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『虎に翼』が突きつけるもの
花江ちゃんが大変そう。
相変わらず辛そう。
自分の息子二人と、虎ちゃんの娘、虎ちゃんの弟、そして虎ちゃんの身の回りの世話を一手に引き受けている。
あの時代、働くということは、日常の家事一切を担ってくれる誰かがいることで成り立っていた。家事も育児も仕事もというわけにはいかない。
女性が働こうと思ったら、結婚を諦めるか、結婚しても子供は持たないか、子供が生まれたら仕事を辞めるか、もしくは誰かに委ねるか、とにかく、何かを得るためには何かを捨てなければいけない、それが当たり前だったのだと思う。
女性初の法曹として、裁判官として忙しく仕事をする虎ちゃん。ある意味、世の中の最先端を行く女性であり、多くの女性たちの憧れでもあったと思う。
だけど、ドラマを見る限り、家事を全くしていない。子育てもしていない。一家を養っているのだから、それはそれでいいのかもしれない。
はて、いいのか?
花江ちゃんは家のこと全てを切り盛りしていて、朝は誰よりも早く起きて朝ごはんを用意し、遅くに帰ってくる虎ちゃんに夕飯を出して、全て片付けてから寝る。あんなに休みなく働いて、いつも疲れていて大変そうなのに、現代では、社会のお荷物、無能とすら言われてしまう(そう言って憚らない都知事が何人かいましたね)。
「だから分担しましょう、外部に頼りましょうってことでしょ」と夫は言う。
けれど、現実にはどうか?そんなにうまくいっているのか?
相変わらず、家事育児の負担は、女性に重くのしかかっているのではないの?
上手に夫婦で分担し、ハウスキーパーや保育園などを使ってやりくりできる人はいい。それはそれで一つの生き方だ。
だけど、「自分の子供ぐらい自分の手で育てたい」という人はどうなるの?
専業主婦になって無能呼ばわりされないために、嫌々子供を預けて働かなければならないの?
そんな世の中で、結婚したい人、子供を産みたい人が増えるわけがないと思う。
ある社会学者が、少子化を改善するためには、安心して専業主婦になれる社会の仕組みを作るべきだと言っていた。もちろん、子供を産んでも働きたい人は働き続けることができる、それも大事なことだ。どちらか一方ではだめなのだ。
どんな生き方を選んでも、それなりに報われる社会でなければ。
娘たちが幼稚園に上がる前に、友人のお嬢さんが亡くなった。風邪からくる脳炎で、あっという間のことだった。私からみて完璧で素晴らしいお母さんだった友人は、それでもああすればよかった、もっとこうすればよかった・・と後悔をしきりに口にしていた。その嘆き悲しむ姿を目の当たりにして思ったのだ。
自分でできることをしないで人任せにして、それでもし子供たちに何かあったら、私はそれを受け止めることができるのか?答えはもちろんNoだ。
だから私は子供たちを預けないと決めた。社会復帰をあきらめた。その選択ができたことは、本当に恵まれていると思う。
その結果として、ひどい専業主婦バッシングを浴びることにはなるが。
虎ちゃんはすごい。今まで誰にもできなかったことを次々成し遂げていく。法曹の人間としてはとても優秀だ。
だけど、子供が寝ているところしか見ていない。自分の食事、洗濯、掃除すら花江ちゃん任せ。そして、いつも疲れている花江ちゃん。
それを見ているとモヤモヤしてしまう。
家事をなんだと思っているんだろう。
育児をなんだと思っているんだろう。
必要な時に必要なだけ、それに向き合うことができなくて、何が生活なんだろう?
ライフワークバランスなんて、聞こえのいい言葉があるけれど、それが満たされることは永遠にない気がしてくる。
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