エイプリルフール
「ぼくは、へろりん」
「何言ってんの、太郎。へろりんは金魚でしょ」
「昨夜1時頃、私と太郎くんの中身は、入れ替わったのです」
「じゃあ、あれが太郎なわけ?」
「そうですよ」
水槽に目をやると、へろりんは、水面に力なく浮かんでいる。
「わ、へろりん、どうしたんだろう」
「死んでしまったみたいです」
水槽を人差し指でそっとノックしてみる。無反応。
「ね、言ったでしょう。亡骸は、トイレに流しましょう」
「なんで、太郎、へろりんのことかわいがってたじゃん。埋めてあげなよ」
「死んじゃった魚の、どろっとしてくる感じがどうしても怖いんです。代わりに、お姉ちゃんが埋めたらいいじゃないですか?」
いつもなら美佳って呼ぶのに。
「お姉ちゃん」なんて、変なの。
そして太郎はカレンダーに「へろりん命日」と書く。
左手で。
右利きの、太郎が。
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