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年を重ねて輝く君へ

「髪の毛、きれいだよね」

ある冬の晴れた日、君は突然そう言った。

一見すると、男性である僕に言うにはあまり相応しくないかのように感じる言葉だったけど、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

「私さ、あなたの白髪が好きなんだよね」

屈託のない笑顔で君はそう続けた。

普段、冷静が取り柄の僕も、流石に今度は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になった。

…もはや、褒められているのかディスられているのか分からない。

「…褒めてる?」

思わず怪訝そうな表情で尋ねる僕。

「え?めちゃめちゃ褒めてる!…だって、白髪の1本まで愛せるんだよ?」

『骨の髄まで愛する』が如く、君は当たり前にそう言った。

「あとね、笑った時の目尻の皺も好き。
 どうしようもない人の良さが滲み出てるから」

防波堤の上をくるくると回りながら、君は無邪気に何度も笑った。

あれから3年が経って、僕たちはお互いの左手の指輪を外し、今度は薬指にお揃いの指輪が光るようになった。

僕の白髪は、数えるのが面倒なほどに増え、目尻の皺はもはや笑い皺とも言いづらくなった。

それでも毎日のように君が「愛おしい」と言うから、年を重ねることは怖くない。

昔は、年老いていく先に何の光を見出せばよいのか分からなかった僕だけど、今は君という光がずっと隣で柔らかく輝いていてくれるから。

「…ねぇ。僕、君の手の皺が好き」

「何それ、ディスってるの?」

君がにやっと笑う。

「まさか。何度も僕の手を握ってできた皺だから。
 世界中の何よりも愛おしいよ」

次の瞬間、君の髪の毛がふわっと香って、僕の胸に君の体温が広がった。

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