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【第29話】碧の雪解け水、街より湧き出る

今日もお疲れ様です。
旅する自転車です。

11月の土日を使い2週にわたって続けている秋のサイクリング。横須賀からスタートして三浦半島を周り、途中帰宅を挟みつつも、前回はついに伊豆高原へとやってきました。伊豆高原以南は随分と前に走ったことがあるので今回は割愛とさせていただきました。そして次なる場所を目指し、輪行ではるばる遠い場所へ…。

▼▼ 前回のおはなし ▼▼

降り立ったそこは、富士駅

伊豆高原駅から伊豆急行とJR線を乗り継いで、やってきたのはなんと富士駅。ここが2017年最後のランの舞台に選んだコースのスタート地点なのだ。といっても、本当に走りたいのはだいぶ離れた位置にあるのだが、“過去に走った道の続き”というマイルールのため、わざわざ時間とマネーを使ってこんな遠くまでやって来たのだった。おかげで駅に着いた頃にはもう17時前で、夕日は沈む寸前だった。富士駅で降り輪行解除し、走り始めてまず驚いたのは、やはり富士山の巨大さだ。冬の澄んだ空気のおかげで、雪化粧をした山の姿が宵の空に不気味なほどにくっきりと浮かび上がって見える。夕食は特に何も考えていなかったので、宿に向かう途中で見つけた国道でよく見るタイプの大型ラーメン店に入った。飲み込むようにラーメンを平らげ、住宅街を抜けながら2時間前に部屋をとったビジネスホテルへと向かった。旅の醍醐味のひとつに宿というものがあって、個人で経営している民宿やゲストハウスに泊まると、宿主との会話を楽しんだり、まかない飯をいただいたり、そこでしか味わえない体験があるのだが、ビジネスホテルという無機質な場所ではいったん自室の鍵を閉めてしまえば外界との一切の交流を遮断してしまう。それはそれで寂しいのだが、ひとりの時間を過ごすのには良いのかもしれない。この日は翌日のプランを決めたところで意識がなくなっていた。

住宅街を覗き込むように姿を見せる富士山。肉眼だと、その迫力はなかなかスゴい
何気なく入った「五味八珍」のラーメンがボリューム満点でうまい! 静岡や山梨・神奈川で展開しているローカルチェーン店らしい

沼津でいただきます、市場の朝食

朝5時30分起床。適当に朝の支度を済ませ、ビジネスホテルを後にした。6時を過ぎたばかりの空には、まだ太陽の姿は見えない。頭上には淡い群青色が広がり、東の地平線の方が赤みがかっている。静かな暁の街には、すでに運送の大型トラックや犬の散歩をする人の姿もあった。6時40分、ついに朝日が登り始めた。放射冷却で冷え込んだ空気に変化が起きる。指先のかじかんだ一人の自転車乗りを、黄色い暖かい日差しが包み込む。また今日が始まる。目指すは港町、沼津だ。スタートから約20㎞の道のり。静岡県道380号、海沿いの平坦な一本道。といっても松の防砂林が続くため海は見えない。車通りの多い主要道路を淡々と進んでいく。沼津港に着いたのは8時過ぎ。もう爽やかな青空に変わっていた。港町をぶらぶらと歩いてみる。観光客の姿はまばらだったが、すでに数件の店がオープンしていた。いつも朝飯はコンビニパスタなどで済ませるのだが、せっかくの市場ということで、ここで食事をとることにした。

早朝の幹線道路。コンビナートの煙が上がっている
朝日が登るタイミングを見計らって漁港を訪れる。安心感に包まれた
沼津の漁港はすでに賑わいをみせていた
朝から営業していた食事処「むすび屋」へ。朝食らしい鯵の開き定食を注文
沼津で人気のあんぱん専門店「恵比 」。あんぱんといいながらチーズやさつまいもなど、さまざまな味が用意されている。迷いつつも、自分はうぐいす味をチョイス

三島で見つけた青い湧水

沼津を発つと、今度は三島を目指した。距離にしてわずか7㎞、ご近所の街だ。三島の中心市街地に着く手前に、有名な柿田川公園があったので立ち寄ってみた。富士山の湧水によってできた柿田川が流れていて、その源である「湧き間」が見られるのがこの公園だ。直径5m、深さ3.5mの巨大な穴状になっていて、その青さから「ブルーホール」とよばれてるそうだ。このブルーホールへ行くには片道10分ほどの遊歩道を歩いて展望台へ向かう。展望台といいながら、階段を降りていくのが特徴的。特に第二展望台からの眺めは息を呑む美しさだ。すっかり公園を楽しんでしまい、出発することには10時を過ぎていた。スタートから25㎞、目覚めこそストイックだったものの結構ゆとりのあるコース設定だ。

豊かな水を湛える柿田川公園。入口では噴水がお出迎え
写真では伝わりにくいが直径5mなので相当大きい。透明度が高く水嵩が深いため、このような鮮やかな青に見えるのだそうだ

さて、三島までやって来たが、この街こそが今回訪れたかった場所の玄関口なのだ。随分と前置きが長かったが、やっと今日の本題が始まる。三島といえば国道1号や東海道新幹線が通る交通の要所。国道1号をそのまま進むと小田原、横浜へ向かい、やがて日本橋へとたどり着く。三島と関東平野を隔てている峠がそう、箱根峠だ。「入り鉄炮に出女」で言い表されるように、かつての江戸幕府が固く人の往来を取り締まった関所。今やリゾート地として人気の箱根だが、重要な関所を置かれるほどその地形は険しく、“天然の門戸”として有効だったのであろう。その峠を通る国道1号は、今はどんな道になっているのだろうか。実際に走って体感してみよう。

ということで次回、箱根峠へ!

つづく。

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