宇津保物語を読む 俊蔭14
俊蔭、娘に秘琴のことを遺言して逝去 こうしているうちに、娘が15歳になる年の2月に、急に母が亡くなった。そのことを嘆いているうちに、父が病気になった。父が気弱になっているときに、娘を呼んでいうには、
「私は、以前わが子には高貴な人と交際をさせようと思っていたが、若くして見知らぬ国に渡り、この国に帰ってきてからも朝廷にも出仕せずに過ごしてきたので、貧しくなり、わが子の将来を決めないでいた。それについては、天の運命にお任せ申し上げよう。私の所領する荘園は多くあるが、だれが私の領地