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1-3 明けない夜はない

 リビングから夜のニュースのオープニング曲が聴こえてきた。

部屋に戻る。

何をするにも億劫で集中できない。

天井とベランダを交互に見る。

もし心というものが物質的に存在するのなら胃の上、心臓の下あたりなんだろう。そこらへんが疼く。

このまま夜だったら学校に行かなくていい

 そんなことを考えながら、暗い部屋に電気を点ける。ジーっという音とともに昼白色の青白い光がこれでもかというほどに冷たく、僕と部屋の隅々までを照らす。

 今日は疲れた。色んなことがあり過ぎた。宿題やらなきゃな。明日も学校か。どんな顔をして行けば良いんだろう。何もなかったかのように平然とした態度を取ることができるのだろうか。シャーペンの芯がない。そもそもMさんはそんなこと知らないだろう。シャーペンの芯はどこだ?確かにバツの悪そうな顔をしていたかもしれないが、僕の気のせいかも知れない。下敷きは透明なほうが使いやすいよね。明日、数学がある。あの先生、面白くないんだよな。給食の時間嫌だな。体育があれば怪我して帰れるのにな。机くっつけるの嫌だな。また嫌な顔されるのかな。そもそも何をしたんだろう。What happened after that? どういう意味だ? 明日、何曜日だっけ?

全く集中できない

全方向に考えが勝手に走り出す。なんだか分からないが、ドキドキする。手が軽く震え、そして、冷たいあらゆる方向に意識が飛ぶ。自分でも混乱しているのが分かった。息を吸っているようで吸っていないような状態が続いている。椅子に浅くだらりと座りなおした。目の前が青くなる(赤色だったのかもしれない)頭の中は真っ白だとよく言うが、僕は真っ青に感じた。

大人になって調べてみると”社交不安障害”というやつなのかもしれない。僕は心療内科は受診しなかった。そんなことあるわけないと思っていた。きっと親もうちに子に限ってなどと思っていたに違いない。ともかく上記のような感覚をもったら受診した方が良いと思います。様々な不安障害というものがあるので、もしあなた自身(もしくは親御さん)がそうかもなと思ったら、一度調べてみたら良いと思う。難しい問題は信頼できるプロに任せるのが一番だ。 話は逸れるが、最近、この不安障害の一種である恐怖症(これは正確に言うと恐怖症認定はされていない)に悩まされた。睡眠導入剤をもらっただけで全く解決できなかった。これは慣れるしかないと言われた。行けと言ったり、行くなと言ったり矛盾しているせわしない投稿で申し訳ない。信頼できる先生を探そうということでよろしいでしょうか?

 呼吸を整えるために大きく吸っては吐いてを繰り返してどうにか落ち着いたような気分になる。お風呂に入るのもめんどくさく感じ、そのまま寝てやろうかと考えていると、思春期の天敵”マザー”が登場。

『りんご、いる?』

「うるせーな。ほっとけよ」

反抗期の開始!?とは言い難いくらい遠慮がちに(個人的には)強めに答えた。

『はいはい』

そう言って天敵”マザー”は足音を荒げて去っていった。

 これで眠れる。静かに眠れる。明日の朝にはすべてよくなっているに違いない。もしかしたらこれも全部夢で今から覚めるのかも。そんなことを思いながら僕はベッドに倒れこむように崩れ落ちた。

「あぁ、疲れた」

声が漏れる。

遠くからニュースキャスターが不幸なニュースを読み上げている。僕には関係のない事だ。世界の情勢より、株価急落より、誰かが恋をした別れたとかより、重大な問題が目の前にある。違う、目の前ではない。頭の中だ。僕にはその不幸なニュースは全く響かない。

もう眠ろう。眠ってしまえばすべてよくなっているに違いない。そう言い聞かせて、電気を消した。

サーーーーーーーーーーー....

普段気にしない耳鳴りでも、雑音がなければかえって目立ち聴こえてくる。気にしなければ良いものの、一度気になったらとても眠れるものじゃない。まるで砂嵐の中にいるようだ。

気にしなければ良いものの、一度気になったらとても眠れるものじゃない。自分が何をしてしまったのか。何がいけなかったのか。皆目見当がつかない。
 いじめられているわけじゃない。いじめられた記憶もない。嫌がらせをされたこともない。様々な考えが無限ループする。姿カタチは違えど、似たり寄ったりの考えが永遠と流れてくる。


眠たいが目が覚めてくる


ベッドのそばに置いてあるラジオをつけて気を紛らわすことにした。聞き取れもしない洋楽を聞く。気分を変えてくれるなら洋楽でも、雅楽でも何でも良い。


”寝落ちの瞬間を感じながらは覚醒する”を繰り返す。


いつの間にか[Jet Stresm]の時間になって(0時くらいだったかな)城達也さんの優しい声になっている。聞き取りやすい日本語と、聴いたことは無いがどこかで聴き知っているBGMのような曲で、僕はやっと眠れた


どれくらい時間が経ったのか。まだラジオが静かに流れていた。名前も知らないミュージシャンがとても爽やかとは言えない音楽を奏でている。

トイレに行き、ラジオを消して横になる。外はまだ暗い。家の中も静かだ。

眠ろうと横になる。僕はまた思い出さなければ良い事を思い出す。
「あぁ」とため息に似た声を漏らし、もう一度眠るために深呼吸をする。

そんな思いも虚しく、無限ループが再開された。

今度は高速無限ループだ。爆心地(あの瞬間)の前後の記憶も繰り返される。眠らなきゃという焦りと、なんとかしなきゃという焦りが余計にループ速度を早くする。

暑寒い温度で掛ふとんを被ったり蹴飛ばしたりした。

そうこうしているうちに、外が明るくなる。鳥の声も聞こえてきた。

誰だよ、明けない夜はないって言ったやつ。このまま夜が明けなければ僕は学校へ行かなくても済んだのに。

ぶつけどころのない怒りが、余計に眠気を吹き飛ばす。

ふつふつと不安が怒りへと変わっていく。(でも爆発するのはまだ先のお話)

漠然とした不安は不満へと変わり、怒りへと成長していきます。この不安にいかに早く気づけるかが今後の勝負だと思います。早ければただの不安で終わる。不満に変わると何につけてもNOとなる。それが通らないと怒りへと変化、進化していきます。


明けない夜はない

これは真実だ。嫌な記憶とともに太陽が昇ってきやがる。


そんなたった一人の小さな人間の気持ちをよそに、太陽は笑顔で希望の光をまずは人類が住む地球のおよそ半分に照らす。

僕にとっては地獄の業火に等しい太陽が昇る。

明けない夜が欲しい。学校には行きたくない





*夜に考えること

今なら知識もついたし簡単に理解できることだけど、夜考えることは大抵の場合ろくなことではない。これは断言できる。非行に走れとは言わないが、夜に健全に遊べる場所を提供したら良いと思う。

あの時に比べれば夜間学校は増えてきている。夜間に健全なゲーセンやら、体育館があれば夜に考える馬鹿な事を防げる気がする。もし僕に権力とお金の実行力があったら作ろうかな。思っているだけじゃどうしようもないけどね。

昼間は逃げ道はない。だから家を抜け出す。
夜はろくなことを考えない。だから悪さをしてしまう(それはお前が弱いからだと思う方はどうぞご自由に自分の強さを煽り運転か、たばこのポイ捨てかなにかで提示して捕まればよい)→noteってこういうの発言禁止の雰囲気ですよね。ごめんなさい、運営さん。せっかく書いた文なので消す前に連絡くださいね。書き直すから。

話が逸れたが、逃げる=悪、学校行かない=悪、の方程式はもう覆されていると思います。

うちの子が学校に行かないと嘆くより、はるかにつらい思いをお子様はしています。嘆く前に寄り添ってくれ。何も言わなく良いから。気づいてほしいけど、気づかれたくない。そんな気持ちに寄り添ってくれ。




ご覧いただきありがとうございました。

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