宇津保物語を読む 俊蔭5
俊蔭、阿修羅に出会い、琴を得る 走り出して三年目の年の春、大きな峰に登って見廻すと、山頂が天につくほどに高く険しい山が遙か遠くに見えた。
俊蔭は勇気をふるい、足を速めて行くと、なんとかしてその山にたどり着き、周囲を見渡すと、千丈の谷の底に根を張り、梢は空を突き、枝は隣の国にまで伸びている桐の木を切り倒して割り削っている者がいた。
頭の髪を見ると剣を立てたようである。顔を見ると、焔がもえさかるようである。手足を見ると鋤や鍬のようである。目を見れば金椀のようにきらめいて、ひど