本:鴻上尚史「孤独と不安のレッスン」
「僕の言いたいことは、ずっと同じです。
死なないように。
死ぬぐらいなら、山奥にでもネットの奥深くにでも海外にでも、逃げて逃げて逃げ続けるように。
逃げ続けていれば、やがて『孤独と不安のレッスン』を再開する体力はつくだろうと僕は信じてるのです。
そして、再開して、また傷つき死にたくなったら、また逃げればいいのです。
大切なことはたったひとつ。
どんなことがあっても死なないように。」
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冒頭の文は鴻上尚史「孤独と不安のレッスン」からの引用です。
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芸能人の自死報道や、身近な人の早世の知らせを受けることが続いたとき、ふと冒頭の文が頭に浮かびました。
この本は若者向けに書かれていますが、どの世代の方にも響くところはあるでしょう。
*ここ最近、辛いことがありすぎてもう前を向けない、という人。
*日々膨れ上がる不安を抱えて必死に生きている人。
*ふとした瞬間に感じる深い孤独に呑まれそうになり、人とのつながりを模索する人。
こうした経験を持つ人に、著者は「たまに会う親戚のおじさん」的な絶妙な距離感で、ほどほどに寄り添いつつも、淡々と孤独や不安と向き合って生きていく術を説いています。
筆者の鋭い観察眼と、飄々としたキャラクターが遺憾なく発揮された名著です。
私自身、この春、新型コロナウイルス感染症の流行により今年の通訳ガイドの仕事が全てキャンセルとなり、先が見えず落ち込みました。そんな時、たまたま本屋でこの本と出会いました。
半信半疑で彼の言う通りに孤独や不安と向き合ってみたところ、以前よりスッキリした、というか余計な力が抜けてきました。
という事で、おすすめです。
この本の興味深いところは、孤独や不安に必要以上に苛まれ蝕まれる人が日本に多いことの原因も考察しています。日本人論として読んでも面白いです。
彼の指摘の中でも、首がもげそうなほど頷いたのがこちら。
「日本は、驚くほど便利ですが、驚くほど息苦しい国です。
(略)
この便利さの裏には、息苦しさがあります。
(略)
日本は『同調圧力』がものすごく強い国なのです。これに、『自意識の低さ』がワンセットでついてきます。」
社会全体で、この傾向から抜け出すのは至難の業です。せめて個人から取り組みましょう。
最後に。この記事を読んでくれた人に、この本が少しでもあなたの力になれますように。
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