従業員のWell-Being向上を目指す〜コンシェルジュ事業をForbes Japanが掲載!
<このnoteはコンシェルジュの田中水美(みなみ)が書いています。>
7/30付のForbes Japanに、コンシェルジュ事業が大きく掲載されました。
ウィズコロナの時代でリモート勤務が急速に進み、今までオフの場所であった自宅が職場と融合。オンの場所になったことで、ワーカーは「働き方」について真剣に考えるセカンド・タームに入ったと言えます。
企業が従業員のWell-Beingの向上を競う時代へ
強制的に自宅が職場になったことで、「公私融合」状態になった日本。
弊社代表のマニヤン麻里子が作った”造語”であるこの言葉。
TPOが初めて企業のオフィスビルのフロアにデスクを置いて、コンシェルジュ常駐をスタートさせた2年前は、「公私融合」とか「Well-Beingが大切」と一生懸命説明しても「?」でした。
コンシェルジュ事業がNHKのニュース情報番組「シブ5時」で取り上げられたとき、キャスターがフリップを出して、「みなさん、この言葉を聞いたことがあるでしょうか。」と言っていたことが思い出されます。
今年の流行語大賞にノミネートされてもいい!と、個人的に感じるほど
まさに旬な言葉へ昇格しました。
残業時間の軽減や休日の取りやすさ、リフレッシュ休暇やバースデー休暇に代表されるような福利厚生よりも、「働きがい」「仕事と家庭のバランス」「健康を保ちながら、納得・満足感のある仕事ができるか」といったことに従業員の関心は移ってきているように感じます。
コンシェルジュに寄せられるご依頼もwithコロナになって、
「妻の転職」「移住」「睡眠の質の向上」「ワーケーション」
といった、今までにはなかったワードが登場。
より近いところで従業員の方の生の声をいち早くお聴きする私たちは、
集まった「声」というデータからの情報予測が立てやすい立場にいる、
と言えます。
多くの従業員が真剣に「自分の生き方」を問う時代。
そして、企業側も従業員の「ウェルビーイング(幸福)」の向上を競う時代が来ました。従業員が「魅力ある会社とは何か」をシビアに見て選ぶ。
Forbes Japanへの今回の掲載からも、そんな時代の潮流を予感します。
1960〜1970年代、アメリカ西海岸のシリコンバレーをはじめとした先進国で言われはじたWell-being。もともとは社会福祉の分野で利用される専門用語でしたが、近年ではビジネスの場でも使われるようになりました。
しかし、身体的、精神的、社会的に幸福な状態に自分がいてこそ、仕事でも最良の成果が出せるという考え方は、仕事と私生活は厳格に切り離して考えることを良しとしてきた伝統的な日本企業には、ほぼ受け入れらない考え方でした。
コンシェルジュ事業が従業員の私生活をサポートし、社員個人のWell-Beingに寄与することを人事担当者や経営陣に説明すると、
「どうして社員の個人の幸せのために、私たち会社が
お金を出さなきゃいけないんですか。」
という反論にあってきたこともしばしば。
今年、予期せぬ形で日本は、数年前のシリコンバレーの思想にようやく追いついたといったところでしょうか。
そもそもアリス・ウォータース(世界にスローフードを知らせたレストランのオーナーシェフ)のようにFarm to Tableに代表される地産地消の文化があり、ジョン・ミューア(アメリカのナチュラリストの草分け)がトレイルをつないだように自然への意識が高く、パタゴニアのイヴォン・シュイナードが社員をサーフィンに行かせるように野外アクティビティを謳歌し、Googleがマインドフルネスに基づいた社員厚生プログラム「Search Inside Yourself」を始めるように東洋思想に基づいた調和と高い精神性を重んじる伝統がある。
この記事を書かれた、『WIRED』日本版 編集長 松島倫明さんや
Linked in 電脳コラムニスト村上臣さんの記事でも、今後の企業の考え方としてWell-Beingがキーワードになることを確信します。
ウィズ・コロナ時代においては、職場自体が分散していくことも予想されます。パーソル研究所の調査によると、コロナ収束後のテレワークを継続したい人は7割とのこと。今回のことをきっかけに仕事と家庭のバランスや働きがいについて考えた方も多いでしょう。世界では、企業が従業員の幸せ「Well-Being」向上を目指す流れが大きくなってきています。
プライベート面の問題解決と緩衝要因の有無が、
プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムを
減少させる
優良企業の指標の一つである健康経営。その取得を目指す企業にとって、社員の幸福度を上げることは「真の健康経営」であると言えます。
特に、社員のメンタルヘルス不調を予防することは、企業として
アブセンティーイズム、プレゼンティーイズムを減少させ、企業の損失を防ぐ上で最重要課題であると言われています。
*アブセンティズム=心身の体調不良が原因による遅刻や早退、就労が困難な欠勤や休職など、業務自体が行えない状態
*プレゼンティズム=出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題が作用して、パフォーマンスが上がらない状態
従業員のメンタルヘルスを考える際によく用いられるのが、
NIOSH:アメリカ国立労働安全衛生研究所の職業性ストレスモデルです。
仕事上のストレス以外に、仕事外の要因や個人要因が加わりストレス反応となり、やがて疾病へとつながっていくことがわかりますが、その途中で
「緩衝要因=周りにいる人からのサポート」が入ることでストレスが軽減され健康に戻るとされています。
この図では緩衝要因に上司・同僚・家族・友人とありますが、
コーポレート・コンシェルジュはまさにこの「緩衝要因」です。
あなたが何かしら私生活で悩みを抱えていたとして、それについて人からサポートを受けようと思う場面を想像してみてください。
まずは誰かに「腹を割って」話すことから、サポートがスタートします。
もしもストレス要因が家庭内に存在することなら、家族に腹を割って話すことはできません。
上司や同僚に私生活の悩みを話すには、相当なハードルが存在します。
「印象を悪くしないか」
「今後、先入観を持って自分のことを見られるのではないか」
「人事に影響しないか」
あれこれ悩むことがさらにストレスを増し、結局一人で抱え込んだまま何も進まない、ということになりがちではないでしょうか。
また、ワーカーにとって「腹を割って」話す場がこれまでは飲み会や会食、ゴルフコンペや社員旅行だったことは想像できますが、withコロナの時代に
そうした場が減少しつつあります。
第3者である「コンシェルジュ」がこうした緩衝要因となって、
オンラインを通じ気軽なタッチポイントとして存在できることは、今後の企業の健康経営にとってさらに大きな意味を持つと考えています。
「ここで働けて良かった!」
ワークエンゲージメントの向上へ向けて
また、在宅勤務が増えて社内メンバーとの直接のやりとりが薄れていく中で、パフォーマンスの維持と社員のエンゲージメントを担保していくにはどうすればいいかという課題と真剣に向き合うことも、これからの人事には求められていると感じます。
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、世界中の組織の現在と未来に向けた取り組みの変革を加速させている。困難な状況下、中でも先陣を切る企業が焦点を当てているのは、従業員の健康的なライフスタイルの増進、財務的なウェルネスの支援、AIやテクノロジーの発展によってもたらせるキャリアの変化に対応するスキルとトレーニングを提供することである。
マーサーの2020年グローバル人材動向調査によれば、従業員の34%は3年以内に自らの仕事がAIやテクノロジーに代替されると予側しており、61%は将来の仕事の在り方に向け会社が備えてくれていると考え、55%が自動化の結果として仕事内容が変わっても会社が従業員を再教育してくれることに期待している。
「求められているのは、経済的合理性と心理的な共感(エンパシー)のバランスです。世界的なパンデミックによる疑念、不安、不確実性に向き合っている今、その重要性は高まっています。組織は、未来に対する準備と投資を可能にする財務モデルと文化的なマインドセットを持つ必要があります。特に人事部門にとっては、持続可能な組織を創り出すための目的と優先順位の再考が必要不可欠であると本調査は明示しています」
「人材を獲得・維持するために、企業は、社員に対する十分かつ公平な成長・発展の機会、彼らの身体的、財政的なウェルネスに違いをもたらす健康・退職貯蓄戦略、共通の将来に向けた共同責任を生み出す信頼関係といったものを、将来にわたって提示・提供することが必要になります」
社員の職場体験を再デザインし、社員に刺激と活力を与える。従業員に対する職務経験の提供は、人事の最優先事項である。58%の組織が、従業員体験を重視した再設計を進めている。しかし、経営幹部間では、従業員の職務経験の在り方がビジネスに利益をもたらすと考えているのはわずか27%に過ぎなかった。
従業員の61%が会社は従業員の福利厚生に配慮していると信じ、経営層の48%がそれを従業員の最大の関心事項と位置付けているにも関わらず、健康と福利厚生に関する戦略を持つ人事リーダーは29%にとどまっている。この点は、従業員の健康と福利厚生に重点を置く会社の従業員は4倍以上活力がある確率が高いことから見逃せない。活力のある従業員は、組織の変革アジェンダを実現するために必要不可欠だ。彼らは会社にとどまる可能性が高く、辛抱強く、より高いレベルでスキルを再構築する準備ができているためである。
「従業員との双方向のやり取り(インタラクション)が大切です。進歩的な従業員ケアから、柔軟な働き方への公正な処遇に至る全てのインタラクションが、従業員の企業における経験を形成します。20年以上にわたる人事の変革は、それなりの成功を収めてきました。企業には、何が従業員のモチベーションとなりパフォーマンスを高めるかについて再検討し、典型的な人事モデルから離れることが求められています」とKate Braveryは言及する。
「日本においては、グローバル化、デジタル化、少子化・高齢化という経営環境の変化を受け、競争ルールが大きく変わる中で、企業の持続的成長を支える人材戦略を、従来の制度・慣習の抜本的な改革やそこからの脱却を含め本質的に再構築する必要がもとよりありました。今回のパンデミックで原則在宅勤務となる従業員が増える中で、さらに次のような変革が求められています。リモートワークでも、チームとして生産性を維持するために曖昧だった役割・職務を再定義し、プロセスや成果を正しくモニタリング・評価すること。特定領域の市場における需要が減る中で人材を有効活用するためのリスキル(再教育)すること。物理的な接触が減る中で、従業員が組織・職場に帰属する意義や、エンゲージメントを高める体験価値を再定義すること。これらの変革を、試しながら修正していくアジャイルなアプローチが求められ、また許容される環境になってきていると考えます。例えば、ポールサーベイというオンラインで従業員にその場で意見を募るサーベイ等で、即時にフィードバックを受けながら対応を進めることができます」
世界の動きとしては、サーベイやAIを使って社員が何を考えているのかを質問を繰り返すことで心の奥を深掘りし真相に近づくシステムを導入する動きが進んでいきそうですが、今後日本でも盛んになることが想像できます。
しかし同時に、
「そもそもサーベイに対して、人は本音を語るのか」
という疑問も拭えません。
新たなテクノロジーを開発することは紛れもなく素晴らしいことです。しかし、テクノロジーからスタートして都合よく顧客のJobを捏造したり解釈すると、市場に出た後に大きなしっぺ返しを食らうことになるのです。
だからこそ、Jobは顧客との徹底的な会話の中で発見されなければなりません。会議室でブレインストーミングして出すものではないのです。ここで、顧客との会話に関して理解しておかなければならないことがあります。顧客が自らの抱えている真のJobを正しく語ることはまずない、ということです。
例えば有名なのが、サラダマックの失敗の話しです。10年以上前のこと、マクドナルドの店頭アンケートで最も寄せられるコメントは、ヘルシーなサラダメニューが欲しい、というものだったそうです。その声に答えるべくマクドナルドはサラダマックというメニューを開発し発売しましたが、全く売れることがなく、結果としてすぐにサラダマックは廃盤となりました。ちなみに、その後にメガマックやクォーターパウンダーマックといった顧客と真逆のメニューを投下して、ヒット商品となったことは、皆様ご存じの通りでしょう。
もしも顧客の言うことをそのまま解決していけばいいのであれば、サラダマックは売れて、メガマックは売れなかったはずなのですが、現実にはそうはならなかった。ここには、顧客と会話するときに気を付けるべき2つの罠が関係しています。
1つ目は、消費者はロジカルに意思決定を行っているわけではない、ということです。人間は毎日途方もない数の意思決定を行っています。その全てを論理的に行っていては脳のキャパシティがとても間に合いません。そこで、95%の意思決定は、考えずとも自動で判断されるように出来ています。
「会社の人事から送られてきているサーベイ」
「AIが、俺の心の中を覗こうとしているぞ・・・。ようし慎重にやろう。」
「なんだ、忙しいのに。適当に答えとくか。どうせもうすぐ辞める。」
かなり極端な妄想かもしれません。(悪しからず)
けれども、人だけが持つ「直感」や「なんとなくいつもと違うぞ」という、言動とは裏腹の隠れたニーズを読み取る力は機械より優れています。
外部のコンシェルジュという「人」とAIの組み合わせ。
これが、戦略的人事の最も良い方法ではないかと私は思います。
そして、ポジティブで生き生きとした状態で仕事ができるワークエンゲージメントを向上させるために、「ここで働いていてよかった!」と従業員の満足度が高まるよう、福利厚生の新たなインフラとして「コーポレート・コンシェルジュ」を多くの企業に検討してもらいたいと思っています。
従業員のワークエンゲージメントを向上させるには…
・評価や報酬といった外発的動機付けに依存せず、従業員1人1人と向き合い、各々のやる気や熱意を引き出すような内発的動機を生み出す仕組みをつくる。
・「ここで働いていてよかった」と従業員の満足度が高まるよう、制度やルールを定めて安心なインフラを整える一方で、仕事自体の進め方に心地よさを感じてもらう。
・いきいきと明るく過ごせる文化、風習が根付くように取り組み 、働きやすい職場を提供する。
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