![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/112231830/rectangle_large_type_2_effa112a0d03ffc1f42660db674e6245.png?width=800)
窓の外に描く 4話「汗とコップ」
すぐに画集を持っていく気にもなれなくて、夏休みの最終日、8月31日に学校へバイクで行った。裏門にバイクを隠して、校内に入った。
「美術だっけ、あいつの教科・・・」
移動教室は、いつも教室で寝てるから、美術室に着くのに案外時間がかかった。美術室をノックすると、バン先生がいた。
「おう、ジニ。久しぶりだな。顔が見たかったよ。画集持ってきてくれたのか。」
「・・・・・・。うん。これ、二冊。」「じゃあ、オレ帰るから・・・・・・。」
帰ろうとした時、バン先生はコップにコーラを入れてジニに渡した。
「暑かっただろ、外。飲んでから行けよ。」
バン先生は、そう言って、いつもの細い目で笑った。
「あ・・・。ありがと・・・・・・。」
礼を言って、コーラを飲んだら、訳もなく泣けてきた。こんな風に、誰かに優しくしてもらった記憶がジニには無かった。でも、泣いてる姿を見られたくなかったから、背を向けて一気に飲んだ。
そのまま、振り返らないでコップを机に置いて、汗を拭いてるふりをしながら帰った。後ろからバン先生の声が聞こえた。
「明日から、2学期だから。会えるの楽しみにしてる。」
ジニは、振り返らずに、そのまま帰った。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/112231368/picture_pc_a948a9bd3082a23a2348dc4698469b4b.png?width=800)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?