレイルラン」レースの想定コースの紹介は以上です。

田舎町ながら観光名所や素敵なトレイルが多く、なによりコースを考えた人が、どこをランナーに通って欲しいかをよく考えているなぁと実感しました。変化に富んで飽きのこない素晴らしいコースです。「また来たいな」と心底思いました。

和気駅付近には飲食店が多いので、アフターもしっかり楽しめます。また、和気ICからも近く、他県からもアクセスしやすいのも魅力です。

まだトレイルランを楽しめる場として知名度が低い和気ですが、十分に楽しめるコースがあります! ぜひたくさんの人に訪れていただき、トレイルを育て、また、守っていきたいです。

今回、一緒に試走したメンバー


山本諒馬(やまもと・りょうま)

岡山県出身。29歳。自動車部品会社・イーグル工業株式会社に勤務。
中学から大学までバドミントンに打ち込むが、対人競技のプレッシャーに疲れ、22歳からトレイルランを始める。自分をマネジメントしながら進んでいくロングトレイルレースの魅力に惚れ込み、現在では、ウルトラトレイルレースをメインに競技に打ち込みつつ、地元岡山県のトレイルレースの魅力を伝えるべく活動している。instagram
《2022年の主な戦績》
UTMF2022 18位(ニューヒーロー賞受賞)
那岐ピークスタフトレイルチャレンジ 4位
大阪 夏の陣・くろんど輪舞曲2022 120K 優勝
広島湾岸TRAILRUN2022 4位
日本山岳耐久レース ハセツネダブル 5位

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