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『ザ・会社改造』経営者視点でフレームワークを学ぶこと

今回紹介するのはプロ経営者である三枝匡の成功体験が描かれた『ザ・会社改造』だ。

『ザ・会社改造』 三枝匡 著

以前noteで取り上げた、「金型業界のAmazon」ことミスミでの体験が小説風に描かれている。製造業界での経営論とあって読んでみることに。

正直に言うと、僕は個人の成功体験についての本にあまり興味がない。自慢話が多かったりするし、一個人の成功に再現性があるかどうかもわからないからだ。

それでもこの本に関しては、できる限り著者の体験を法則化して異なる状況でも使えるように配慮されているように感じた。小説風なので読み物としても面白い。池井戸潤の小説(半沢直樹など)が好きな人なんかは楽しんで読めるだろう。

今回は導入編ということで、本書の重要キーワードを紹介する。

はじめに・・・舞台となるミスミについて

製造業に携わる方ならミスミについては社名くらいは聞いたことがあると思う。一方で、他業界の方は知らない人も多いだろう。僕自身、製造業に関わるまでは存在すら知らなかった。

著者の三枝匡がミスミCEOに就任したのが2002年。会長になった2008年から株価が上昇を続け、2017,18年に一度ピークに達した。

フレームワーク

本書の中で何度も登場する言葉がある。それが「フレームワーク」「事業プロセス」だ。

フレームワークとは問題解決のための型のようなもの。万能ではないが、これを知っておけばある程度の状況に対応することができる。

フレームワークには既に過去の偉人たちによって洗練された古典的手法のようなものもあれば、これまでの自分自身の体験から生み出される法則も広い意味で含まれる。すべての事象に対して個々の対応方法を編み出すのではなく、整理されたアイデアから適用すること。それによってリーダーの能力は高められるという。

著者曰く、すべてのフレームワークを学びマスターすることはできない。そのため大切なのは、自分にとって軸となる基礎理論を徹底的に一つ身に着けてしまうことだという。それを中心に関連するフレームワークを枝葉のように広げていくのだ。

僕の場合、自分の軸となるのはJim Colinsの『ビジョナリー・カンパニー』シリーズだ。したがって、本書も『ビジョナリー・カンパニー』の考え方と照らし合わせながら読ませてもらった。

三枝とColinsの間で、共通して指摘していることもあれば、異なる考え方をしているところもある。特に異なっていた場合、なぜ考えが分かれるのかということを推察しながら読み進めた。次回以降のnoteで詳しく述べたいと思う。

経営者視点

「経営者視点」という言葉も本書に頻繁に登場する。自分の所属する部署やサービスのみに固執すると、部分最適を目指すようになってしまう。そうではなく、会社の全体最適を考えられるようになるためには「俯瞰的視点」と「論理性」が必要だ。

本書では社長になった三枝が当時37歳であった社員に対して、「経営者として打ち出す改革シナリオを書いて出せ」というシーンがある。かなり印象的なシーンだ。

経営学はトップやリーダーのみが極めていればいいという人もいるかもしれない。一般社員が経営論について語ると「意識が高い」と一蹴されることもあるだろう。僕はそうは思わない。一般社員こそ経営論を学ぶべきだと思うし、全体最適について考えられるようになるべきだと思う。個々人がやりたいことを好き勝手に個人商店を開いていては組織は強くならないからだ。

経営論を学び全体最適を目指したいと考えたとしても、実践する場がなければ自己満足で終わってしまう。役職に関係なく全体最適について熱く議論できる場面を用意して初めて社員の視座を高めることができるのだろう。

現在のミスミが「経営者人材」を育てることを標榜しているのにも、三枝の残した影響が色濃く出ているのだと思う。

次回予告

本書で描かれた会社改造と僕自身のフレームワークを比べて、共通点と相違点についての記事をアップする予定です。


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