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#36【長野式治療】長野式の瘀血処置を指でやってみた話

長野式の瘀血処置を指でやってみると驚くほど効果が出たので書いていきます。


1.瘀血とは

瘀血というのは、東洋医学において最も知られている血液病態です。非生理的血液のことを「瘀血」と呼ぶ他、その非生理的血液が渋滞しているのも「瘀血」と呼びます。

例えば打撲で内出血をして青タンが数日残っているのを「瘀血」と言います。内出血で血管外に出てきた血液は非生理的血液です。そして内出血がその場で留まっている現象そのものも「瘀血」です。

この瘀血は全身どこにでも起こり得るのですが、今回は腹部瘀血の話になります。

2.瘀血の西洋医学的解釈

瘀血が起こる原因は主に3つが挙げられていました。

2-1.血管壁の変化

血管壁が損傷すると、血管内皮細胞からマクロファージが放出され白血球の増加を促します。このマクロファージは交感神経活動を更新させ血管を収縮させると言われています。血管が収縮すれば血流が滞り、瘀血が産生される原因となります。

また血管壁の損傷は血管中膜の平滑筋細胞の増殖を促すことがあります。平滑筋細胞が増殖すると血管が物理的に狭くなりますので、血流が滞り瘀血が産生されます。

2--2.血球成分の変化

血球というのは、赤血球や白血球などのことです。血管の傷を防ぐ役割をする血小板は、量が増えすぎると血栓を形成し血流を阻害することで瘀血が産生される原因となり得ます。

2-3.血流の変化

血液は液体で、血流は川の流れのようなものとも言えます。そのため、血管が曲がっている部分や分岐している部分は流れが悪くなりやすく、それが瘀血が形成される原因とも成り得ます。

腹壁の動脈は複雑に分岐や吻合を繰り返しているので、血液が渋滞しやすく瘀血が形成されやすくなっています。特に鼠径部から下腹部の腹壁を走行する血管は複雑な血管網を形成していると言われています。

具体的には、
・浅腹壁動脈
・浅腸骨回旋動脈
・下腹壁動脈
・上腸間膜動脈
などです。

長野康司 よくわかる長野式治療

鼠径部から下腹部にかけての腹部瘀血の処置が長野式の瘀血処置として推奨されています。

3.瘀血処置のやり方

評価方法はとても簡単です。
腹部瘀血が形成されるのは下腹部のところで、経穴で言うと中注から大巨にかけての範囲です。
その辺りを触診して、しこり様のものが確認できたり、圧痛が認められれば瘀血があると判断して瘀血処置を施します。

赤丸の辺りが腹部瘀血の部位(下手な絵でスミマセン・・・)

瘀血処置のやり方
①中封に刺鍼雀啄して留鍼
②尺沢にも同様の施術
③これを左右両側に行う。

瘀血処置のやり方はこれだけです。
処置後もう一度腹部のしこりや圧痛を確認して変化を見ます。

しこりや圧痛が手強い場合にはその下方に刺鍼したり、もしくは至陽・膈兪などにも刺鍼します。また鼠径部(血管裂孔)の圧痛部位などにも雀啄をします。

4.実際の症例

実は友人の腹部に圧痛があったのを覚えており、何とか治療できないものかと考えていたときにこの瘀血処置を学んだので、早く試してみたいと思っていました。
そうすると仕事中に丁度いい(と言ったら失礼かもしれませんが)患者さんがいらっしゃいました。

その方は以前から左右の大巨あたりの圧痛がかなり強いのを知っていたので、事情を説明して実験(施術)させていただきました。
当然鍼はできませんので、指で中封と尺沢をグリグリとちょっと痛いくらい押しました。刺鍼雀啄とういことでしたので、けっこう強めの刺激で良いと思ったからです。

ちなみにその患者さんの中封は激痛だったようです。グリグリすると身悶えしていたのでかなり手加減をして押しました。尺沢もかなり圧痛が強かったです。

中封と尺沢で2分ほど刺激を加えた後、もう一度腹部の圧痛を確認しました。すると驚くことに、左側の圧痛が消失していました。右はまだ頑固そうなしこりが確認できましたが、左の圧痛の変化は患者さん自身もわかるほどの変化でした。

なぜ効くのかはよくわかりませんが、感動しました。
長野式のこの瘀血処置は理屈や理論があるというわけではなく、経験の集積の上に出来上がった処置方法だということです。
一応五行穴的な観点で理屈の説明はされていましたが・・・

腹部の圧痛が認められる方がもしいらっしゃれば、是非試して欲しいなと思います。鍼ができなくても、指で効果が見られたのが面白かったですね。
僕も色んな方で実験(施術)していこうと思います。

参考図書
長野康司 よくわかる長野式治療 医道の日本社

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