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【フィンランド研修レポート|サウナ編②】サウナビレッジから学ぶ、サウナと人との歴史的な関わり

こんにちは、トレイルヘッズの永島です。
2022年9月に社員一同で訪れた、トレイルヘッズのカルチャーやサービスに大きな影響を与えている国フィンランド。ここではフィンランド編Note記事として、我々がフィンランドで何を見て、何を学んできたのか、皆様に少しでもおすそ分けできればと思います。

サウナビレッジ

サウナビレッジ。なんと良い響きでしょうか。
そんな場所がフィンランドにあると知ったらみなさんどうしますか?
僕は*サンタクロース村より全然ワクワクしてしまいますね。(*フィンランドにある、サンタさんに会える村。ファンの方いたらすみません。)

フィンランド旅行記第2回目の今回は、サウナビレッジを通じて、サウナと人との歴史的な関わり合いから学んだことをシェアしていきたいと思います。

サウナビレッジはフィンランド人とサウナとの繋がりを学ぶのに最適の場所だ。

フィンランド南部のオアシス

フィンランドのJamsa(ヤムサ)と呼ばれる地域にある、サウナビレッジ。伝統的なスモークサウナ小屋の保存と運営を行う施設で、サウナ文化と歴史を伝えていくことを目的としています。ボランティアの手によって運営されており、もちろんサウナにも、なんと無料で入れる!そして例に漏れず、このサウナもすぐそばに湖があります。

ここの場所を切り盛りしているのがSaijaさんという女性。彼女のプロデュースもあり、今では23棟ものスモークサウナが毎週土曜日に稼働しています(なお、9月以降は棟数が制限されたりと、季節によって変動あり)。
「サウナの全てを教えてくれなんて言わないでくださいね。1日やそこらじゃ語りきれませんから(笑)」
そう言いつつも、Saijaさんはフィンランドサウナの歴史、サウナビレッジの成り立ち、スモークサウナの特徴から楽しみ方まで、可能な限りの知識をとても丁寧に教えてくれました。(思った以上のボリュームで、最後にはトレイルヘッズメンバーの方が音を上げてしまい、早くサウナに入りたい!と言ってレクチャーは終わりました。)


サウナビレッジの盛り上がりは、Saijaさんをはじめとしたボランティアの活動によるものだ。

歴史あるスモークサウナ

まずはスモークサウナとはなんぞや、という話。

「今フィンランドでは煙突のついた薪ストーブのサウナや、電気ストーブを使ったサウナが一般的です。ですが、その歴史を遡るところ1000年以上、現代のようなサウナが普及するまでは、煙突のないサウナが一般的でした」

スモークサウナとは、まさしくフィンランドサウナの原型なんですね。

煙突などの排気機能がないということは、そのまま入ったら一酸化炭素中毒で死んでしまう。じゃあどう使うのかというと、
1. 大量のサウナストーンを7−8時間かけてじっくり温める
2. ストーブの火を消す
3. ロウリュをすることで、サウナ室内の有毒な空気を外に追い出す=換気をする
4. その後、火が消えた状態で利用する
というのがスモークサウナというわけです。

サウナ小屋にてレクチャーを受けるトレイルヘッズメンバー。

基本的に温めたサウナストーンの放射熱やロウリュで温まるという使い方。なので、当然初めは暑く、その後数時間かけて徐々に温度が下がっていくものなのです。

「はじめに屈強な男性陣が、次に若者たちやお年寄りが続き、そして大分温度が落ち着いてきたら小さい子供やその親などが入るといった感じです。」

ちなみに安全ではあるのですが、スモークサウナは性質上火事が頻発するそうなので、フィンランドでも都市部には建設を許可されないそう。ご自宅にサウナを作ろうかな〜と思っている皆さんは必ず煙突付きのタイプを!

ここサウナビレッジでも1棟焼けてしまったことがあるのだとか。。。

”サウナ小屋は教会のように扱う”?

「フィンランドの人々は従来、このサウナ小屋の中で内職をしたり、食材の処理をしたり、さまざまなことをおこなってきたとされています。お産を行ったり、逆に人が亡くなった際の、葬儀前の身のお清めなども行ったそうです。」

生と死に関わる行事もサウナ小屋の中でおこなわれていたことが、いかにサウナがフィンランド人の生活において意味をもつ空間かを物語っていますよね。

もちろん子供たちも小さいうちからサウナに入るし、彼らはサウナを共にする大人からしつけを受けます。

「サウナを教会のように扱え"という教えすらあるほどで、サウナ内で声を荒げたり、下品な言動を取ったりなどはNGです。」

使った後は必ず綺麗にするように、という教えもあるそうです(この点はHINOKO SAUNAと一緒)。このような歴史背景を知ると、またサウナに対する見方が変わってくるものです。

各小屋の歴史について教わるトレイルヘッズメンバー。

フィンランドの厳しい自然とサウナ小屋建築

サウナビレッジに置いてあるサウナ小屋は、古いものだと250年以上前のものまであるそうで、その多くはフィンランド各地から移設されてサウナビレッジに収まっています。なので、それぞれの小屋には、建築様式や仕上げなどに特徴が見られるんです。

「現代においては木材もサウナストーンも、世界中のどこからでも取り寄せられますよね。でも、運送が発達していなかった時代においては、小屋を建てるその土地の木材やサウナストーンを利用していました。土地ごとの気候に合わせた伝統的な建築様式でサウナは作られていましたし、サウナビレッジにある各サウナ小屋にもその特徴がみられるんです。」

歴史的にも、厳しい自然の中、日常の家事や農業・狩猟にも追われ、木材も満足に採れないことは想像できます。だからこそ、できる限りあるものを生かす精神が根付いていました。新しく小屋を作る際も、他の小屋などから木材を流用して立てることも多かったんだとか。

そして、フィンランド人には代々、先祖が作った小屋の作りを受け継いでいく、という姿勢があったそうです。これはもちろん、現存の小屋から資材を調達することで、節約するためでもあります。けれど同時に、すでに機能しているものに対し、あえて改良を加える必要もない、という考えもあるようでした。



屋根を樹皮で覆い、苔や土で仕上げるのは、北方のサーミ族の伝統的な建築方法。

あるものの恩恵を感じて生きる

厳しい自然環境のフィンランドだからこそ、あるものの恩恵を享受しつつものを作ってきました。この姿勢は現代の我々にも、間違いなく多くの気づきを与えてくれますね。

そしてサウナは歴史的に見ると、単なる娯楽的な施設というよりは、生活の営みの中心であり、神聖に扱われる場所とも受け取れます。

サウナは歴史を語る。サウナと人との結びつきは面白いものだと改めて感じたのでした。

昔、小屋を移設する際には解体してから移動していた。同じように組み上げられるように、斧で目印をつけていたのだという。

Writing: Keita Nagashima (TRAIL HEADS)
Photo:TRAIL HEADS

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