父親との永遠の別れ

高校の入学手続きをしてくれなかった
父親は、私に仕事を探してきました。
私は中卒で働くことになりました。
新しい女の人とは別れてしまって、
父親が住んでいるアパートに移りました。

仕事は、電卓などを作る流れ作業の
工場のような所でした。
小さな工場でしたが、周りの人たちは
とても優しくて、お弁当を
持っていかない私に
お昼ご飯を分けてくれたりしました。

父親の借金取りが工場まで来たことが
ありましたが、
工場の人たちが追い返してくれました。
私は工場で一生懸命働いて、残業があるときはさせてもらい、内職の仕事も持ち帰りました。

私のお給料は、すべて父親に
奪われました。
弟に下着や靴下を買ってあげたくて
先に給料袋を開けたら
拳で殴られました。
ある時父親は、よほどお金に困ったのか
会社に前借りをするように
言ってきました。
断ると、「殺す」と脅されました。
その時私は、内職の作業中で
カッターナイフを持っていました。
殺すと脅された私は、
我慢できませんでした。
持っていたカッターナイフを
父親に向けました。
殺されるくらいなら、もう
父親は刺してしまおう、と考えました。
内職用のカッターナイフは
刃の部分がとても小さくて、
刺したとしても大した怪我にはならないと
今ならわかりますが、
あの時は、本気でした。
私の勢いに押されたのか、
父親は怒鳴り散らしながら
外に出てしまいました。

そして、また行方不明になりました。

その後、元いた施設に連絡し、
私と弟は施設に戻れました。
弟はまだ中学生なので、そのままそこにいることになりましたが、
私は卒業しているので
施設の人が全寮制の紡績工場を
紹介してくれて
そこで働くことになりました。

紡績工場に行く前、一度だけ
父親から電話がありました。
「もう、父親だとは思っていない。」
と言うとすごく罵られましたが、
父親とはそれが
永遠の別れになりました。



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