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#StrayKids
窓の外に描く 第8話「バイクと絵」
その後、一週間たっても、ジニは学校に来なかった。フィリックスは相変わらず毎日学校に来て、女の子達に囲まれていたが、どこか寂しそうだった。
「フィリックス、元気無いな。」
そう話しかけると、フィリックスは答えた。
「先生もだよ。全然元気ない。」
いつもの澄んだ目で見透かされて、どきっとした。そうかもしれない。寂しかったのは自分自身だった。
「先生、ジニを迎えに行こう。家まで。多分、午前中は寝
窓の外に描く 第7話「瞳」
翌日も、その翌日も、ジニは学校に来なかった。バン先生は、フィリックスに言った。
「今日、ジニは一緒じゃないんだな。」
「うん。先生、ジニに何か言ったの?」
「フィリックス、どうして?」
「ジニが、先生とはもう話したくないようなこと言っててさ。何かあったの?」
「うーん。実は、バイクに無免許で乗るな、もうよせって話したんだ。」
「ああ、なんだ。先生が言ってることは正しいじゃん
窓の外に描く 第6話 「友達」
それから、2人はどういうわけか、毎日一緒に学校に来た。登校してからは、フィリックスは教室に、ジニは美術準備室に行った。
いつも通り、美術室でコーラを飲むジニに、バン先生が言った。
「ジニ、フィリックスと仲良くなったんだな。お互い友達ができて良かった。」
「友達?そんなんじゃねーよ。」
「毎日一緒に来てるじゃないか。」
「ああ、あいつと居たらおれが目立たないから。金髪じゃん、あいつ。」「
窓の外に描く 5話「転入生」
2学期になった。
バン先生が、教室の扉を開けると、ジニはやはり教室にはいなかった。できることはやったつもりだが、少し期待してしまったから悔しかった。
新学期は、転入生がやってくる予定だった。2学期に転入して、翌年はオースオラリアに再び帰るらしい。家庭の事情らしいが、詳しくは聞かなかった。役所で手続きを終えたその子は、午後から教室にやってきた。
名前はフィリックス。綺麗なブロンドの髪で、そば
窓の外に描く 4話「汗とコップ」
すぐに画集を持っていく気にもなれなくて、夏休みの最終日、8月31日に学校へバイクで行った。裏門にバイクを隠して、校内に入った。
「美術だっけ、あいつの教科・・・」
移動教室は、いつも教室で寝てるから、美術室に着くのに案外時間がかかった。美術室をノックすると、バン先生がいた。
「おう、ジニ。久しぶりだな。顔が見たかったよ。画集持ってきてくれたのか。」
「・・・・・・。うん。これ、二冊。」「じゃ
窓の外に描く 3話「電話」
退院してから、学校は夏休みだった。学校にはもう行くつもりは無かったが、8月に入ってから、電話がかかってきた。バン先生からだった。
「ジニ、怪我は大丈夫か?ずっと学校に来てなかったから、今からちょっと美術室に遊びに来ないか。学校に2学期からいきなり入るの、緊張するだろ。」
「緊張なんかするわけないだろ。学校はもう行かない。電話もしてくんなよ。」
そう、答えた。と、同時に、びっくりした。「学
窓の外に描く 2話「画集」
暴走族に入ってから一年後、中3になったジニは、5月に初めてバン先生に会った。進級して、しばらくしても学校には行かなかった。暴走族の仲間と、無茶な走りをして、バイクが転倒して事故を起こしたのが、5月の半ばごろだったと思う。
命こそ大丈夫だったが、右足に怪我をして、入院していた。家族はジニを見放していたから、入院の手続きで来てからは、その後はほとんど見舞いにも来なかった。
唯一、毎日来たのが、担任
窓の外に描く 1話「窓」
ジニは、美術準備室の隅で窓の外を見ていた。学校に来るのは久しぶりだった。授業にはいつも興味が無かった。学校には、自分の居場所は無いと、ずいぶん前から感じていた。不登校になる前も、なってからもずっと孤立していた。
家では、誰とも喋らない。ジニが何で学校に行かないのか、家族も誰も聞かなかった。夜中出かけるなとか、髪を染めるなとか、そういった言葉しかもう何年も聞いていない。中学2年生で、暴走族に入